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「手紙を読んで驚いたよ、塩の販売権を持参金代わりに持ってくるというのだから」
「はい」
「恥ずかしながら私は商売というものに疎くてね。これがどれくらいの価値を秘めているのか分からなかったよ」
本当の馬鹿だ、そう言いそうになるのをグッと堪えてアリアナは微笑んだ。
「もちろんですわ、クレメント様。公爵家の方がそのようなことをお知りである必要などございませんもの」
「やはり、君は優しいな。ちょうど来ていた友人に塩の販売権を持参金代わりに持ってきてくれると言うと、目をむいて驚かれたよ。しかもそれの価値が分からないお前は馬鹿だ、とまで罵られて自信を無くしかけていたところだったんだ」
笑いながら言ったクレメントを柔らかい眼差しで見つめながらアリアナは答えた。
「ご友人は博識でいらっしゃいますね。」
「そうだな。博識なのか鼻が聞くのか微妙なあたりだけれど。そういえば彼が不思議がっていた事を聞いてもいいかな」
「はい。なんでしょう」
「権利を公爵名義に移さないのは理由があるのかな、と。私は別にどちらでも関係ないと言ったんだけれど、一度アリアナ嬢に聞いてみたらどうかと言われてな。すまないな、こんな話。」
「いえ、当然聞かれるかと思っておりましたので構いませんわ。公爵名義ではなく私の名義にしましたのは、万が一損失を出したときにクレメント様に迷惑をかけないようにするためでございます」
「迷惑?」
「ええ。損失が膨らんだ際、最終的には私財で持って贖う必要が出てきます。公爵名義にしてしまいますと、公爵家の財産からも補填する必要がでてきますので。私名義であれば私の財産以上の物は支払う必要がございません」
「なるほど、ハンゼ公爵家のことを考えた上でのことだったんだね」
「もちろんでございます。それに利益が出ている時はもちろん公爵家に入れさせて頂きますわ」
「そうか、いや、すまないな。」
「他に何かお聞きになりたいことはございますか」
「そうだな…塩の販売での利益を聞いてもいいだろうか」
「そうでございますわね…もちろん波がございますが平均して月に100エランくらいでございましょうか」
「それほどあるのか」
「ただ、今後競合が激しくなる可能性もございますので、あくまで過去の利益から見て、と言う数字です。赤字の月が出ないように祈っておいてくださいませ」
にこりと微笑んでアリアナは告げる。
「それで、利益が出た場合は全額公爵家のものとなるのだろうか」
恥ずかしげもなく聞いたクレメントに溜め息をつきそうになるのを必死で堪えてアリアナは答えた。
「はい」
「恥ずかしながら私は商売というものに疎くてね。これがどれくらいの価値を秘めているのか分からなかったよ」
本当の馬鹿だ、そう言いそうになるのをグッと堪えてアリアナは微笑んだ。
「もちろんですわ、クレメント様。公爵家の方がそのようなことをお知りである必要などございませんもの」
「やはり、君は優しいな。ちょうど来ていた友人に塩の販売権を持参金代わりに持ってきてくれると言うと、目をむいて驚かれたよ。しかもそれの価値が分からないお前は馬鹿だ、とまで罵られて自信を無くしかけていたところだったんだ」
笑いながら言ったクレメントを柔らかい眼差しで見つめながらアリアナは答えた。
「ご友人は博識でいらっしゃいますね。」
「そうだな。博識なのか鼻が聞くのか微妙なあたりだけれど。そういえば彼が不思議がっていた事を聞いてもいいかな」
「はい。なんでしょう」
「権利を公爵名義に移さないのは理由があるのかな、と。私は別にどちらでも関係ないと言ったんだけれど、一度アリアナ嬢に聞いてみたらどうかと言われてな。すまないな、こんな話。」
「いえ、当然聞かれるかと思っておりましたので構いませんわ。公爵名義ではなく私の名義にしましたのは、万が一損失を出したときにクレメント様に迷惑をかけないようにするためでございます」
「迷惑?」
「ええ。損失が膨らんだ際、最終的には私財で持って贖う必要が出てきます。公爵名義にしてしまいますと、公爵家の財産からも補填する必要がでてきますので。私名義であれば私の財産以上の物は支払う必要がございません」
「なるほど、ハンゼ公爵家のことを考えた上でのことだったんだね」
「もちろんでございます。それに利益が出ている時はもちろん公爵家に入れさせて頂きますわ」
「そうか、いや、すまないな。」
「他に何かお聞きになりたいことはございますか」
「そうだな…塩の販売での利益を聞いてもいいだろうか」
「そうでございますわね…もちろん波がございますが平均して月に100エランくらいでございましょうか」
「それほどあるのか」
「ただ、今後競合が激しくなる可能性もございますので、あくまで過去の利益から見て、と言う数字です。赤字の月が出ないように祈っておいてくださいませ」
にこりと微笑んでアリアナは告げる。
「それで、利益が出た場合は全額公爵家のものとなるのだろうか」
恥ずかしげもなく聞いたクレメントに溜め息をつきそうになるのを必死で堪えてアリアナは答えた。
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