47 / 55
コールオブホーリーガール
黒幕
しおりを挟む
「さて、拷問をした二人から得た情報を整理すると、貴族街に住む蒐集者ダルハザ、という男がアイシャの父親を誘拐した犯人である可能性が高いわけだが」
ぼろぼろになったギルドの中、損傷の少ない会議室にてキリサメは魂の抜けたギルドマスターとの傍でそう情報を整理する。
意識もない状態で情報を吐き出した二人によると、二人を雇ったのは貴族街に住むダルハザという人物であり、骨董品や魔法具の蒐集が趣味な彼は、ウスの異本の捜索を続けているガイアスに目をつけ。二人に誘拐を依頼、その後ウスの異本の情報を吐かないガイアスにしびれを切らし娘のアイシャを狙ったのだという。
「ギルドを襲った理由については、ダルハザのガイアス誘拐がバレそうになったら、関係者を皆殺しにしろと命令されていたから……だそうだ」
「自分勝手」
不機嫌そうに鼻を鳴らすトンディに、クレールは落ち着けとトンディの頭を撫でる。
「貴族というと、それぞれ派閥がありますし……私も何度か耳にする機会があると思うのですが……ダルハザという方には聞き覚えはありませんね」
「まぁ、聖女さまが知らないのも無理はないだろう。 このダルハザという男は貧民街出身でな、莫大な富を得て最近貴族の仲間入りをした男だ」
「なるほど、貴族になるためには貴族の家に生まれるか、国と領主に莫大なお金を上納するかのどちらかしかありませんからね……しかし、戦争でどこも金欠だというのに。よくもまあ貴族になるだけの上納金を納められましたね」
感心するようなヤッコの言葉に、キリサメは「その通り」と頷く。
「聖女さまのいう通り、貧民街から貴族になるというのは異例も異例。このエリンディアナでは領主を、下手をすれば王都の貴族たちですらしのぐ財産を保有しているとの噂もある」
「なるほど、それだけお金をつめればあれだけの手練れを雇えるわけです」
「屋敷はエリンディアナの貴族街の最西端……トンディの分析通り、敷地のすぐそばには林檎の果樹園が隣接している」
「ビンゴ‼︎ そんじゃ早速突入して……」
飛び上がるように指を鳴らすクレール。
しかし、それをキリサメは首を振って静止する。
「まて、金持ちだと言っただろう。 庭の敷地には無数のゴーレム兵士に、ヘルハウンドドッグとどれもこれも凶悪な魔物ばかり。屋敷の中にどれほどの警備がいるかも分からない状況で正面突破は無謀にすぎる」
「じゃあどうするんだよ」
キリサメの言葉にクレールは口を尖らせてそう問いかけると。
「あ、そういえばダルハザって名前で思い出した」
先ほどまで魂が抜けたようになっていたギルドマスターは、何かを閃いたかのように急に声を上げる。
「ようやくお目覚めですかマスター。……それで、閃いたとは?」
「いやね、ダルハザって確か鉄の時代のレガシー集めが趣味みたいでさ。ウスの異本を探してるのもその一貫なんだーって話を思い出して」
「レガシー集めが趣味。なるほど……しかしそれがどうしたのですか?」
「いや、正面から攻めいるのは難しいかもしれないけど、鉄の時代の珍しいものを持って行ったら、案外簡単に招き入れてくれるかもしれないなーって」
ギルドマスターの言葉に、トンディとクレールは互いに顔を見合わせる。
歴史的に価値があり、鉄の時代のもの。
もしダルハザという男が、鉄の時代の遺物という視点でウスの異本を求めているのであるとすれば。
「クレール……」
そっとポーチから、クレールはノートを取り出す。
千年の歴史を超え健在する。
全てとはいえないが、鉄の時代の人間を意思を、言葉を記した遺物。
「これ、使えるかも……」
トンディはそう呟き、クレールも確信に近い何かを感じるのであった。
□
ぼろぼろになったギルドの中、損傷の少ない会議室にてキリサメは魂の抜けたギルドマスターとの傍でそう情報を整理する。
意識もない状態で情報を吐き出した二人によると、二人を雇ったのは貴族街に住むダルハザという人物であり、骨董品や魔法具の蒐集が趣味な彼は、ウスの異本の捜索を続けているガイアスに目をつけ。二人に誘拐を依頼、その後ウスの異本の情報を吐かないガイアスにしびれを切らし娘のアイシャを狙ったのだという。
「ギルドを襲った理由については、ダルハザのガイアス誘拐がバレそうになったら、関係者を皆殺しにしろと命令されていたから……だそうだ」
「自分勝手」
不機嫌そうに鼻を鳴らすトンディに、クレールは落ち着けとトンディの頭を撫でる。
「貴族というと、それぞれ派閥がありますし……私も何度か耳にする機会があると思うのですが……ダルハザという方には聞き覚えはありませんね」
「まぁ、聖女さまが知らないのも無理はないだろう。 このダルハザという男は貧民街出身でな、莫大な富を得て最近貴族の仲間入りをした男だ」
「なるほど、貴族になるためには貴族の家に生まれるか、国と領主に莫大なお金を上納するかのどちらかしかありませんからね……しかし、戦争でどこも金欠だというのに。よくもまあ貴族になるだけの上納金を納められましたね」
感心するようなヤッコの言葉に、キリサメは「その通り」と頷く。
「聖女さまのいう通り、貧民街から貴族になるというのは異例も異例。このエリンディアナでは領主を、下手をすれば王都の貴族たちですらしのぐ財産を保有しているとの噂もある」
「なるほど、それだけお金をつめればあれだけの手練れを雇えるわけです」
「屋敷はエリンディアナの貴族街の最西端……トンディの分析通り、敷地のすぐそばには林檎の果樹園が隣接している」
「ビンゴ‼︎ そんじゃ早速突入して……」
飛び上がるように指を鳴らすクレール。
しかし、それをキリサメは首を振って静止する。
「まて、金持ちだと言っただろう。 庭の敷地には無数のゴーレム兵士に、ヘルハウンドドッグとどれもこれも凶悪な魔物ばかり。屋敷の中にどれほどの警備がいるかも分からない状況で正面突破は無謀にすぎる」
「じゃあどうするんだよ」
キリサメの言葉にクレールは口を尖らせてそう問いかけると。
「あ、そういえばダルハザって名前で思い出した」
先ほどまで魂が抜けたようになっていたギルドマスターは、何かを閃いたかのように急に声を上げる。
「ようやくお目覚めですかマスター。……それで、閃いたとは?」
「いやね、ダルハザって確か鉄の時代のレガシー集めが趣味みたいでさ。ウスの異本を探してるのもその一貫なんだーって話を思い出して」
「レガシー集めが趣味。なるほど……しかしそれがどうしたのですか?」
「いや、正面から攻めいるのは難しいかもしれないけど、鉄の時代の珍しいものを持って行ったら、案外簡単に招き入れてくれるかもしれないなーって」
ギルドマスターの言葉に、トンディとクレールは互いに顔を見合わせる。
歴史的に価値があり、鉄の時代のもの。
もしダルハザという男が、鉄の時代の遺物という視点でウスの異本を求めているのであるとすれば。
「クレール……」
そっとポーチから、クレールはノートを取り出す。
千年の歴史を超え健在する。
全てとはいえないが、鉄の時代の人間を意思を、言葉を記した遺物。
「これ、使えるかも……」
トンディはそう呟き、クレールも確信に近い何かを感じるのであった。
□
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~
桜井正宗
ファンタジー
Cランクの平凡な錬金術師・カイリは、宮廷錬金術師に憧れていた。
技術を磨くために大手ギルドに所属。
半年経つとギルドマスターから追放を言い渡された。
理由は、ポーションがまずくて回復力がないからだった。
孤独になったカイリは絶望の中で三毛猫・ヴァルハラと出会う。人語を話す不思議な猫だった。力を与えられ闇の錬金術師に生まれ変わった。
全種類のポーションが製造可能になってしまったのだ。
その力を活かしてお店を開くと、最高のポーションだと国中に広まった。ポーションは飛ぶように売れ、いつの間にかお金持ちに……!
その噂を聞きつけた元ギルドも、もう一度やり直さないかとやって来るが――もう遅かった。
カイリは様々なポーションを製造して成り上がっていくのだった。
三毛猫と共に人生の勝ち組へ...!

勇者の国~行き過ぎた主義の結果~【短編】
キョウキョウ
ファンタジー
ある時代に、勇者至上主義にしている王国があった。
そんな国で冒険者として働いていた男が居た。
彼のもとに、勇者の補佐という仕事を依頼しに4名の騎士が来る。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

旅の道連れ、さようなら【短編】
キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。
いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。

【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる