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言葉を失うアリアナを気にした様子もなくベスは続けた。
「ケイビス様に今すぐお金を返さなくても命を落とされることはないでしょうね。」
「…引き続き支援してもらいます。返済も猶予してもらうようお願いします」
「まあ!そう言っていただけてよかったですわ」
「…」
「ところでお嬢様の方はいかがでしたか。私が確認したもので具体的に新たな支援が必要な項目はこちらにリスト化しました。ですが物によっては年単位で見た方が良いかもしれません。」
「うーん、実は私の確認したものも大半が新たな費用が必要となるものばかりだったのよね。不要な支出はこれくらいだわ」
そう言ってトントンと書類を指先で叩く。ベスは覗き込むと同時にアリアナに尋ねた。
「ため池の造設?思ったよりまともな内容ではありませんか?」
「私も一瞬期待したのよ。ああ、バカなクレメント様でも一つくらい領民のためになることをしようとしていたんだなぁ、って」
「それで?」
「場所と取引先見て首絞めたくなったわ」
「落ち着いてください」
「ええ、そうね。でも見てよ、この地図。ため池の造設地は周りに田畑も何もない場所なのよ。それに取引先はバーグ商会。おかしいと思わない?」
「確かにここでは造る意味がないですね。それからバーグ商会ってあまり良い噂を聞かない気がするのですが…」
「ええ。脱税なんてかわいいもので、裏稼業全てに一枚噛んでいるという噂の黒い商会よ。こんなところで繋がりがあるなんて普通じゃないわ。」
「まあ…」
「クレメント様が上手く使われている可能性もあるわね」
「バーグ商会から脅されているってことですか?」
「そうねぇ。」
ベスは小首を傾げた。そして不思議そうな表情のまま、アリアナに尋ねる。
「えっと、話がややこしくてわかりづらいのですが…つまりクレメント様は犯罪に一枚噛んでいる?」
「簡単に言うと、その可能性がある、と言うことよ。こんな誰も必要としない場所に、普通お金のかかるため池なんてわざわざ作らない。農業用にも生活用水にも使わないから尚更ね。」
「架空の発注?」
「そうよ。おそらくここには何もないわ。でも誰も見に行ってないでしょうから確実にないとも言えない。片道馬車で丸一日よ?このためだけに行かないでしょう?」
「つまり、バーグ商会にお金を払うことが目的ということでしょうか。」
「ご明察ね」
「なぜでしょう」
「うーん、可能性はいくつかあるのよね」
「ケイビス様に今すぐお金を返さなくても命を落とされることはないでしょうね。」
「…引き続き支援してもらいます。返済も猶予してもらうようお願いします」
「まあ!そう言っていただけてよかったですわ」
「…」
「ところでお嬢様の方はいかがでしたか。私が確認したもので具体的に新たな支援が必要な項目はこちらにリスト化しました。ですが物によっては年単位で見た方が良いかもしれません。」
「うーん、実は私の確認したものも大半が新たな費用が必要となるものばかりだったのよね。不要な支出はこれくらいだわ」
そう言ってトントンと書類を指先で叩く。ベスは覗き込むと同時にアリアナに尋ねた。
「ため池の造設?思ったよりまともな内容ではありませんか?」
「私も一瞬期待したのよ。ああ、バカなクレメント様でも一つくらい領民のためになることをしようとしていたんだなぁ、って」
「それで?」
「場所と取引先見て首絞めたくなったわ」
「落ち着いてください」
「ええ、そうね。でも見てよ、この地図。ため池の造設地は周りに田畑も何もない場所なのよ。それに取引先はバーグ商会。おかしいと思わない?」
「確かにここでは造る意味がないですね。それからバーグ商会ってあまり良い噂を聞かない気がするのですが…」
「ええ。脱税なんてかわいいもので、裏稼業全てに一枚噛んでいるという噂の黒い商会よ。こんなところで繋がりがあるなんて普通じゃないわ。」
「まあ…」
「クレメント様が上手く使われている可能性もあるわね」
「バーグ商会から脅されているってことですか?」
「そうねぇ。」
ベスは小首を傾げた。そして不思議そうな表情のまま、アリアナに尋ねる。
「えっと、話がややこしくてわかりづらいのですが…つまりクレメント様は犯罪に一枚噛んでいる?」
「簡単に言うと、その可能性がある、と言うことよ。こんな誰も必要としない場所に、普通お金のかかるため池なんてわざわざ作らない。農業用にも生活用水にも使わないから尚更ね。」
「架空の発注?」
「そうよ。おそらくここには何もないわ。でも誰も見に行ってないでしょうから確実にないとも言えない。片道馬車で丸一日よ?このためだけに行かないでしょう?」
「つまり、バーグ商会にお金を払うことが目的ということでしょうか。」
「ご明察ね」
「なぜでしょう」
「うーん、可能性はいくつかあるのよね」
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