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きっとサプライズについてクレメントは都合の良い勘違いしているに違いない。そう思うとアリアナおかしくなって笑ってしまった。

そして翌日。ついに結婚式当日となった。美しいウェディングドレスに身を包んだアリアナを見て両親は早くも目に涙を浮かべている。ベスも同じようにアリアナのドレス姿を見て感極まって泣いていたが、一人弟のユージンだけが意味深な笑顔をアリアナに向けてきた。

「お父様お母様、ユージンと最後に二人で話したいのだけれど、よろしいでしょうか。」

花嫁の控室でそう告げると両親は微笑みながら頷いた。

「もちろんだよ。ゆっくり二人で話しておくれ」

両親とベスのいなくなった部屋でユージンはやっと口を開いた。

「姉さん、流石に美しいよ。これならクレメントさんも髪の色のことなんか忘れるんじゃない?」
「ありがとう。でも3着目全身赤なの」
「姉さんが俺の婚約者じゃなくて本気で良かったよ」
「失礼ね。かわいい意趣返しじゃない」
「結婚式で女性がやる?持参金代わりに塩の販売を提案した僕なんか、それに比べたらただの良い人だよ」

溜め息をつきながら言われてアリアナは笑った。

「なにか話したいことがあったんじゃないの?」
「いや、むしろ僕が聞きたかったんだ。ここのところ結婚式を楽しみにしてるみたいだったから何かあったのかなって。でもさっきの赤いドレスで納得した」

呆れた様子のユージンに、真剣な表情で告げた。

「今日、結婚式が恙無く終われば、クレメント様は私に逆らうことができなくなるわ。ハンゼ公爵家にはゾーイ家の資産が必要なのだから。でも、彼はまだ私が彼に言いなりの都合の良い女性だと信じてる。そうじゃないことをみんなの前で知らせておくには今日が一番良いでしょう?」

その言葉を聞いたユージンは苦笑いしながら頷いた。

「分かってるよ。赤いドレス楽しんで。」


いよいよ式が始まった。バージンロードも誓いのキスもクレメントの本性を知らないまま嫁いでいたなら、きっと素敵なものに映っただろう。
しかし、アリアナにとっては赤いドレスを着るまでの前座に過ぎなかった。
二度目のお色直しで、いよいよ真紅のドレスを纏ったアリアナは鏡に映る己の姿を見てにやりと微笑んだ。髪は目立つように結わずに背中に流す。真紅のドレスと同じ色合いの髪のため、後ろから見ると頭からつま先まで真っ赤だ。そして極め付けはルビーのネックレスとイヤリング。

さあ、クレメント様はなんて言ってくれるかしら。
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