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「本当に愚かよね。でもね、そこまでしてもしたくなるものなのよ。」
「私には分かりません」
「あなたは清廉潔白だから。でも世の中の人間はそうではない。ただのカードゲームとしてのポーカーなら2回もすれば飽きる人も多い。でもね、そこにお金がかかると人間はゲームそのものではなく、発生する金銭のやり取りに興奮して何度でもゲームをしてしまうの」
「それは勝てば、の話ではありませんか?」
「もちろん初めて行った日から負けしか経験していない人間は、早々に賭け事なんてやめる。でもね、一度でも大きく勝つ体験をしてしまった人間は、その快感を求めて何度でも通うようになる。それでね、やめられなくなるの」
「まともではありません」
「ええ、その通りよ。本当なら負け始めた時点で潔く手を引くべきなの。けれど、もう一回やれば取り返せるかも、ここまで大金かけて今更やめられない、そう思う心理になるのよ。」
「…」
「それにね、賭場札はお金を賭けていると言う高揚感があるにも関わらず、その場で現金を渡すわけじゃないから心情的に大金を負けても現金の時ほど抵抗がないことが多いの。だから無茶苦茶なレートで賭けてしまうこともあるわ」
「つまり、クレメント様は上限額の決まっている公営の賭場に入れなくなったため、バーグ商会の闇賭場に足を踏み入れ、大金を賭けた結果負け、その掛金の支払いをため池の架空発注と言う形で支払った、ということですか」
「私の予想ではね。」
「そんな、いくらなんでもそれはさすがに…」
「ないと言える?もちろん他の可能性もないわけではないけれど、これが一番ありそうだと思うのよね。じゃないと相手がバーグ商会である必要がないもの」
「それで、どうなさいますか。」
「もちろん、バーグ商会に一度話を聞かないとね。」
「え?」
「クレメント様はあの通りだから、のらりくらりかわしながらもきっと通い続けるでしょう?でも真面目なケイビス様が知ったら何をなさるか分からないし。胴元のバーグ商会に私から直々にお伝えするわ。クレメント様がハンゼ公爵家の財産権を全て私に移管された旨を。そうすれば今後出入りできないでしょうし」
「でも他の賭場に行かれるのでは」
「ふふ。ああ言うところはね、互いに情報共有するの。だから他の賭場も出入りできなくなるわ。賭け金を持たない人間は貴族であろうが客ではないもの」




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