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第3章 私の魔法は奇跡だって起こせるんだよ

恋愛相談に乗ってあげるべきなのかな

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「ラクス、苦しい」

 私は息が止まりそうになったよ。私の虚弱体質振りを舐めないでよね。ちょっとしたことですぐに倒れてしまう。本当に気を付けてほしい。

「ご、ごめん」

 ラクスは慌てて、私から離れた。
 ごめんで済むなら衛兵はいらないよ!
 ・・・・・・言ってみただけ。頭を下げてくれているのに許さないのは、さすがに嫌なやつ過ぎるからね。わざとではないのだから、私はラクスの謝罪を受け入れるよ。

「話を戻すけど、ラクスは私に フィリアの病気を治してほしいのかな?」
「そういうことだ」

 他人のことを考えられるのは立派だね。私は自分の事で精一杯で、 フィリアのことをすっかり忘れていたよ。 彼女は病気だから私の部屋を訪れることがなかったからだけど、 ゲームの知識がある私には言い訳にならないよね。
 フィリアのことを心配しているのはラクスだけではない。兄の フレドリック、父親の フェルディナンド、 母親のティアはもちろんのこと、 多くの人間が心配している。
 もっと早くにフィリアのことを思い出して、 彼女の病気を治してあげるべきだったね。反省。これからは ゲームの知識を使って、 迅速に対応することにするよ。
 でも、 この世界には文字を解析する魔法があるから、 日本語でネクヒロの 内容を書き記しても バレる可能性が高いんだよね。
 人は少しずつ忘れていく生き物だから、 完璧に覚え続けるのは至難の技だよ。暗号とかにするべきかな。
 いや、今はいいか。
 フィリアの病気を治すことが先決だよね。

「じゃあ、 フェルディナンド・・・・・・ 国王陛下に相談してみるね」

 可愛い娘の 病気を治すためならば、 フェルディナンド は金貨9999枚用意してくれると思う。 問題は 私の力を疑われないかだけど、 それについては魔王アスモデリアを 消滅させた実績があるからね。 フィリアはすぐに自由に走り回れるようになるよ。
 ・・・・・・ 私よりも自由に動き回れるようになるのは複雑な気分だけど、 私は素直に フィリア の事を 喜んであげられるよ。

 ところが、ラクスはなぜか 首を横に振った。

「それじゃダメなんだ」
「どうして?」
「 金貨は俺が用意する。でないと、 俺がフィリア様に良いところを見せられないだろ」

 ああ、そういうことか。ラクスは フィリアにかっこいいところを見せて、好きになってもらいたいんだね。わかるわかる。
 でも、 金貨9999枚だよ。5歳の子供がそう簡単に用意できるものなのかな。ラクスは 両親に迷惑をかけなければいいけど・・・・・・。

「 本当に用意できるの? 子供のお小遣いとは訳が違うんだよ?」
「 そんなことは百も承知だ。 俺がなんとしてでも用意する。だから、 それまでは誰にも言わないでくれ」

 ラクスの決意は固いようだね。 フィリア の病気が治るのは 本来ならば 10年以上先になるはずだったから、 彼女が自由に動き回れるようになるのはもう少しだけ待ってもらうことにしよう。
 乗りかかった船だからね。 私はラクスの恋の応援をすることにしたよ。

「わかった。 でもさすがに あんまり時間がかかるようなら、 大人に報告するからね」
「 一週間で用意する。 それまでは 俺に協力してくれ」

 子供が一週間で金貨を9999枚用意できるなんて、ラクスは 悪事に手を染めるわけじゃないよね。 少しだけ心配になってくるよ。
 ネクヒロのラクスの性格なら曲がったことは大嫌いなはずだし、少し接してみた印象でも彼が悪いことをできるとは思えないけどね。
 果たしてラクスは、どうやって わずか一週間で金貨9999枚集めるつもりなのかな。 少しだけ興味が湧いてきたよ。




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