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その様子にアリアナは呆気に取られた。部屋の前でユージンが、額に手を当てて天を仰いでいる。
アリアナが訳もわからず困ったようにケイビスを見ると、覚悟を決めたようにケイビスはアリアナに向き直った。

「私の告白をお聞きいただけますか。」

そして一度深呼吸してから話し出した。

「兄の奥方であられた時からお慕いしておりました。
もちろん兄と仲睦まじく過ごされておいでであれば、この気持ちは一生告げるつもりはございませんでしたが…申し訳ございません」

突然の告白にアリアナはたじろいだ。

「なぜ…」

続く言葉が謝罪の理由を問うものか、自分に好意を抱いた理由を尋ねるものなのか、それとも突然の告白の理由を知るためなのか、アリアナ自身も分からなかった。
ケイビスは聞かれた内容の真意を問うことなく、寂しげに続けた。

「本当はあなたを一目見た時から心奪われていたのです。その美しい真紅の髪も柔らかな美貌も。そして言葉を交わすたびに今度はあなたの内面に惹かれていった。民を思いやる優しさ、思慮深さに。ですが、あなたは兄の妻だった。だからこそこの好意があなたに伝わらないように必死で押し隠しました。
あなたは夫の弟から好意を持たれるようなことを是とされる方ではなかったでしょうから。」

真剣な表情で告げられ、アリアナは思わず赤面する。その様子を見たクレメントが突如喚き出した。

「はっ、やっぱりお前らそう言う関係だったのか。アリアナもケイビスも聖人のような顔をしておきながら…汚らわしい。」

その言葉を聞いたケイビスが静かにクレメントに向き直った。

「私が一方的に慕っていただけだ。アリアナ様は何もご存知ない。それにお前がアリアナ様を大事にしていれば、私は一生この思いを告げることはしなかった。」

そしてアリアナに向き直ると寂しげな笑顔とともにケイビスは告げた。

「私は、一生誰かと添い遂げる気はありません。この公爵領にしてもアリアナ様からお預かりしていると言う認識でございます。アリアナ様が再度ご結婚されました暁にはお返ししたく存じます。それをお伝えしたく…突然の無礼をお許しください。
ただ一つ悔やまれるのは…兄より先にあなたにお会いしたかった。それだけです。お耳汚しの私の思いをお聞きくださり感謝してします。」

そして、クレメントに冷たく告げた。

「二度とゾーイ家の方に関わるな。これ以上迷惑をかけることは許さない。アリアナ様の温情に感謝しながら遠くで悔い改めるんだ。分かったな、次はないぞ」

刺すような冷たい視線を向けられたクレメントはカクカクと頷いた。

「アリアナ様…大変ご無礼をいたしました…」

震えながら謝罪の言葉とともに、クレメントが頭を下げると、ケイビスも一礼した。そして、クレメントを伴って静かに屋敷を後にした。
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