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第1章 転生少女の憂鬱

もふもふ妖精との素敵な契約

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 どうして、お城の敷地内に妖精がいるのかな。庭園には様々な植物があるけど、もっと人のいない森の中にいる イメージだよ。
 でも、マルシュ王国を守護している妖精が一人いた。光の妖精王フォトンで、クルセイラとの盟約に基づき、マルシュ城を外敵から守っている。確かクルセイラが姿を変えてからは、フォトンの魔力も低下して、白猫の人形としてヒロインのリアラの仲間になるはずだった。
 もふもふ、最高だよね!
 魔王がいないからフォトンがリアラの仲間になることはないけど、クルセイラに頼めば白猫 バージョンに 変身してもらって、もふらせてもらえないかな。
 私がキラキラと期待の眼差しをフォトンに向けると、彼はたじろぐように後ずさった。

「ねえねえ、フォトン。お願いがあるんだけど」
「人間ちゃん、どうして僕の名前を知っているのさ?」
「それは私がエリカ様だからだよ。なんてね」

 私は軽いノリで冗談を言った。なのに、フォトンはなぜか真面目な表情になっている。

「この魔力は、魔王アスモデリアを一撃で倒したもの・・・・・・!?」
「そんなこともあったかな。いまでは思い出の一ページだよ」

 よくわからない光に包まれて、気が付いたら終わっていた。魔王アスモデリアを消し炭にしたのは間違いないけど、私はその場面を目の当たりにしたわけではないから、今一実感が湧かないんだよね。
 魔族との戦争は、クルセイラと和平条約を結んだハズバンドが再び魔王に返り咲くことで終結したと思う。ネクヒロでもリアラがアスモデリアを倒した後に、ハズバンドが魔界を統治することになる。ちなみにハズバンドは攻略対象の一人で、彼のルートではリアラは魔王の妃となるんだよ。
 魔界との戦争が終わったことだけは魔法の授業で教わったから、きっと間違いない。
 今はとにかく平和だ。今さら赤ちゃんの頃の特典魔法のことで騒がれても、どう反応したらいいものか困惑するだけだった。
 訳がわからない発言をしてしまうのも仕方ないよね。

「 そんなことより、フォトンは 白猫になって、もふらせてよ!」
「もふ・・・・・・? それはどこの言葉なのさ?」

 フォトンは、もふもふという 言葉自体を知らないようだった。 どう説明したものかな。 なんとしてでも説得して、もふもふを 堪能したいよ。

「抱き締めたり、ナデナテすることかな。ダメ?」
「 できるものならしてみなよ」

 フォトンは 私を挑発するように 不敵に笑った。 ご丁寧に白猫の姿に変身してくれる。

「 じゃあ、遠慮なく・・・・・・」

 私はフォトンをもふらせて もらおうとして、 できなかった。 体が言うことを聞かないから、せっかくのもふもふなのに、 指一本触れることすら叶わなかった。
 泣いてもいいよね。しくしく。

「 現実を知る良い機会になったみたいだね」

 フォトンは 触れてはいけない一線を越えてしまったよ。 私はキレた。

「 そんなことを言うなら、私もフォトンに 現実を教えてあげるよ」

 私は 魔力を高めて、フォトンを【威圧】した。 魔力の暴走に近いけど、 きちんとコントロールしているから 周りに被害が及ぶことはない。フォトンだけに プレッシャーをかけ続ける。

「もう勘弁して!」

 フォトンは 耐え切れずに白旗を挙げた。

「 じゃあ謝って。そしたら許してあげる」
「 ごめんね」
「 よろしい」

 私は笑顔で、フォトンの 謝罪を受け入れた。すると、 彼はなぜか 驚いたように目を丸くする。

「 それほどの魔力による【威圧】ができるのに、 僕のことを支配しようとしないの?」
「 そんなことしないよ」

 フォトンは 光の妖精王だから、 私に魔法をかけることが可能だ。 強制支配して使い魔にすれば、 彼に毎日強化魔法をかけてもらって、 私は自由に歩き回ることができるようになる。
 でも、 私は誰かを犠牲にしてまで 歩けるようになりたいとは思わない。 現実ではありえない理想論だとしても、 私はなるべくみんなと仲良くしていきたいんだよ。

「 人間ちゃんはクルセイラとは 違うんだね。まあ、クルセイラも わがまま姫というだけで、他人を 支配するような真似はしなかったけどね」

 フォトンは 昔を懐かしむように微笑んだ。そして、 彼は何故か私に契約の指輪を手渡してくる。

「 よかったら僕と契約してよ」
「フォトンは 私の 使い魔になってくれるの?」
「 そうだよ」
「 ありがとう」

 私はフォトンに お礼を言って、 契約の指輪を右手の薬指にはめた。 これで契約完了だね。 随分とあっさりとしているけど、 本来は陽性に認められて契約の指輪をもらえるまでが大変なんだよ。
 フォトンは どういう風の吹き回しだったのかな。
 理由は何でもいいよね。

「 それじゃあ早速。フォトン、 私に身体強化魔法をかけてよ」
「 それはできないんだ。ごめんね」
「 ひょっとして、妖精魔法も お金を支払う必要があるの?」
「 僕程度の魔力では 人間ちゃんに魔法をかけられないんだ」
「 なんですと!?」

 どうやら私は、 妖精王よりも 2倍以上の魔力があるようだった。

「 何とかならないの?」

 私がそう尋ねると、フォトンは思案して 絶望的な答えを導き出した。

「アスモデリアなら、 人間ちゃん・・・・・・エリカちゃんに 魔法をかけられた可能性があったけど・・・・・・」

 魔王アスモデリアは、 私が赤ちゃんの頃に倒してしまったからね。つまり、 私は一生他人から魔法をかけてもらえないことが決定した瞬間だった。
 こうなったら 玉の輿に乗って、 素敵な旦那様に金貨を9999枚用意してもらうしかなさそうだね。
 ・・・・・・ 1回の魔法で金貨9999枚 消費されるなんて、 燃費が悪すぎて現実的じゃないよ。
 この世界には神も仏もいないのか!
 私は魔法は使えないけど、 魔力を高めて【威圧】することができる。 女神だって例外じゃないよ。エセリア、 マジで覚えておきなさいよね!
 
「 私のせいではありませんよ。本当ですよ?」

 エセリアは 慌てて姿を表して、私に頭を下げてきた。 でも、許してあげない。さて、 どうしてくれようか!


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