ユリとウサギとガンスミス〜火力不足と追放された【機工術師】ですが、対物ライフルを手に入れてからは魔王すら撃ち抜く最強の狙撃手になりました〜

nagamiyuuichi

文字の大きさ
上 下
27 / 55
コールオブホーリーガール

鉄の時代の遺跡

しおりを挟む
 「明るい♪」

  灯りひとつない闇に覆われたダンジョン。

 その闇を照らすヘッドライトの白い光に、感動をするようにトンディはこぼす。

「トンディの言う通り魔物がいる気配はないね。使われてるのもレンガじゃなくてコンクリートがほとんど……鉄の時代後期のダンジョンってところかな、トンディ?」

「明るい♪」

「って、聞いてないか」

  瞳を輝かせながらキョロキョロと視線を動かすトンディ。
 
 その首の動きに合わせて頭に着いたヘッドライトは持ち主の見たい場所を明るく照らし、トンディは嬉しそうにぴょんぴょんと小さく跳ねる。

 その様子は新しいおもちゃを買ってもらった子供……という表現がぴたりと当てはまる。

「見たいところがすぐ明るくなる。 すごい便利だよクレール」

「まぁ、そりゃヘッドライトだからなぁ」

「魔法が使えない私達にとっては、すごい便利」

「魔法使いの仲間がいればこんなもの使わなくてもいいんだろうけどね。 杖振るだけでなんでも解決さ」

「そんな便利なものなのかな、魔法って……よくわからないけれど」

「だから栄えてるし、私も追い出されたんだろ?」

 そうクレールは冗談めかして笑い、追放されたことを冗談めかして語れるくらいには自信を取り戻したクレールに、トンディも嬉しそうに「それもそっか」と頷いて奥へと進んでいく。

  コンクリートで覆われたダンジョンは、ところどころ腐食したガラスの破片や鉄屑が散乱し、独特なサビの匂いが充満している。

 崩れた棚や、錆びついて壁と同化してしまっているなにかの装置だったものはもはや面影もなく。

  クレールは時折落ちた鉄くずを拾い、バックパックへとしまっていく。心なしかその表情は楽しそうだ。

「……クレール楽しそう」

「そうだな、このダンジョンは結構色々な金属が落ちてるからね。 アルミなんかは今の技術じゃ生成は難しいから、こういったアルミがゴロゴロ転がってるダンジョンは気分が踊るよ」

「アルミ? 聞いたことない鉱石」

「まぁ、自然には存在しない金属だからな。銀に似てるけど、銀よりはるかに軽くて錆びにくい人工の金属さ。しってたトンディ、鉄の時代の人間ってのは、金属すらも自分たちで生み出すことが出来たし、金属に命を与えることも出来たらしいよ」

「金属に命? 本当?」

 トンディはそういうと錆びついた鉄の塊を拾い上げ「こんにちは」なんて声をかけてみるが、当然のことながら返事はなく、じとっとした目でクレールを睨む。

「いや、流石にそこらへんに転がってるのは普通の金属だろうし、あくまで本で読んだだけだから……。まぁでも、ダンジョン深くまで潜っていったら、そんな命のある金属にもいつか会えるかもしれないな」

 クレールはそういうと、金属の回収に満足したのか立ち上がり奥へと進んでいき。

 トンディも命のある金属という言葉に思いを馳せながらも、クレールの隣をついていく。

「……金属って、何食べるんだろう。 人参かな」

「何かは食べるだろうけど、人参だけはないだろうなぁ」

 トンディの呑気な質問に苦笑を漏らしながら、二人は突き当たりにある扉に手をかけると。

「あれ? この扉……開かない」

 少したわんだ扉は変形したせいか、扉は空間に固定されたかのようにビクともしない。

「きっと、ミノタウロスが力任せに使ったからだな……困るんだよなあいつら、中途半端に知恵があるせいで扉とかは使えるくせに、乱暴に使うから中途半端に壊すんだもん」

「どうしよう……」

 困ったように耳を垂れさせるトンディ。

「まっ、こういう扉は私に任せろって‼︎ 危ないから離れてて耳塞いでトンディ」

「クレール?」

 しかしクレールはニコリと笑い背中に担いでいた銃口の二つある銃を引き抜くと、ドアに向かって引き金を引く。

「よい、ショット‼︎」

  ダンジョンに響く巨大な発砲音は二つ、密室であるために体に振動が伝わるほど巨大な音を響かせ、少し遅れてなにかが倒れるような音を反響させる。

 見れば行く手を塞いでいた巨大な扉は、大穴を開けて床に倒れトンディたちに道を譲っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~

桜井正宗
ファンタジー
Cランクの平凡な錬金術師・カイリは、宮廷錬金術師に憧れていた。 技術を磨くために大手ギルドに所属。 半年経つとギルドマスターから追放を言い渡された。 理由は、ポーションがまずくて回復力がないからだった。 孤独になったカイリは絶望の中で三毛猫・ヴァルハラと出会う。人語を話す不思議な猫だった。力を与えられ闇の錬金術師に生まれ変わった。 全種類のポーションが製造可能になってしまったのだ。 その力を活かしてお店を開くと、最高のポーションだと国中に広まった。ポーションは飛ぶように売れ、いつの間にかお金持ちに……! その噂を聞きつけた元ギルドも、もう一度やり直さないかとやって来るが――もう遅かった。 カイリは様々なポーションを製造して成り上がっていくのだった。 三毛猫と共に人生の勝ち組へ...!

勇者の国~行き過ぎた主義の結果~【短編】

キョウキョウ
ファンタジー
ある時代に、勇者至上主義にしている王国があった。 そんな国で冒険者として働いていた男が居た。 彼のもとに、勇者の補佐という仕事を依頼しに4名の騎士が来る。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

旅の道連れ、さようなら【短編】

キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。 いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

処理中です...