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二人の冒険者
突然の来訪者
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「でっきたあああぁ‼︎」
大声をはりあげ、転がるようにクレールが工房より這い出てきたのは次の日の早朝。
トンディがちょうどタンポポコーヒーを飲みながら優雅なひと時を過ごしている最中であり。
「いや、幾ら何でも早すぎない?」
寝起きということもあってか、喜ぶよりも先にそんな冷静なツッコミを入れてしまうトンディ。 しかしクレールはそんなこと意に介する様子もなく子犬のように瞳を輝かせる。
「パーツの不足はなかったし、仕組みも単純な構造をしてるからな。それに何度も小さな模型を作って研究も重ねてたから、直すのはさして難しくはなかったぞ? 曲がった銃身を直すのに少し時間がかかったぐらいで……」
「……何言ってるかわからないけど、すごい執念だったのはわかった」
口では諦めると言っていながら、全然諦めてなかったわけだ……とトンディは心の中でひとつごちて、苦笑を漏らす。
「もう、今からでもぶっ放せる準備は万端さ‼︎」
「そかそか……おめでとうクレール」
「ありがとうトンディ‼︎ あとは起動テストも兼ねて試し打ちをしたいんだけど……どうしようかな。この前の大蜘蛛ぐらいなら真っ二つにする威力はあるんだけど」
「……すごい威力。 でもさすがにそんなものおいそれと撃てないでしょ」
「そうなんだよー。 あー、急にこの辺りにドラゴンとか飛んでこないかなー」
「そんな都合の良い話……」
あるわけない……そうトンディが言おうとした時。
「もーしもーーーし‼︎ お二人さんいるー? いるよねー、おっきな声聞こえたしー?」
ノックの音とともに、子供のような高い声が玄関の外から響いたのであった。
「こんな時間に客人?」
「珍しい……誰だろう?」
来客に心当たりもなく、首を傾げながらもトンディは玄関を開けると、そこにはトンディよりも少し背の低い少女が立っていた。
「子供?」
「やっほー。 この前はありがとねー。うちのマゾ子の不始末を片付けてくれて、感謝感謝―」
「マゾ子の知り合い?」
「お嬢ちゃんどうしたんだ? マゾ子とはぐれて迷子になったのか?」
「あれ? もしかして私子供扱いされてる? 参ったねこりゃ」
クレールとトンディの反応に、予想外と言った表情をする少女。
しかし、小柄でダボダボの子供服を見にまとう彼女はどう見ても年端も行かない少女であり、子供にしか見えない。
道行く人十人にこの少女の年齢を問えばうち八人は十五歳残り二人は十歳と答えるだろう。
と。
「ま、マスター‼︎ お、お待ちくださいー‼︎」
早朝の街にご近所迷惑も考えない大声が響き、視線を向けるとそこにはこちらに向かって全力疾走をするメガネの女性の姿。
その姿を見ると、少女は嬉しそうに飛び跳ねダボダボの袖をブンブンと振るう。
「お、キリサメー、ちょうどよかった。 どこいってたんだ?」
「どこって。マスターがワッフル買って来いって言ったんじゃないですか‼︎ 待っててって言ったのに戻ったらいなくなってるし‼︎」
「あっははは、そだっけー?」
「自由か‼︎?」
「えぇと……話が全然見えないし……それにマスターって何?」
家の前で繰り広げられる不思議なやりとりに、クレールは呆れ気味に問いかけると。
キリサメと呼ばれた女性はハッとしてクレールたちに、今に敬礼でもしそうな姿勢の正しさで向き直る。
「申し訳ない。 恩ある相手に見苦しい姿を。 私は冒険者ギルド長補佐兼秘書のキリサメ。そしてこちらが」
「エリンディアナ支部のギルドマスターをやってる、アキハバラ・カリン。 名前長いからアキでいいよー」
大声をはりあげ、転がるようにクレールが工房より這い出てきたのは次の日の早朝。
トンディがちょうどタンポポコーヒーを飲みながら優雅なひと時を過ごしている最中であり。
「いや、幾ら何でも早すぎない?」
寝起きということもあってか、喜ぶよりも先にそんな冷静なツッコミを入れてしまうトンディ。 しかしクレールはそんなこと意に介する様子もなく子犬のように瞳を輝かせる。
「パーツの不足はなかったし、仕組みも単純な構造をしてるからな。それに何度も小さな模型を作って研究も重ねてたから、直すのはさして難しくはなかったぞ? 曲がった銃身を直すのに少し時間がかかったぐらいで……」
「……何言ってるかわからないけど、すごい執念だったのはわかった」
口では諦めると言っていながら、全然諦めてなかったわけだ……とトンディは心の中でひとつごちて、苦笑を漏らす。
「もう、今からでもぶっ放せる準備は万端さ‼︎」
「そかそか……おめでとうクレール」
「ありがとうトンディ‼︎ あとは起動テストも兼ねて試し打ちをしたいんだけど……どうしようかな。この前の大蜘蛛ぐらいなら真っ二つにする威力はあるんだけど」
「……すごい威力。 でもさすがにそんなものおいそれと撃てないでしょ」
「そうなんだよー。 あー、急にこの辺りにドラゴンとか飛んでこないかなー」
「そんな都合の良い話……」
あるわけない……そうトンディが言おうとした時。
「もーしもーーーし‼︎ お二人さんいるー? いるよねー、おっきな声聞こえたしー?」
ノックの音とともに、子供のような高い声が玄関の外から響いたのであった。
「こんな時間に客人?」
「珍しい……誰だろう?」
来客に心当たりもなく、首を傾げながらもトンディは玄関を開けると、そこにはトンディよりも少し背の低い少女が立っていた。
「子供?」
「やっほー。 この前はありがとねー。うちのマゾ子の不始末を片付けてくれて、感謝感謝―」
「マゾ子の知り合い?」
「お嬢ちゃんどうしたんだ? マゾ子とはぐれて迷子になったのか?」
「あれ? もしかして私子供扱いされてる? 参ったねこりゃ」
クレールとトンディの反応に、予想外と言った表情をする少女。
しかし、小柄でダボダボの子供服を見にまとう彼女はどう見ても年端も行かない少女であり、子供にしか見えない。
道行く人十人にこの少女の年齢を問えばうち八人は十五歳残り二人は十歳と答えるだろう。
と。
「ま、マスター‼︎ お、お待ちくださいー‼︎」
早朝の街にご近所迷惑も考えない大声が響き、視線を向けるとそこにはこちらに向かって全力疾走をするメガネの女性の姿。
その姿を見ると、少女は嬉しそうに飛び跳ねダボダボの袖をブンブンと振るう。
「お、キリサメー、ちょうどよかった。 どこいってたんだ?」
「どこって。マスターがワッフル買って来いって言ったんじゃないですか‼︎ 待っててって言ったのに戻ったらいなくなってるし‼︎」
「あっははは、そだっけー?」
「自由か‼︎?」
「えぇと……話が全然見えないし……それにマスターって何?」
家の前で繰り広げられる不思議なやりとりに、クレールは呆れ気味に問いかけると。
キリサメと呼ばれた女性はハッとしてクレールたちに、今に敬礼でもしそうな姿勢の正しさで向き直る。
「申し訳ない。 恩ある相手に見苦しい姿を。 私は冒険者ギルド長補佐兼秘書のキリサメ。そしてこちらが」
「エリンディアナ支部のギルドマスターをやってる、アキハバラ・カリン。 名前長いからアキでいいよー」
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