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二人の冒険者
戦闘開始
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「ななっ、なんじゃありゃあぁ‼︎?」
「アラクネ……ああやって森の上空に糸を貼って森一つを縄張りにする魔物。 森の上から獲物をさがして、上空から遅いかかって獲物を捕らえる」
「怖っ‼︎?」
クレールの大声に、蜘蛛は発見をされたことに気がついたのか。
キシキシと体の軋む音を響かせながら、木を伝い直接二人を捕らえるために地上へと降りてその全貌を明らかにする。
巨大な体は、クレールの体よりもはるかに大きく、アゴは人間程度ならば一口で丸呑みにできるほど巨大。
「気をつけてクレール、こいつ、場合によってはドラゴンも捕食するようなやつ。 別名ドラゴンイーター」
「ドラゴン食う蜘蛛なんて聞いたことないよ‼︎ 倒せんのかあんなの?」
「蜘蛛だから装甲は薄い。 私の弓も、クレールの銃も通用するはず……でも」
トンディはそういうと、背負った弓を番えてアラクネへと放つ。
魔力が込められた一撃は、通常の弓よりも早い速度でまっすぐアラクネの額に向かい遅いかかるが。
額に届く少し手前にて、蜘蛛は放たれた矢を鬱陶しげに前足をふるって叩き落とす。
「器用だなあいつ」
「うん、器用で素早い。 きっと銃弾でもあの前足に弾かれちゃう」
「勝ち目ないじゃん」
「大丈夫、クレールと私なら……信じて」
弱音を吐くクレールに対し、不安げにじっ、と見つめるトンディ。
それに対してクレールは苦笑を漏らすと静かに銃を抜いた。
「冗談だよ、一回でも疑ったことあるか?」
「ないね……それじゃあはいこれ」
返答に満足げに頷くと、トンディはなにかを投げて渡す。
「なんだこれ? 水の入った皮袋?」
「お昼のコーヒー……。 蜘蛛が浴びると酔っ払って隙ができるからちょうどよかった」
「そうなんだ……コーヒーで酔えるなんて羨ましいやつだな」
少しずれた感想をクレールは漏らしながら、皮袋をポケットへとしまう。
「接近戦はよろしく。 援護するから、隙ができたらそれを投げつけて怯んだところをトドメ」
「はいよ……トドメは何でいく?」
「ダブルクロス」
「了解……じゃあ、戦闘開始だ‼︎」
トンディの作戦に対しクレールは力強く頷くと、弾けるように蜘蛛へと接近を開始する。
「キシッ、キシシ」
その接近を戦闘の合図ととったのか、アラクネはクレールに対し蜘蛛の糸の塊を放つ。
粘着性の糸を塊にして吐き出すだけの単純な攻撃ではあるが、搦めとられればドラゴンさえも身動きを封じられてしまうその攻撃は、クレールにとってはたとえ体をかすめただけでも勝負を決してしまうだけの力を有する強力な砲撃。
「……甘い甘い」
だが、クレールは真正面に飛んでくる糸を避ける動作もなくそう嘲るように笑う。
同時に背後から飛んでくる弓矢が、その蜘蛛の糸の塊を打ち抜き軌道をそらした。
「キシッ‼︎?」
糸が弾かれたアラクネは驚愕をしたように不気味な声を上げると。
接近戦を嫌ってか、前足を振るい迫るクレールを牽制しようとする。
「チャーンス‼︎」
だが、所詮それは狙いの定まらない時間稼ぎの一撃。
クレールは迫る前足を体をひねって回避すると、そのままアラクネの眼前へとおどり出て銃を構える。
「キシッ‼︎?」
「この至近距離なら、銃弾は弾けないだろ‼︎」
クレールはそう叫ぶと、愛銃、38口径リボルバー「スミス」の撃鉄を落とす。
火薬の弾ける音とともに、秒速360mの速度で頭蓋へと迫る鉛玉。
小さいと言えども、脳を撃ち抜けば致命傷に至るその弾丸は左右から同時に放たれ蜘蛛を穿つ。
────だが。
「キシッ」
鉛玉は蜘蛛の眼前でピタリと静止をする。
弾かれたわけでも、外れたわけでもない……鉛玉はその大きな牙で摘まみ取られていた。
「あーなるほど、お口も器用なのね……」
蜘蛛は嘲るように首を振るうと足元に鉛玉が転がる。
気がつけば目の前には鋭利な前脚と、巨大なアゴ。
追い詰めたつもりが自ら口の中に飛び込んでしまったようなものであり、銃弾を受け止めた巨大なアゴが頭蓋を噛み砕かんとクレールに迫るのであった。
「アラクネ……ああやって森の上空に糸を貼って森一つを縄張りにする魔物。 森の上から獲物をさがして、上空から遅いかかって獲物を捕らえる」
「怖っ‼︎?」
クレールの大声に、蜘蛛は発見をされたことに気がついたのか。
キシキシと体の軋む音を響かせながら、木を伝い直接二人を捕らえるために地上へと降りてその全貌を明らかにする。
巨大な体は、クレールの体よりもはるかに大きく、アゴは人間程度ならば一口で丸呑みにできるほど巨大。
「気をつけてクレール、こいつ、場合によってはドラゴンも捕食するようなやつ。 別名ドラゴンイーター」
「ドラゴン食う蜘蛛なんて聞いたことないよ‼︎ 倒せんのかあんなの?」
「蜘蛛だから装甲は薄い。 私の弓も、クレールの銃も通用するはず……でも」
トンディはそういうと、背負った弓を番えてアラクネへと放つ。
魔力が込められた一撃は、通常の弓よりも早い速度でまっすぐアラクネの額に向かい遅いかかるが。
額に届く少し手前にて、蜘蛛は放たれた矢を鬱陶しげに前足をふるって叩き落とす。
「器用だなあいつ」
「うん、器用で素早い。 きっと銃弾でもあの前足に弾かれちゃう」
「勝ち目ないじゃん」
「大丈夫、クレールと私なら……信じて」
弱音を吐くクレールに対し、不安げにじっ、と見つめるトンディ。
それに対してクレールは苦笑を漏らすと静かに銃を抜いた。
「冗談だよ、一回でも疑ったことあるか?」
「ないね……それじゃあはいこれ」
返答に満足げに頷くと、トンディはなにかを投げて渡す。
「なんだこれ? 水の入った皮袋?」
「お昼のコーヒー……。 蜘蛛が浴びると酔っ払って隙ができるからちょうどよかった」
「そうなんだ……コーヒーで酔えるなんて羨ましいやつだな」
少しずれた感想をクレールは漏らしながら、皮袋をポケットへとしまう。
「接近戦はよろしく。 援護するから、隙ができたらそれを投げつけて怯んだところをトドメ」
「はいよ……トドメは何でいく?」
「ダブルクロス」
「了解……じゃあ、戦闘開始だ‼︎」
トンディの作戦に対しクレールは力強く頷くと、弾けるように蜘蛛へと接近を開始する。
「キシッ、キシシ」
その接近を戦闘の合図ととったのか、アラクネはクレールに対し蜘蛛の糸の塊を放つ。
粘着性の糸を塊にして吐き出すだけの単純な攻撃ではあるが、搦めとられればドラゴンさえも身動きを封じられてしまうその攻撃は、クレールにとってはたとえ体をかすめただけでも勝負を決してしまうだけの力を有する強力な砲撃。
「……甘い甘い」
だが、クレールは真正面に飛んでくる糸を避ける動作もなくそう嘲るように笑う。
同時に背後から飛んでくる弓矢が、その蜘蛛の糸の塊を打ち抜き軌道をそらした。
「キシッ‼︎?」
糸が弾かれたアラクネは驚愕をしたように不気味な声を上げると。
接近戦を嫌ってか、前足を振るい迫るクレールを牽制しようとする。
「チャーンス‼︎」
だが、所詮それは狙いの定まらない時間稼ぎの一撃。
クレールは迫る前足を体をひねって回避すると、そのままアラクネの眼前へとおどり出て銃を構える。
「キシッ‼︎?」
「この至近距離なら、銃弾は弾けないだろ‼︎」
クレールはそう叫ぶと、愛銃、38口径リボルバー「スミス」の撃鉄を落とす。
火薬の弾ける音とともに、秒速360mの速度で頭蓋へと迫る鉛玉。
小さいと言えども、脳を撃ち抜けば致命傷に至るその弾丸は左右から同時に放たれ蜘蛛を穿つ。
────だが。
「キシッ」
鉛玉は蜘蛛の眼前でピタリと静止をする。
弾かれたわけでも、外れたわけでもない……鉛玉はその大きな牙で摘まみ取られていた。
「あーなるほど、お口も器用なのね……」
蜘蛛は嘲るように首を振るうと足元に鉛玉が転がる。
気がつけば目の前には鋭利な前脚と、巨大なアゴ。
追い詰めたつもりが自ら口の中に飛び込んでしまったようなものであり、銃弾を受け止めた巨大なアゴが頭蓋を噛み砕かんとクレールに迫るのであった。
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