ユリとウサギとガンスミス〜火力不足と追放された【機工術師】ですが、対物ライフルを手に入れてからは魔王すら撃ち抜く最強の狙撃手になりました〜

nagamiyuuichi

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コールオブホーリーガール

ショットガン

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「その銃……なに? クレール」

「うん? あぁ、この前トンディに銃を当てられないって言われたから接近戦用の持ってきたんだ。 ショットガンって言うんだけど、おっきな弾を打ち出したり、細かい弾をばらまくように打つこともできて応用がいろいろ聞くから便利なんだよね……本来は50メートルぐらいは射程はあるんだけど、これはソードオフって言って銃身をあえて短くして接近戦を……」

「よくわかんないけどショットガン……すごい威力」

「わかんないかー。 わかんないよねー」

「とりあえず、威力の高い銃だってことはわかった」

「ゴーレムとか、鉄みたいに硬い鱗もったドラゴンとかだとあんまり効果は期待できないけどね」

「そんなのはAランク以上の魔物……偶発的に出会うなんて滅多にないから問題ない」

 トンディの言葉に「それもそっか」とクレールは呟くと、倒れた扉を踏みつけて部屋の中へと入る。

 中は広い空間になっており、腐食した金属片や瓦礫があちらこちらに散らばっている。
 
 ほかに扉はなく、ここがダンジョンの行き止まりであるようだ。

「ここが最後の部屋みたいだな……」

「うん……罠もなさそうだし、入って大丈夫」

 トンディの言葉に、クレールは中に侵入する。
 
 広い部屋は瓦礫や鉄屑が転がるのみで、宝箱や何か役に立ちそうなものが転がっている気配はない。

 足元を見ると、そこには魔物の骨が無数に転がっており、数からして、ここをミノタウロスは住処にしていたことが伺えた。

「深いダンジョンだったから、少しは期待したんだけど。何もないねトンディ」

 何もない部屋を前に、クレールは壁に背中を預けて残念そうにそう呟くが。

「いや……」

 トンディはそう呟くと正面の壁に向かって歩いて行き、ペタペタと壁を触りはじめる。

「何してんの?」

「この部屋、形が変……きっとどこかに隠し扉ある」

「隠し扉かぁ……ああいうのって基本魔法がかけられてたり、魔法唱えないと開けられないタイプのものが多いから、今探しても意味がないんじゃ……」

「あ、あった。 えい」

 クレールの話を遮るようにトンディはそう呟くと、壁の中で不自然に盛り上がった部分を押す。
 
 すると、押されたブロックが壁の中に沈み。
 
 クレールのもたれかかっていた部分が音を立て門戸を開く。

「うげぇ‼︎」

 当然支えを失ったクレールは、そのまま後方に倒れ後頭部を強打。

  目から火花が散る感覚と同時に沈痛な声が迷宮に響く。

「……魔法必要なかったねクレール。 ラッキー」

「こっちはとんだ災難だよこんちくしょー。 いたたた……なんでそこのスイッチ押してここが開くんだよトンディー」

「私に怒られても……そんなの昔の人に聞いて」

「ちくしょう、本当についてない……っておよ?」

 頭を打った衝撃で、多少ふらつく頭を撫でながらクレールは立ち上がり、隠し扉の中を見る。

 コンクリートで固められた小さな部屋は隠し扉というにはあまりにも質素であり。

 なにが隠されているわけでもなく、ただ一つ机のようなものが部屋の奥に置かれているだけ。

 左右には本棚だろうか、サビひとつない棚が両脇にあるものの本は一冊も残っておらず。

 それ以外の家財は一切見当たらない。

 トンディはもぬけの殻というのはこういう状況を指すのだろうと心の中で感想を漏らすと、ゆっくりと足を踏み入れた。

「ここだけ錆びてない……」

 埃のつもった本棚はお世辞にも綺麗とは言いがたいものの、錆びた様子はなく、指でなぞると新品のように光を反射させる。

「ダマスカス製みたいだな……しかも、かなり純度の高いやつ。 純度の高いダマスカスは錆びないって聞いたことあるし」

「へぇ……ってことは、ここは鉄の時代の人が使っていたそのままってことなんだね」

「あぁ、そしてここだけ部屋がそのまま残されているってことは……鉄の時代の人間にとってもここは重要な場所だったってことだ」

 クレールの言葉に、トンディはごくりと息を呑み。 部屋の最奥、大きな引き出しのついた机のような形をしたものの場所へと辿り着く。

 そこにあったのは。

「ノート?」

 机の上に乱雑に置かれた白地に黒といったどこかツバメを連想させるようなデザインのシンプルなノート。
 中央には手書きでなにかの古代文字が書かれており、トンディは興味深くそのノートを手に取ると。

「これ……鉄の時代のノート」

 そう驚いたように小さく声を漏らした。

「鉄の時代のって……おいおい、鉄の時代ってのは二千年以上も前の神話の時代なんだぞ? 石板とかならまだしも、そんな昔のノートが残ってるわけ……」

「お父さんの書斎で数冊見せてもらったことがある。特殊な紙で作られてるから、設計上は1万年以上保存が可能」

「一万年って……すごいな、鉄の時代……」

 「けたが違う」とクレールは冗談めかして肩をすくめるクレールをよそに。

 トンディは目を細めてインクの薄くなった古代文字を読む。

 そこには。

「chance and fate……偶然と、運命?」

 そう書かれており、トンディはパラパラとノートをめくる。

 書いた人間は几帳面だったのだろう、びっしりと文字が刻まれたノートはつい先ほど書かれたかのように鮮明にノートに残っており、トンディは読むのを諦めてノートを閉じた。

「読める?」

「辞書があればなんとか行けると思う……ここじゃ無理だから持ち帰るよ」

 クレールの質問に、トンディは眉間に皺を寄せながらそう答えると。 ノートをバックパックへとしまって机の探索に戻ることにする。

「引き出しはひとつ……鍵はかかってるみたいだけど大したものじゃない……か。罠もついてなさそう」

「また30分くらいかかりそう?」

「いいや、3秒」

 クレールの問いにトンディはそう短く呟くと、ブーツナイフを引き抜き直接デスクの隙間に刃を通すとガチャリという音が響きあっという間に引き出しが開く。

「早いな‼︎?」

「罠もないし大した鍵じゃなかったから。だからまぁ、大したもの入ってないと思うけど……」

 トンディはそういうと、開いた引き出しを開ける。

 と。

「なんじゃこりゃ?」

 引き出しの中には、白銀に光る楕円形の球体。
 
 材質は鉄のようであり、それが何かを示すものもない。
 
「……卵?」

 そんな理解不能用途不能な金属の塊を前に。
 
  トンディはそんな感想を呟いた。

                 ◇
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