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第1章 転生少女の憂鬱

愛情の証なら仕方ないよね

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「エリカさんがアスモデリアを倒した時に、カトリーヌさんが慌ててエリカさんの魔法を貨幣魔法に変換しました」

 ママは私がクーデリアと同じ末路にならないように、私の魔法を変質させた。その時は私が【 ドラゴニックメテオブラスト】を 発動している最中だったから、 その魔法の消費量が基準となってしまい、私は 金貨を9999枚支払わなければ魔法を使用できなくなってしまっていた。
 ママは私のためを 思ってやったことなのだ。 とはいえ複雑な思いがするから、感謝することはできないけど、 恨んだりはしない。

「・・・・・・ そうだったんだね」
「エリカさんは 魔法適性値が高いから、 どんなに魔法を使用しても死ぬことは ありません。私は 3年間かけて、貨幣魔法を 魔力消費魔法に戻す方法を調べました。エリカさんが 望むのならば、 これからは自由に魔法を使うことができますよ」

 エセリアが 私にそう提案してくれた。 3年間も 私に 顔を見せなかったのは、 そういう理由だったんだね。 私は完全に 彼女のことを許して、【威圧】を解いてあげることにした。
 私も、やっと 魔法を使えるようになるんだね。身体 強化魔法を使って、 自由に歩き回れるようになる。 食事も自分一人でできるようになるんだ。 こんなに嬉しいことはないよ。

「 早く魔法を使えるようにしてよ」

 私が瞳をキラキラと輝かせると、エセリアは なぜか暗い表情を浮かべた。

「 ただし、カトリーヌさんの かけた魔法を無理やり破ることになるから、 その反動で彼女が傷ついてしまいます。 それでも魔法を自由に使えるようになりたいですか?」

 エセリアは 残酷な現実を突きつけてきた。 私に選択肢などない。 私は人を傷つけてまで、 自分の思い通りに生きようとは思わないよ。ましてや 大切なママを傷つけるなどありえないからね!

「 金貨9999枚ってとんでもない 代償だけど、ママが 私のことを思ってくれた愛情の証なんだよね。 だったら、このままでいいよ」
「 後で後悔しませんか?」
「うん!」

 エセリアの 質問に、 私は力強く頷いて見せた。ママを 傷つけない選択を後悔なんてしない。
 私はせっかく異世界に転生したのに、 自由に魔法を使用することができない。 正直言って不満はあるよ。 それでも今この時をもって、 私が選択したことなんだ。
 魔法が使えたら色々と便利かもしれない。 だけど、本当に一番大切なことは別のことなんだ。
 ママとの出会い。 様々な 人たちとの出会いが一番大切なことなんだ。
 ありがとう。 みんながいてくれるから、 私は魔法がなくても いいと思えるんだよ。
 体が不自由なことだって 私一人だけではない。 世界中には星の数ほど存在する。 私の場合はうっかり確認ミスで、 やはりこれも私が選んだことだ。
 元凶のエセリアには【威圧】で ダメージを与えておいたから、 これ以上誰かを恨む必要はない。
 私は少しだけ清々しい気持ちでいられるようになった。
 ・・・・・・ なんだか最終回っぽい雰囲気だね。
 だけど終わってなんてあげない。 と言うか、まだまだ終われないよ。

 私の気持ちの整理はついたけど、 エトワールとの確執が 解決していなかった。さて、 どうしたものかな。


「まだ 何か気になることがありますか?」
「人間ちゃんは、正義感の強い女の子のことを気にしているんだよね」

 エセリアの質問に、フォトンが私の代わりに答えてくれた。

「エトワールって、正義感が強かったの?」
 
 ネクヒロでは 彼女は プリシラの取り巻きでしかなかったから、 あまり印象には残ってないんだよね。 設定資料にも詳しいことは書かれていなかったはずだよ。

「 そのエトワールちゃんという子の家系は、代々民を守る ノブレスオブリージュに準じることを モットーにして、 清く正しく真面目に生きているのさ」
「リアラに ひどいことを言ってたのに?」

 本当に真面目な人間は他人の 悪口を言うことはない。 エトワールの 言動は悪役令嬢のそれとしか思えなかったよ。

「 出る杭は打たれるものだからね。 特に平民出身ならなおさらのことだ。だから、リアラが あまり悪目立ちしないように 釘を刺しておいたんじゃないかな」
「 エトワールさんは、両親から平民は守るべき存在だと教え込まれているから、リアラさんとエリカさんを 貴族の悪意から守る方法を必死になって考えたのでしょう」

 フォトンだけではなく、エセリアも エトワールについて説明してくれた。
 海千山千の 貴族の思惑が 絡み合ってるのかな。 よくわからないけど、 平民の立場では抵抗するすべがないよね。 でしゃばらずにおとなしくしていた方がいいのかもしれない。
 嫌われてでも間違っている方法かもしれなくても、私とリアラの 立場を確保するために 悪役を演じてくれた エトワール。 最初は嫌な奴と思ったけど、 不器用で可愛いところがあるね。
 エトワールの誤解を解いて、 なんとかみんなと仲直りさせることはできないものかな。

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