ユリとウサギとガンスミス〜火力不足と追放された【機工術師】ですが、対物ライフルを手に入れてからは魔王すら撃ち抜く最強の狙撃手になりました〜

nagamiyuuichi

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コールオブホーリーガール

トンディ怒りの一撃

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 挑発をするようにそう言い放つトンディ、その言葉にアリサは顔を赤くして激怒する。

「る、ルーキーですって!? 私は勇者グレイグと魔王を倒した冒険者よ!! たかがウサギが調子に乗ってると、痛い目見るわよ!」

「ふぅん、ならやってみて」

 そう短く告げると、トンディは相手を小馬鹿にするように一直線にアリサへと跳ぶ。

当然の話ではあるが空中で人間は身動きを取れない。

真っ直ぐ魔王の頭頂部から肩にいるアリサの元へと跳ぶトンディは、どこからどうみてもただの的でしかない。

「馬鹿が! どっちが素人よ草食動物!! そんな一直線の攻撃ぐらい簡単に躱して……あれ?」

 飛び降りてくるトンディを避けようとアリサは身を翻そうとするが、その動きは何かに阻害される。

「言ったでしょう、周りが見えてない」

 トンディの言葉に、アリサは慌てて背後を見ると、自分のローブが、弓矢で足場である魔王の鎧に打ち付けられている。

「まさか、さっき外れた一発が!?」

 慌てて服を脱ごうにも、防御姿勢を取ろうとも、すでにトンディは眼前に降り立っており、小柄な体躯からは想像もできないほどの脚力を秘めた足が振り上げられている。

「クレールの悪口全部聞こえてたから。覚悟して」

 その表情は静かに、しかし烈火の如き怒りに包まれており、アリサは思わず恐怖に顔を引き攣らせる。

「ま、ま、ま、まってよ!? 全部、全部クレールが悪いのよ!!貴方だってあの女にきっと騙されて……」

「問答無用、ぶっ飛ばす」

 静かな処刑宣告と同時に、振り上げられたトンディ の踵落としがアリサを守っていた防護障壁を粉砕し。

「ひっ!?」

「落ちろ、ド三流」

「ひぎぃ!?」

 踵落としの勢いを残したまま放たれた回し蹴りを綺麗に顔面で受けたアリサは、錐揉み回転をしながら
頭から鍾乳洞の岩肌へと叩きつけられた。

「あ、アリサーー!!?」

 頭から落下をしたアリサに、グレイグは慌てて駆け寄ろうと走るが。

「貴方もこんな騒ぎ起こして、お仕置き」

「へっ!?」

 魔王の肩から飛び降りたトンディは、勢いをそのままに飛び蹴りをグレイグの下腹部やや下あたりに叩き込む。

「潰れろ!!!!」

「!?!?ほでゅあーーーーーーーーーーーー!!!??!」

 何かが破裂するような音の後、グレイグは泡を吹きながら絶叫し、その場にもんどり打って意識を失う。

「ああぁ!!? ぐ、グレイグが、グレイグの【自主規制】が!? と、トンディやりすぎだ!? これじゃあ、グレイグが女になっちゃうよ!?」

「大丈夫、どうせまた生えてくる。ぺっ」

 悪態をつくように転がるグレイグに唾を吐くトンディ。

「っふふ」

 その様子は、明らかにクレールを追い出した人間への恨みがこもっており、思わずクレールは笑ってしまう。

「むー。 何? なんで笑うの?」

「あはは、ごめんごめん、つい嬉しくてさ。ありがとうトンディ。私のために怒ってくれて」

 笑いながらクレールはトンディの頭をもふもふと撫でる。

「むー。頭、撫でないー」

「いいからいいからー!減るもんじゃないしー」

 そう言いながら戯れ合う二人。

 しかし、そんな仲睦まじい光景に水を刺すように。

【GUOOOOOOO!!!!】

 己の復活を誇示するように、鉄の魔王は咆哮を上げる。

「なっ!? 魔王が!?」

 蒸気のようなものを吹き上げ、ゆっくりと動き始める鉄の魔王。

 その駆動音に合わせるように、アリサの笑い声が響く。

「あっははははははははははははは!!! 既に魔王の復活に必要な術式の発動は終わってるのよ! 残念だったわね、鉄の魔王は止まらないわ!!」

「ア、アリサ!?」
 
 頭から血を噴き出しながらも、勝利を確信するかのように笑うアリサ。

 頬は大きく腫れ上がっているが、元気そうだ。

「落下前に障壁を貼り直したみたいだね。 ちっ」

 そんな様子にトンディは不機嫌そうに舌打ちを漏らし、矢の矢尻を外してつがえる。

「あんた達もこの街も、グレイグをバカにする奴らはみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな!!!踏み潰されちゃえばい、い゛ぃゔぇ!?」

「うるさい」

 すこん、という音が響き今度こそ意識を刈り取られるアリサ。

 そんな様子にクレールは呆れたようにたはは、と笑うと。

 目の前の魔王に向き直る。

「どーするトンディ、なんか、これ動き出すみたいだよ?」

 半ば諦めも混ざったようなクレールの言葉であったが、トンディは鼻をふんと鳴らす。

「問題ない、ヤッコに取りに行かせた」

「取りに? 何を?」

「あらあらあら、お二人ともー! 大変なことになってますねー!」

 トンディの言葉に、クレールが首を傾げると、タイミングを合わせたかのように奴の声が響く。

 その手にはクレールのアンチマテリアルライフルが抱えられており。

「え、まさかトンディ??」

「魔王討伐、やっちゃえクレール」

 トンディは楽しげに口元を緩めたのであった。
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