35 / 55
コールオブホーリーガール
厄介払い
しおりを挟む
キリサメの姿はない様で、その表情は少しばかり困ったように歪んでいる。
「どちら様でしょうか?」
「うちのギルドマスター。 あんたが寝てる時も来てたんだけど」
「あら、お初にお目にかかりますギルドマスター様。 私アリアン教会聖女をしております。ナグリヤッコシャトーマルゴーともうしまけっぷ」
「おい今ゲップしたぞ。 聖女様ゲップしたぞ」
「……それでギルドマスター。 そうもいかないってどう言う事?」
「あぁ、じつはギルドに戻ってすぐに鳩便で依頼が届いてねぇ」
「……まさか」
「察しが良くて助かるよトンディちゃん。 内容は簡単に言うと聖女の護衛と保護。 なんかしばらくここで面倒を見てほしいなんて内容の手紙が送られてきたんだー」
「完全に問題児送りつけられてるじゃないか‼︎」
「あらあら? もしかして私、さらっと厄介払いされてます??」
「というか。なんで私たちがやる流れになってるの?」
「いやーそれは飲んだくれでも彼女が聖女様だからさ。 護衛はマスターが選んだ最高の人材をっていうのが条件でさー。 わたしここの街で知ってる冒険者クーちゃんとトンディちゃんだけだし? まぁ、君たちのところにいるのは偶然だけど、拾ってくれたのが君たちでラッキーだったよ」
「なんかさ、もう私たちが受けるみたいな口ぶりだけど」
「わたし達、うけるとはいってない」
「まぁ特に危険な依頼でもないしいいじゃんいいじゃーん‼︎ うちもスポンサーには逆らえないし? 断ろうものなら冒険者ライセンス剥奪しちゃうよ? 主に私の権限で」
ぺろりと舌を出して可愛らしくアキはそういうが。
その行動とは裏腹に発言は横暴そのものであり、トンディは顔をしかめた。
「なんという横暴」
「あの……わたし聖女として恩人であるお二人にそこまで迷惑をおかけするわけには……」
「そうなの? もう教会の監視の目もないし、何より聖女としての身の上を隠してもらうことになるから人の目気にしないでお酒がのめるよ?」
「お世話になります‼︎ トンちゃん‼︎ クーちゃん‼︎」
「おい聖女」
瞳を輝かせながら勢いよく頭を下げるヤッコにクレールは思わず突っ込んだ。「むぅ……護衛と保護って、冒険者は依頼を二つ掛け持ちはできない。 お父さんの手がかり、探せなくなる」
真剣な面持ちでそうトンディは呟くが、それにたいしてアキは「大丈夫大丈夫―」と気軽に笑う。
「そこは流石に特例にするよー。 こっちも人手は足りないし、あっちもいきなりの依頼なんだ。 それぐらいの条件は飲んでもらうから安心してー。まぁ、聖女様とは常に動向をしてもらうことになると思うけど、聖女っていうのは教会随一の加護と戦闘力を持つ者のみに与えられる称号だし? 戦力に関しては問題はないとおもうよ?」
アキの紹介に、ヤッコは力こぶを作りながら鼻を鳴らす。
「わたし、腕には覚えがありますのでご安心ください‼︎」
「そこはまぁ……心配はしてないけれど」
顔を見合わせるクレールとトンディであったが、冒険者ライセンスを人質に取られてはなすすべもなく。
「はぁ、しかたない。 自分の酒代は自分で稼いでね。 ヤッコ」
ため息を一つもらして、トンディは家の鍵のスペアをポケットから取り出して投げ渡す。
「いいのか?」
「選択肢ない。部屋も余ってるし」
「酔って襲ってきたら?」
「射殺」
「ひえっ……」
トンディの目は笑っていない。
その瞳はその状況になったら必ずヤル。という冷徹さを秘めていた。
「まぁいいんじゃない~? ねえ聖女様?」
「ええ、構いませんよ」
しかしその条件に対し、ギルドマスターも聖女自身も笑って認める。
「いいのかよ」
「ええ、酔って恩人に斬りかかるようならば聖女として生きていく価値はありません。 容赦なくズドンしてくださいませ」
「ストイックに生きてるなぁ」
「でも、そこまで言うなら大丈夫でしょ。 いざとなればクレールがいるし」
「まぁ……トンディがそういうなら構わないけど」
「トンちゃん‼︎ クーちゃん‼︎ ありがとうございま、ひっく‼︎」
「……やっぱ心配だなぁ」
しゃっくりをしながら感謝の言葉を述べる酔っ払い聖女。
それに一抹の不安を覚えながらクレールはやれやれと頭を抱える。
「どちら様でしょうか?」
「うちのギルドマスター。 あんたが寝てる時も来てたんだけど」
「あら、お初にお目にかかりますギルドマスター様。 私アリアン教会聖女をしております。ナグリヤッコシャトーマルゴーともうしまけっぷ」
「おい今ゲップしたぞ。 聖女様ゲップしたぞ」
「……それでギルドマスター。 そうもいかないってどう言う事?」
「あぁ、じつはギルドに戻ってすぐに鳩便で依頼が届いてねぇ」
「……まさか」
「察しが良くて助かるよトンディちゃん。 内容は簡単に言うと聖女の護衛と保護。 なんかしばらくここで面倒を見てほしいなんて内容の手紙が送られてきたんだー」
「完全に問題児送りつけられてるじゃないか‼︎」
「あらあら? もしかして私、さらっと厄介払いされてます??」
「というか。なんで私たちがやる流れになってるの?」
「いやーそれは飲んだくれでも彼女が聖女様だからさ。 護衛はマスターが選んだ最高の人材をっていうのが条件でさー。 わたしここの街で知ってる冒険者クーちゃんとトンディちゃんだけだし? まぁ、君たちのところにいるのは偶然だけど、拾ってくれたのが君たちでラッキーだったよ」
「なんかさ、もう私たちが受けるみたいな口ぶりだけど」
「わたし達、うけるとはいってない」
「まぁ特に危険な依頼でもないしいいじゃんいいじゃーん‼︎ うちもスポンサーには逆らえないし? 断ろうものなら冒険者ライセンス剥奪しちゃうよ? 主に私の権限で」
ぺろりと舌を出して可愛らしくアキはそういうが。
その行動とは裏腹に発言は横暴そのものであり、トンディは顔をしかめた。
「なんという横暴」
「あの……わたし聖女として恩人であるお二人にそこまで迷惑をおかけするわけには……」
「そうなの? もう教会の監視の目もないし、何より聖女としての身の上を隠してもらうことになるから人の目気にしないでお酒がのめるよ?」
「お世話になります‼︎ トンちゃん‼︎ クーちゃん‼︎」
「おい聖女」
瞳を輝かせながら勢いよく頭を下げるヤッコにクレールは思わず突っ込んだ。「むぅ……護衛と保護って、冒険者は依頼を二つ掛け持ちはできない。 お父さんの手がかり、探せなくなる」
真剣な面持ちでそうトンディは呟くが、それにたいしてアキは「大丈夫大丈夫―」と気軽に笑う。
「そこは流石に特例にするよー。 こっちも人手は足りないし、あっちもいきなりの依頼なんだ。 それぐらいの条件は飲んでもらうから安心してー。まぁ、聖女様とは常に動向をしてもらうことになると思うけど、聖女っていうのは教会随一の加護と戦闘力を持つ者のみに与えられる称号だし? 戦力に関しては問題はないとおもうよ?」
アキの紹介に、ヤッコは力こぶを作りながら鼻を鳴らす。
「わたし、腕には覚えがありますのでご安心ください‼︎」
「そこはまぁ……心配はしてないけれど」
顔を見合わせるクレールとトンディであったが、冒険者ライセンスを人質に取られてはなすすべもなく。
「はぁ、しかたない。 自分の酒代は自分で稼いでね。 ヤッコ」
ため息を一つもらして、トンディは家の鍵のスペアをポケットから取り出して投げ渡す。
「いいのか?」
「選択肢ない。部屋も余ってるし」
「酔って襲ってきたら?」
「射殺」
「ひえっ……」
トンディの目は笑っていない。
その瞳はその状況になったら必ずヤル。という冷徹さを秘めていた。
「まぁいいんじゃない~? ねえ聖女様?」
「ええ、構いませんよ」
しかしその条件に対し、ギルドマスターも聖女自身も笑って認める。
「いいのかよ」
「ええ、酔って恩人に斬りかかるようならば聖女として生きていく価値はありません。 容赦なくズドンしてくださいませ」
「ストイックに生きてるなぁ」
「でも、そこまで言うなら大丈夫でしょ。 いざとなればクレールがいるし」
「まぁ……トンディがそういうなら構わないけど」
「トンちゃん‼︎ クーちゃん‼︎ ありがとうございま、ひっく‼︎」
「……やっぱ心配だなぁ」
しゃっくりをしながら感謝の言葉を述べる酔っ払い聖女。
それに一抹の不安を覚えながらクレールはやれやれと頭を抱える。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~
桜井正宗
ファンタジー
Cランクの平凡な錬金術師・カイリは、宮廷錬金術師に憧れていた。
技術を磨くために大手ギルドに所属。
半年経つとギルドマスターから追放を言い渡された。
理由は、ポーションがまずくて回復力がないからだった。
孤独になったカイリは絶望の中で三毛猫・ヴァルハラと出会う。人語を話す不思議な猫だった。力を与えられ闇の錬金術師に生まれ変わった。
全種類のポーションが製造可能になってしまったのだ。
その力を活かしてお店を開くと、最高のポーションだと国中に広まった。ポーションは飛ぶように売れ、いつの間にかお金持ちに……!
その噂を聞きつけた元ギルドも、もう一度やり直さないかとやって来るが――もう遅かった。
カイリは様々なポーションを製造して成り上がっていくのだった。
三毛猫と共に人生の勝ち組へ...!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
勇者の国~行き過ぎた主義の結果~【短編】
キョウキョウ
ファンタジー
ある時代に、勇者至上主義にしている王国があった。
そんな国で冒険者として働いていた男が居た。
彼のもとに、勇者の補佐という仕事を依頼しに4名の騎士が来る。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
旅の道連れ、さようなら【短編】
キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。
いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる