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第1章 転生少女の憂鬱

体が不自由なんて聞いてないっ!

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 3歳になったよ。 
 他の子供達は元気よく走り回っている。 でも私は 歩くどころか、ハイハイすら できずにいる。 寝たきりの状態だ。
 医者に診てもらっても 原因不明で、 体自体は健康そのものという話だった。
 まさか!?
 私は体が自由に動かせない理由に思い当たった。
 私はポイントを全て魔法適性に振り分けた。つまり、 他のステータスの 数値は全てゼロなのである。身体能力も運動音痴どころの騒ぎではなかった。
 魔力がゼロでは魔法が使えない。 身体能力がゼロでは動けるわけがないよね。
 身体強化の魔法を今すぐ教えて欲しい。 そうすれば、まともに動けるはずだよ。
 3歳になると魔法適性が調べられて、 魔法の練習を始めることができる。ついに 私の時代が始まるのだよ。
 言ってみただけ。
 普通に動けるようにはなりたいけど、 騒動を起こす気はないよ。
 普通に魔法が使えるようになりたいな。

 
 魔法適性は私の部屋で調べることになった。 私が自由に動けないからだね。 ご考慮感謝いたします。
 貴族の子息令嬢は、 いつものようにリラックスした雰囲気だ。 勝手知ったる場所で特に危険があるわけじゃないから、 緊張するようなことはない。
 私も自分の部屋に人が集まることに慣れたよ。 プライベートの時間が欲しいと思ったこともあるけど、 どうせ他人に面倒を見てもらわないと全く動けないからね。 周りに誰もいないと困る。

 特殊な水晶に手を当てると、 魔法適性が 表示される。 魔力値の平均値は100という。
 さて、まずは フレドリックの魔法適性が調べられるようだ。 さすがは王族だけあって魔力値 500 ある。 使える属性は光、水、風の 三つのようである。
 プリシラは魔力値1500。 属性は光、 闇、 火、風の 四つのようだ。
 フレドリックはあからさまにがっかりとした表情をしている。ドンマイ。
 他の子息令嬢たちが調べられたけど、 魔力値100を超えるものはそうそういなかった。
 フレドリックはもっと自信を持っていいんだよ。 プリシラはクルセイラの 娘だから、 チートだと言っても過言ではないからね。
 次はリアラの番だ。 魔力値1500。 全ての属性魔法を使うことができる。 さすがヒロインだね。 この時に 、彼女がネクロマンサーだとも判明した。
 ネクロマンサーだから悪の存在というわけではない。 その力を利用して ゾンビを生み出すような悪者もいるけれど、 ネクロマンサーは死者を成仏させる存在だ。
 リアラの場合は、 人形やぬいぐるみに髪の毛などの 死者の体の一部を入れて魂を憑依させて、未練を晴らすように協力していた。 ゲームの中での話だけどね。 彼女はきっと、 将来同じように行動すると思うよ。
 最後は私だね。 魔力値9999。 全ての魔法を使用することができる。 ただし、一回魔法を発動させるのに金貨9999枚支払わなければならない。
 
 え? 何これ?
 魔力値は ポイントを全て魔法適性につぎ込んだからだよね。 全ての魔法を使用することができるのも同じ理由だ。 問題は金貨の方だよ。 9999枚支払わなければならないって、どういうこと!?
 まったくもって、わけがわからないよ。
 この世界では、魔法を使用するためにお金を支払わなければいけないのかな。
 そういえば、エセリアが 転生特典で 一度だけ 魔法を無料で発動することができると言っていた。 その後に魔法を使用できなかったのは、 魔法を発動させるにはお金が必要だったからなんだね。
 ゲームでは 使用回数をチャージしていた。でも、 その時もお金を支払っていたから、 矛盾点はなさそうだね。
 どんなに才能があっても、平民が気軽に魔法を発動できないわけだよ。 裕福な商人や 貴族でなければ強大な魔法を発動することができない。
 生活魔法は銅貨で 支払えるものが多いから、 民衆の間でも広まってるみたいだ。
 私の場合は支払う金額が金貨9999枚と固定されているから、 生活魔法ですら気軽に使えない可能性があるよ。
 せっかく魔法の才能があるというのに、 練習することができない。 一回魔法を発動させるだけで金貨9999枚が消えていくんだよ。 そんなもったいないことができるか!
 これは身体強化の魔法も諦めるしかなさそうだね。 効果時間が有限だと 何かあるたびに強化魔法をかけなければならない。 たとえ一日に金貨一枚の消費だとしても、 私なんかのために そのお金を用意してくれる者はいないだろう。ママは 無理して用意してくれそうだけど、 体を壊すような真似はさせたくない。
 手の届かない金額だから、逆に諦めがつくというものだよ。

「クルセイラ様も 一般レベルよりも 消費金額が 多かったけれど、 これほどの 強大な魔力適正は見たことがないわ!」

 宮廷魔術師のお姉さんーー キャサリンが驚愕の表情を浮かべている。
 こう見えても魔王を一撃で粉砕するほどのレベルですからね。 魔法だけなら世界一だと思う。・・・・・・ 発動することができればの話だけどね。

「やはり、 魔王アスモデリアを倒したのは・・・・・・」

 私が魔王を倒したこともばれてたんだ。 あの時の光を目撃されて、 私の事を監視するために離宮に 連れてこられた。 強大な力を持つ者が 王家に仇なすということもあり得るからね。 その前にいっそのこと囲ってしまうという 狙いだったのだろう。
 水晶の 判定で、 私に間違いなく強大な 魔力があることが 確定した。
 周囲の態度が豹変して、 戦争の道具にされるためにママと 引き離される展開だけは勘弁してもらいたい。
 体が不自由で 消費効率の悪い魔法しか使用できない私は、 役立たずでしかないよ。だから、 そっとしてほしい。

 今のところは何かを強要されることはない。 私の部屋で 魔法の授業が行われるのも以前からの決定事項だった。
 でも、 不安なものは不安なんだよ。 前世でもまだ子供だったんだから、 どうしようもない問題だね・・・・・・。




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