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第2章 箱入りママの話

ママの決意( カトリーヌ視点)

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 あれから三年の月日が経ちました。
 けれど、クワトロは行方不明のままです。彼はアスモデリアに殺されてしまったのでしょうか。遺体が見つからなかったので、安否は分からず終いです。
 もしも生きていれば、重傷だったとしてもとっくの昔に傷が癒えていて、私の所に戻ってきてくれるはずですよね。頭の打ち所が悪く記憶喪失になった可能性も否定できません。
 しかし、クルセイラ様のつてで世界中を探してもらったというのに一向に見つからないということは、つまり・・・・・・。
 エリカに パパのことを聞かれたら、どう答えればいいかわかりません。

「クワトロ・・・・・・」
「ママ、どうかしたの?」

 私が暗い気持ちでいると、エリカが心配そうに私のそばによってきました。私はエリカのママなのです。娘を一番に守ってあげなければいけない立場なのです。弱気になってどうするのですか。
 私は今でもクワトロのことを愛しています。でも、今はエリカのことを大切にしていきたいのです。きっと、クワトロも私と同じ立場なら、同様の決意をするはずです。
 どこかで私達の事を見守ってくれていると信じていますよ。クワトロ。だから、あなたのために泣いてあげられないことを許してくださいね。


 本来は一歳になると、神殿で魔法変換の儀式が行われるのですが、エリカの場合は私がすでに変換していたので、一人だけ儀式に参加しませんでした。エリカの体が不自由というのも理由です。
 キャサリンや神官にエリカの体調を定期的に診てもらっています。体には何の異常は見られません。しかし、アスモデリアを消滅させるほどの魔法を発動した後遺症なのか、エリカは三歳になった今でも全く歩けないのです。


 三歳になると魔法適正が調べられて、魔法の使用が許可されます。エリカは身体強化の魔法を覚えれば、普通の子供と同じように歩き回れるようになるはずです。
 ところが、現実は残酷でした。
 エリカは 金貨9999枚消費しないと魔法が使えないことが判明したのです。普通は魔法によって消費量も変わるのですが、どうしてエリカだけ全ての魔法を発動させるのにとんでもない金銭を必要とするのでしょうか。
 私が無理矢理、エリカの魔力を貨幣魔法に変換した事が原因かもしれませんね。素人が手を出してはいけない分野だったのでしょう。
 エリカの魔法が発動している最中に魔法変換を施したのも要因かもしれません。
 魔力が二倍以上ある者に魔法をかけることはできません。ですが、魔法変換だけは別のはずです。そうでなければ、 魔力3000のクルセイラ様の魔力を誰も貨幣魔法に変換することができませんからね。私がエリカの魔力を変換できたのもそういう理由だと思っていました。しかし、エリカはあの時魔法を発動していたので、他の魔法をはね除けていたはずです。変換も普通は叶わないはずでした。
 私のスキルに原因がありそうですね。私は魔力が二倍以上ある者にも魔法をかけることができるのです。抵抗されることもありますけど、 魔力が2倍程度のフォトン様程度になら余裕で攻撃を通すことが可能ですよ。
 私は無我夢中でエリカの魔力を変換しました。でもそのせいで、エリカが発動していた魔法の消費量が魔法発動の基準となってしまったのかもしれません。
 エリカが自分で身体強化魔法をかけられないのなら、私がスキルを使って魔法をかけ続けてあげるしかありませんね。
 そう思ったのですが、エリカの抵抗値は予想を上回っていて、あっという間に身体強化魔法が解けてしまっていました。
 どうすることもできないのでしょうか。
 いえ、私はエリカのママです。諦めたりするものですか!

 私はクルセイラ様に協力してもらい、スキル強化の修行をすることにしました。そのせいでエリカと離れ離れの時間ができてしまったのですが、私の可愛い天使は健気に私のことを送り出してくれました。

 待っていてくださいね、エリカ。ママがすぐにあなたを自由に歩けるようにしてあげますからね。



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 次回からエリカの話に戻りますけど・・・・・・ カトリーヌが活躍しすぎると、エリカが魔法を使う必要がなくなってしまいそうですね(笑)

 まあ、一応エリカは魔法を使うことになります。お楽しみに(o≧▽゜)o
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