あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ

文字の大きさ
上 下
42 / 102

41

しおりを挟む
ベスはものの10分ほどで戻ってきた。

「あら、何か怪しまれてしまったかしら」
「それがあの、驚くほどすんなりと提案を受け入れられまして」

げんなりした表情で答えるベスを見てアリアナはパチンと手を打った。

「良かったわ。私がケイビス様と出会うことを怪しまれたらどうしようかと思ったの」

朗らかに答えるアリアナを見て、ベスはなんとも言えない表情をする。

「普通は恋愛感情を持っていないか、怪しまれないようにするものなのですが…」
「確かに。でも、彼が一番嫌なのは私の気持ちがケイビス様に向くことより、金銭的な部分で私がケイビス様に相談することのような気がするわ。無駄なプライドだけ高いから。それに、例え少しの間、私の興味がケイビス様に向いたとしても彼は気にも留めないと思うわよ。私は彼に惚れ込んでいると思ってるし、いつでもお金を出してくれると思い込んでるから。」
「でも、先ほどお嬢様がぴしゃりとおっしゃっていたではありませんか。家計はお嬢様に任せるように、と。」
「普通はあれで気づくわよね。でも、領地の名義、私に譲るってなった時に彼言ってたでしょう?僕たち夫婦の土地なんだから名義はどちらでも構わないよって」
「ああ、言ってましたね」
「私思わず口ついて出そうだったわ。僕たち夫婦の土地じゃなくて、これからは私の土地ですよ、って」
「言ってやればよろしかったですのに」

ベスの顔に、そう言ってくれればすっきりしたのに、と書いてあるようでアリアナは笑って答えた。

「そんなこと言ったら、いくらクレメント様でも私がもう恋心抱いてないって気づきそうじゃない?」
「そうでしょうか。強烈さで言うなら結婚式の赤いドレスの方がなかなか…」
「それはもういいじゃない。彼が馬鹿にした赤毛を印象づけたかっただけなの」

苦笑いしながら言い訳するアリアナをベスは穏やかに見つめる。

「まぁ、とりあえず話を戻すとね。そんな彼だから私が家計云々言ったところで気にもとめてないんでしょうね。ちょっと釘刺されたな、くらいにしか思ってないわよ。
それに結局私ならなんでも言うこと聞くとも思ってるでしょうし。
だから、彼にしたら私が関心をずっとクレメント様に向けている状態の方が鬱陶しいはずよ。」
「お嬢様…」
「それで、クレメント様は具体的になんて?」
「早速明日にでも、二人に挨拶の機会を与えようってうきうきされていました」
「苦労かけるわね、ベス。そっちはおまけみたいなものだから、嫌気がさしたらいつでもやめていいからね」

アリアナが申し訳なさそうに告げるとベスは天使の微笑みで答えた。

「ええ。お嬢様に這いつくばって許しを請うたらおやめします」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

婚約破棄は綿密に行うもの

若目
恋愛
「マルグリット・エレオス、お前との婚約は破棄させてもらう!」 公爵令嬢マルグリットは、女遊びの激しい婚約者の王子様から婚約破棄を告げられる しかし、それはマルグリット自身が仕組んだものだった……

次期王妃な悪女はひたむかない

IchikoMiyagi
恋愛
 公爵家の娘であるウルム=シュテールは、幼い時に見初められ王太子の婚約者となる。  王妃による厳しすぎる妃教育、育もうとした王太子との関係性は最初こそ良かったものの、月日と共に狂いだす。  色々なことが積み重なってもなお、彼女はなんとかしようと努力を続けていた。  しかし、学校入学と共に王太子に忍び寄る女の子の影が。  約束だけは違えまいと思いながら過ごす中、学校の図書室である男子生徒と出会い、仲良くなる。  束の間の安息。  けれど、数多の悪意に襲われついにウルムは心が折れてしまい――。    想いはねじれながらすれ違い、交錯する。  異世界四角恋愛ストーリー。  なろうにも投稿しています。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...