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コールオブホーリーガール
終焉の一撃
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「よしっと。じゃあ早速ぶちぬいて……」
アンチマテリアルライフル【ダネル】をクレールは抱え、人参ほどの大きさの20ミリ口径、オリハルコンコーティングをされた弾丸を装填する。
本人こそ気づいてはいないが、その一撃は、1キロ離れた先にある魔王にすら破滅を与えるほどの威力。
それをこの至近距離で放つのだ。
その一撃が放たれれば魔王の死は絶対であった。
それを知ってか、はたまた偶然か。
起動をしたばかりの魔王は、目の前にいる矮小な人間を敵と認識した。
【GUOOOOOOO!!!】
「わわわ!? やばっ!」
轟音を響かせ、魔王は鍾乳洞を破壊しながら強引に右腕を振り上げ、クレールへと振り下ろす。
その一撃は岩盤の崩落に近い災害であり、その身に受ければ人間などひとたまりもないほどの暴力であったが。
【ダイナミック! フルスイング!!!】
その腕を、それこそ指一本だけでも人間一人分の大きさを誇るその腕を、ヤッコはメイス一本で殴り飛ばす。
【GUOOO!?!?】
「がっふっ!?」
人間業ではない、限界を超えた一撃。
もちろん衝撃により奴は全身の骨を砕かれ血を噴き出すが。
「即死しなければ、ダメージゼロですわ!!」
しかし、それだけの大怪我すら、ヤッコの奇跡は瞬時に治癒をさせる。
そして。
【GUOOOOOOO!!!】
再度振り下ろされた腕を、ヤッコは今度は正面から受け止める。
「ふっふふふ!!! 効きません、効きませんよ! 全身バッキバキにやられましたからね! 私はいまろ魔王より硬いんです!!うふっ、うふふふふふふ!!!」
「「うわ、怖っ」」
魔王の一撃を肉体一つで受け止めて、あまつさえ恍惚の表情を浮かべる聖女に、クレールとトンディは正直ドン引きをした。
【GUOOOOOOO!!!】
と、そんな三人をよそに、魔王は瞳を青く光らせると、何やら魔法陣のようなものが辺りに浮かび上がる。
「!? ヤッコ! 魔法が来るぞ!?! その、硬くなると魔法も大丈夫なのか!?」
「え!? ま、魔法は無理です! 私物理専門ですので、落雷程度の魔法までしか防げません!?」
「うん! それでも十分人間やめてるけど魔王の魔法の前じゃ歯が立たないってのは分かった!!どうしようトンディ!?」
アンチマテリアルライフルを構えながら慌てるクレールだったが、そんな相棒の肩をトンディは呆れるように叩くと。
「大丈夫、私がやる」
赤い瞳を見開き、運命を変える。
【GUOOOOOO!?】
カラカラとサイコロの音が響き、トンディのスキル、ホイールオブフォーチュンにより、放たれた魔法はクレール達から大きく外れ。
「もう一回!!」
再編された運命により、魔王はその身に自ら放った魔法を受ける。
【!!!?】
轟音と共に魔王の咆哮は中断され、弱点を隠すように装備された装甲が魔法の熱量によってドロドロと溶け始め、中からその心臓を曝け出す。
「見えた。クレール!」
溶けた装甲の奥、魔法により開けられた大穴の先に見えるのは、煌々と赤く輝く魔王の核。
純然たる魔力の塊にして、その、核はいかなる魔法もいかなる神秘も受け付けず、勇者の刃を持ってしても傷ひとつ残すことができない。
神の力を有する物に対して絶対的な耐性を誇る神の天敵である。
仮に、そのコアを撃ち破ることができるものがあるとしたらそれは。
純粋かつ、圧倒的な物理攻撃による破壊だけである。
「任せろトンディ!!!」
クレールは炎の雨のように降り注ぐ、溶鉄の中をくぐり抜け、ヤッコの抑える腕を駆け上がり胸部へと躍り出る。
【!!!!!!!】
魔王は悟る、自らの腕を駆け上がるそれの持つものは自らを破滅させうる物であると。
逃れられない死が迫るのと同時に、カラカラ魔王の脳裏にサイコロのなる音が響く。
「これだけでかけりゃ! 外さないもんね!!!」
【GUOOOOOOO!!!!】
最後の抵抗と左腕を振り上げる魔王。
しかし、クレールは冷静にその引き金を引いた。
「────!!!」
一瞬の静寂が辺りを包み、一拍置いて轟音が鳴り響く。
雷鳴をいくつも重ねたかのようなその音は、魔王の終焉を告げる鐘の音にも似ており。
その日、鉄の魔王はその核を砕かれ二度と動かなくなった。
全ての終わりを告げるように。
または、冒険者達の勝利を祝福するように、砕けた核の中から確定した未来の断片が降り注いだのであった。
アンチマテリアルライフル【ダネル】をクレールは抱え、人参ほどの大きさの20ミリ口径、オリハルコンコーティングをされた弾丸を装填する。
本人こそ気づいてはいないが、その一撃は、1キロ離れた先にある魔王にすら破滅を与えるほどの威力。
それをこの至近距離で放つのだ。
その一撃が放たれれば魔王の死は絶対であった。
それを知ってか、はたまた偶然か。
起動をしたばかりの魔王は、目の前にいる矮小な人間を敵と認識した。
【GUOOOOOOO!!!】
「わわわ!? やばっ!」
轟音を響かせ、魔王は鍾乳洞を破壊しながら強引に右腕を振り上げ、クレールへと振り下ろす。
その一撃は岩盤の崩落に近い災害であり、その身に受ければ人間などひとたまりもないほどの暴力であったが。
【ダイナミック! フルスイング!!!】
その腕を、それこそ指一本だけでも人間一人分の大きさを誇るその腕を、ヤッコはメイス一本で殴り飛ばす。
【GUOOO!?!?】
「がっふっ!?」
人間業ではない、限界を超えた一撃。
もちろん衝撃により奴は全身の骨を砕かれ血を噴き出すが。
「即死しなければ、ダメージゼロですわ!!」
しかし、それだけの大怪我すら、ヤッコの奇跡は瞬時に治癒をさせる。
そして。
【GUOOOOOOO!!!】
再度振り下ろされた腕を、ヤッコは今度は正面から受け止める。
「ふっふふふ!!! 効きません、効きませんよ! 全身バッキバキにやられましたからね! 私はいまろ魔王より硬いんです!!うふっ、うふふふふふふ!!!」
「「うわ、怖っ」」
魔王の一撃を肉体一つで受け止めて、あまつさえ恍惚の表情を浮かべる聖女に、クレールとトンディは正直ドン引きをした。
【GUOOOOOOO!!!】
と、そんな三人をよそに、魔王は瞳を青く光らせると、何やら魔法陣のようなものが辺りに浮かび上がる。
「!? ヤッコ! 魔法が来るぞ!?! その、硬くなると魔法も大丈夫なのか!?」
「え!? ま、魔法は無理です! 私物理専門ですので、落雷程度の魔法までしか防げません!?」
「うん! それでも十分人間やめてるけど魔王の魔法の前じゃ歯が立たないってのは分かった!!どうしようトンディ!?」
アンチマテリアルライフルを構えながら慌てるクレールだったが、そんな相棒の肩をトンディは呆れるように叩くと。
「大丈夫、私がやる」
赤い瞳を見開き、運命を変える。
【GUOOOOOO!?】
カラカラとサイコロの音が響き、トンディのスキル、ホイールオブフォーチュンにより、放たれた魔法はクレール達から大きく外れ。
「もう一回!!」
再編された運命により、魔王はその身に自ら放った魔法を受ける。
【!!!?】
轟音と共に魔王の咆哮は中断され、弱点を隠すように装備された装甲が魔法の熱量によってドロドロと溶け始め、中からその心臓を曝け出す。
「見えた。クレール!」
溶けた装甲の奥、魔法により開けられた大穴の先に見えるのは、煌々と赤く輝く魔王の核。
純然たる魔力の塊にして、その、核はいかなる魔法もいかなる神秘も受け付けず、勇者の刃を持ってしても傷ひとつ残すことができない。
神の力を有する物に対して絶対的な耐性を誇る神の天敵である。
仮に、そのコアを撃ち破ることができるものがあるとしたらそれは。
純粋かつ、圧倒的な物理攻撃による破壊だけである。
「任せろトンディ!!!」
クレールは炎の雨のように降り注ぐ、溶鉄の中をくぐり抜け、ヤッコの抑える腕を駆け上がり胸部へと躍り出る。
【!!!!!!!】
魔王は悟る、自らの腕を駆け上がるそれの持つものは自らを破滅させうる物であると。
逃れられない死が迫るのと同時に、カラカラ魔王の脳裏にサイコロのなる音が響く。
「これだけでかけりゃ! 外さないもんね!!!」
【GUOOOOOOO!!!!】
最後の抵抗と左腕を振り上げる魔王。
しかし、クレールは冷静にその引き金を引いた。
「────!!!」
一瞬の静寂が辺りを包み、一拍置いて轟音が鳴り響く。
雷鳴をいくつも重ねたかのようなその音は、魔王の終焉を告げる鐘の音にも似ており。
その日、鉄の魔王はその核を砕かれ二度と動かなくなった。
全ての終わりを告げるように。
または、冒険者達の勝利を祝福するように、砕けた核の中から確定した未来の断片が降り注いだのであった。
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