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一通り話し終えると、ベスは浮かない顔をして尋ねた。

「確かに、お金目当てであるならそれも効果的かもしれません。ですが、結局お嬢様が嫁がれる以上、あいつの期待以上かどうかはさておき、今より裕福な暮らしをさせることになるではありませんか。」
「そう思うでしょ?」

悪戯っぽく笑ってアリアナは答えた。

「でもね、彼にはクレメント名義で事業をやってもらおうと思って」
「と言いますと」
「塩の販売は、あくまで私の名義。もちろん日々の暮らしや領地を豊かにするためには使うけれど、ハンゼ公爵家の資産ではないの。言うなれば私のポケットマネーね」
「はい。ですが、それも向こうは納得するでしょうか。ハンゼ公爵家の資産にするように言ってきませんか」
「どうかしらね。彼は現金さえ手に入れば、その方法なんて考えたことがないんじゃないかしら。2月くらい利益をそのまま渡してあげれば、あとはずっと入ってくるものと勘違いしてると思うわよ。」
「ですが、どれほど愚かでも、そう言う部分についてだけは突いてくる浅ましい人間はいるものです」
「愚か…間違いないわね。そうね。その時は塩の売買で損失が出たらハンゼ公爵として贖う必要があることを伝えたら、あっさり諦めると思うわ」
「塩の売買で損失が出ることなどほとんどないことは私でも分かります。そのような言葉に騙されてくれるものでしょうか」
「大丈夫だと思うわよ」
「そうですか…」

主人の婚約者が信じられない程愚かであったことに若干戸惑いつつ、ベスは納得した。

「ところで、公爵にしてもらう事業というのは、どう言うことでしょう?」
「ああ。それはね、彼の好きそうな宝石商でもすすめようかと思って」
「どう言うことでしょう」
「私が苦労なく200エラン稼いだら彼はきっと商売に興味を持つわ。簡単に大金が稼げるってね。でも、派手好みの彼ですもの、そもそも塩には興味を持たないと思うのよ。それくらいなら自分で煌びやかな事業をしたいと思うはず。」
「なるほど。だから塩の売買の利権についてもお嬢様は心配されていないのですね」
「ええ。だからクレメント様名義で宝石商ができるようにお膳立てしようと思って」
「クレメント様名義、ですか?ハンゼ公爵名義ではなく?」
「ええ。だってクレメント様名義なら失敗しても個人の資産の没収で済むけど、ハンゼ公爵名義ならハンゼ一家が損失を補填する必要が出てくるじゃない。そんなの私が嫌だと思わない?」

アリアナがにっこり微笑むと、ベスも同じようににこっと笑って言った。

「流石です、お嬢様。詳細をお聞かせください!」
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