ユリとウサギとガンスミス〜火力不足と追放された【機工術師】ですが、対物ライフルを手に入れてからは魔王すら撃ち抜く最強の狙撃手になりました〜

nagamiyuuichi

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二人の冒険者

マゾ子

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  ―――夕方が過ぎさり、日没が近づくエリンディアナの街。

  半分になった太陽に、茜色と紫色の混じり合う黄昏時。空がそんな色になる時刻にこの街では必ず、夜を知らせる鐘がなる。

  ゴーン……ゴーン。
 
   朝を告げる音も、昼を告げる音も、鐘の音は変わることはない。
 
  だが不思議なことに、夜に響く鐘の音はどこかもの寂しげに街へと響く。今日という日を惜しむかのように。

「もうこんな時間」

「ダイクの店で思ったよりも時間食っちゃったな」

  ダイクの店を出たクレールとトンディは、その鐘の音を聞いてそう呟く。

  茜色の空はまだ大地を赤く照らしてはいるものの、だんだんと薄くなっていく影は夜の訪れを告げており、二人は足早に広場の反対側、冒険者組合へと向かう。

  冒険者組合は言うなれば、街や国から集まる依頼を冒険者へと斡旋する仲介業者のようなものであり、その運営・管理は女神アリアンを信奉するアリアン教会が行なっている。

  当然組合であるため、場所によっては専門の施設を用意しているところもあれば、民家を間借りしているところもあるが、このエリンディアナでは街の中央に立つ神殿が、冒険者組合としての役割を担っている。

  冒険者組合の前に立つと、来訪したものを歓迎するかのように、門の上で白銀に輝くプレートと彫り込まれた文字が目にとまる。

 【アリアン教会が営む冒険者組合は、女神アリアンの名の下に冒険者の自由を約束する】

  古代文字で彫り込まれた宣言文

  左側にはアリアン教会を象徴する運命の輪を象った紋章が、対し右側には王国を象徴する聖龍王の紋章が、宣言を挟むように彫り込まれている。

  この宣言書と紋章は各街の冒険者組合や関所、国境に設置されるものであり、この宣言書がある場所での冒険者は国籍、種族、性別、思想、問わず例外なく活動が可能となる。
 
  元々は冒険者が各地で自由な活動をサポートするためにアリアン教会が作り上げた制度であったが、魔王が生まれる以前はならず者に越境の自由を与えてしまうと、この制度を認めないとする国も多々あった。

  しかし勇者グレイグが誕生してから後は、行動に制限が多い軍隊ではなく、小回りも融通も利く冒険者の遊撃部隊としての運用が注目され、コキュートス討伐後はどんな小さな集落であってもこの宣言が掲げられることになった。

「国境なき遊撃部隊」 
 
  軍関係者の中には、冒険者ギルドの事をそう呼称する人間も増えている。

「この時間だから、きっと空いてるはず」

「まぁ、田舎だからね……夜活動できる冒険者は数えるほどしか……」

  そう呟いてトンディは扉に触れると、神殿の扉は自らの意思があるようにゆっくりとその門戸を開くと。

「なんですってー‼︎ もう一度言ってみろこらあぁ⁉︎」

「お、おーちーつーいーてーくーだーさーいー⁉︎ だ、誰か助けてえぇ⁉︎」

  怒り狂ったような女性の声と、助けを求めるような悲鳴がトンディとクレールを出迎える。
  
  見れば、冒険者のほとんどいないギルドの中、受付の女性が冒険者に胸ぐらを掴まれ助けを求めている。
 
  本来であればすぐさま救助に向かうべき場面なのだろうが、ことこの場所においては当たり前のような光景であり。

  二人は慌てる代わりに、呆れたようなため息を漏らした。 

「あいつまた絡まれてるのか……マゾ子」

「マゾだからね……助けてあげる?」

「しょーがないなぁ」

  やれやれとため息をついて、クレールはひとりカウンターに向かう。

「落ち着いてー、落ち着いてくださいー‼︎」

「これが落ち着いていられるかってのよ‼︎ 私の大切な子達が……」

「おいおい、今度は何やらかしたんだマゾ子」

「ま、マゾ子って呼ばないでくださいー‼︎ わたしにはマエゾノ・ミドリコというちゃんとした名前が……ってその声はクーちゃん‼︎ 来てくれたんですねー‼︎ 助けてクーちゃん‼︎この方に襲われてわたし、わたしー」

「お、襲われただとぉ‼︎? そもそもお前が……」

「あーどうどう、落ち着いて。 とりあえず私が話し聞くからさ、多分マゾ子よりも話は分かる……ってあれ? ペコリーナ?」

「? なんでわたしの名前を知って……て、クレール‼︎ それにトンディも‼︎?」

  そこにいたのは違いのわかるゴブリン亭の料理長ペコリーナであり、二人分の驚いたような声が閑散としたギルドに響く。

「お、おしりあいですかぁ?」

「まぁ、ちょっとね。 それでペコリーナどうしたんだ? こんな時間にこんなところで」

  二人の登場により怒りが少し治ったのか、ペコリーナはクレールに向き直ると。

「実は……ゴブたちが行方不明になったんだ、こいつのせいで」

  そう言って受付の少女を指差したのであった。
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