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「それはつまり…担保を取ると言う事でしょうか」
「ええ。当然よね。お金を貸す以上、私が不利益被りたくはないじゃない」
「ですが、領地を担保にしてお嬢様へのメリットはありますか。公爵領など別にご興味ないのでは?所有してしまえば管理もしなければなりません。」
「大丈夫よ。あくまでクレメント様に公爵家で力を持っているのは私と見せつけるだけだから。馬鹿にしてた赤毛に頭を下げるのはさぞ屈辱でしょうね。そのあとは、クレメント様ではなく、ケイビス様に公爵領を安くで買い取ってもらおうと思ってるの」
「ケイビス様ですか?」
「ええ、クレメント様の弟君よ」
「確か兄弟仲があまりよろしくないのでは」
「ええ、でもケイビス様は公正で真面目な方よ。公爵領を任せるには最適でしょう」
「ですが」
「嫌いな弟に公爵領が渡るなんて屈辱、彼には耐えられるかしらね」
そこまで言って微笑んでアリアナは、ベスを見た。
ベスは、アリアナに言いにくそうに口を開いた。
「ですが、ケイビス様もそのお噂が正しいとは限りません…」
「ええ、そうね。でもねケイビス様に私が赤毛だと言う理由で馬鹿にされたところで私は別に傷つかないわよ。ケイビス様に別に恋心を抱いているわけじゃないんだから。だから心配しなくて大丈夫よ。まあ、有能という噂が嘘だとしたら考え直すかもしれないけれど。どう?納得してくれた?」
「ええ、分かりました。」
「それじゃあ、さっきの話の続き。私が頼んだ手紙を持って行った時に、何を聞いたか教えてくれるかしら」
「それは」
「知っておきたいのよ」
「分かりました。」
そして一つ深呼吸してベスは話し始めた。
「手紙を持って公爵家のもとに訪れる途中で、ちょうどクレメント様をお見かけしました。金髪の華やかな女性と一緒に歩いておられまして…それとなく後ろを歩くとお二人の会話が聞こえてきました」
「なんて言ってた?」
ワクワクした様子で尋ねたアリアナを見て、ベスは頬を引き攣らせながら聞いた。
「お嬢様…楽しげですが、本当にクレメント様のことお好きだったんですよね?」
問われたアリアナはキョトンとしたあと、すぐ声を立てて笑った。
「当たり前じゃない。なんなら、君しか僕の瞳には映らない、みたいな馬鹿なこと言われても喜んでたわよ、この間まで」
「この変わり身の早さは一体…」
なんですか、と続けようとしたベスを遮ってアリアナは暗い笑みを浮かべて答えた。
「でもね、いまは可愛さあまって憎さ百倍なのよ」
「ええ。当然よね。お金を貸す以上、私が不利益被りたくはないじゃない」
「ですが、領地を担保にしてお嬢様へのメリットはありますか。公爵領など別にご興味ないのでは?所有してしまえば管理もしなければなりません。」
「大丈夫よ。あくまでクレメント様に公爵家で力を持っているのは私と見せつけるだけだから。馬鹿にしてた赤毛に頭を下げるのはさぞ屈辱でしょうね。そのあとは、クレメント様ではなく、ケイビス様に公爵領を安くで買い取ってもらおうと思ってるの」
「ケイビス様ですか?」
「ええ、クレメント様の弟君よ」
「確か兄弟仲があまりよろしくないのでは」
「ええ、でもケイビス様は公正で真面目な方よ。公爵領を任せるには最適でしょう」
「ですが」
「嫌いな弟に公爵領が渡るなんて屈辱、彼には耐えられるかしらね」
そこまで言って微笑んでアリアナは、ベスを見た。
ベスは、アリアナに言いにくそうに口を開いた。
「ですが、ケイビス様もそのお噂が正しいとは限りません…」
「ええ、そうね。でもねケイビス様に私が赤毛だと言う理由で馬鹿にされたところで私は別に傷つかないわよ。ケイビス様に別に恋心を抱いているわけじゃないんだから。だから心配しなくて大丈夫よ。まあ、有能という噂が嘘だとしたら考え直すかもしれないけれど。どう?納得してくれた?」
「ええ、分かりました。」
「それじゃあ、さっきの話の続き。私が頼んだ手紙を持って行った時に、何を聞いたか教えてくれるかしら」
「それは」
「知っておきたいのよ」
「分かりました。」
そして一つ深呼吸してベスは話し始めた。
「手紙を持って公爵家のもとに訪れる途中で、ちょうどクレメント様をお見かけしました。金髪の華やかな女性と一緒に歩いておられまして…それとなく後ろを歩くとお二人の会話が聞こえてきました」
「なんて言ってた?」
ワクワクした様子で尋ねたアリアナを見て、ベスは頬を引き攣らせながら聞いた。
「お嬢様…楽しげですが、本当にクレメント様のことお好きだったんですよね?」
問われたアリアナはキョトンとしたあと、すぐ声を立てて笑った。
「当たり前じゃない。なんなら、君しか僕の瞳には映らない、みたいな馬鹿なこと言われても喜んでたわよ、この間まで」
「この変わり身の早さは一体…」
なんですか、と続けようとしたベスを遮ってアリアナは暗い笑みを浮かべて答えた。
「でもね、いまは可愛さあまって憎さ百倍なのよ」
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