51 / 51
エピローグ
しおりを挟む
こうして、王様の暗殺計画と魔王復活の計画は終了した。
地下牢から王城に戻った僕たちはことの顛末を王様と王妃様に話をすると。
王妃様は安堵したように息をついて、王様はちょっぴり残念そうな顔をしたけれど、
それでも何か心の中で吹っ切れたのか、今は王妃様と二人で仲良く国を統治をしている。
どうやら、ボレアスの暗殺未遂の一件以降も二人の関係は良好なようで、王子様から火を吹きそうなほどイチャついているから何とかしてほしいと相談を受けるほどだった。
ボレアスとメルトラだが、 魔王との戦いの後、気がついた時には二人の姿は地下洞窟にはなかった。
セレナは「抜け目ないやつ」なんて言っていたけれども、口元が綻んでいたのでわざと逃したのだろう。
もう魔王に操られることもないし……何より、仲の悪い演技をする必要もなくなったから今ごろきっと二人で新しい人生を歩み始めているのかもしれない。
さて……そして僕たちの話だが。
「しかし、まさかボレアスとメルトラが付き合ってたなんてねぇ」
町中が建国百周年記念のお祭りで賑わう中、僕とセレナは約束をしていた通り快気祝いも兼ねて予定通りデートを結構した。
場所は外国の料理を多数取り扱う王都の中でも予約が十年先まで埋まっているという名店。
出てくる料理は王宮でも見たこともないような不思議なものばかりであり、そんな料理に舌鼓を打ちながら、僕たちはくだらない会話に花を咲かしていた。
「まぁ、二人ともあれで隠しているようだったし詮索はしなかったのだけれども。隠れて相当イチャついてたわよあの二人」
「へぇ。喧嘩するほど仲がいいって言うけれども。本当に、男女の仲ってわからないものだね」
「そうね……でもだからこそ恋というのは恐ろしくもあるし、美しいとも感じるのよね」
「ふーん。そういうの、僕にはよくわからないけど……それよりもセレナ。メルトラとボレアスがいなくなったなら、騎士団長とメルトラの仕事は誰に任せる予定なの?」
「……騎士団長はミノスに任せるつもりだと王は言っていたわ。私も賛成ね。実力は十分だし、何より街の人に慕われている。ボレアスが起こした謀反のせいで騎士団への信用が地に落ちかけている今、あの人柄はとても重要なのよ。ただそのためにはミノスとしてではなくサイモンとして生きてもらう事になるけどね」
「騎士団長だなんて、ミノス嫌がりそうだけどね」
「そこは力づくでも言う事を聞かせるわよ。あの男の弱みなら、ザクロの実の粒ほど握ってるから、私」
セレナはにっこりと微笑んで怖いことを言った。
「そ、そうなんだ……それじゃあメルトラの仕事は? 結構色々と兼任してたけど」
「そこなのよ……王も王妃も後任で頭を悩ませていたわ」
「王宮にあれだけ人がいるんだから、一人ぐらいいい人いないの?」
「メルトラの仕事は、悪用すれば魔王の復活まで可能になるほど自由と権力のある仕事だもの。ボレアスの口がいくら上手かったとはいえ、臣下のほぼ全てが王の暗殺を良しと見過ごしていた……そんな人に、任せたくないと言うのが王と王妃が頭を悩ませてる理由よ」
「……なるほど、できれば身内以外で信頼できる実力者をそばに置きたいって言うのが王様の本音なんだ」
「そうね」
「だったらさ……いい人がいるよ‼︎」
「はぁ……分かってるわ。ルードでしょ」
僕が思いついた提案にセレナは口元を膨らませて不機嫌そうに答えを先に言う。
「な、なんで分かったの⁉︎」
「わかるわよ。貴方にとって一番信頼できる人だもの。それに実力もあるしお金もあるし……今回のパレードで民衆からの信頼もある。えぇ、貴方の考える通り最適すぎる人材よ。貴方が頼めば断らないでしょうしね……でも」
「で、でも?」
「あの男、私は嫌いよ……フリークの凄いところも見つけられて、貴方を誰よりも笑顔にできて。貴方を輝かせることもできて……私とは違うものをたくさん持ってて、貴方とすっごい仲良くて、相棒で……だから、だから大っ嫌いなの」
嫌いだと言いながら、セレナはルードのいいところをたくさん上げていく。
「ど、どうして?」
「だって私はフリークの相棒にはなれないから……その、だから……フリークを、取られちゃいそうで嫌なんだもん」
しょんぼりと顔を赤くして項垂れるセレナ
その表情は反則だ。
「と、取られたりなんかしないよ。ル……ルードは確かに相棒だけど⁉︎ 僕の心はずっと、これからも、永遠にセレナのものだから!」
「‼︎」
思わずセレナの手を取って本心をぶつけてしまったが、思ったよりも大きな声が出てしまったようで、騒がしかった店内は静まり返り、僕達に視線が集中する。
と言うか、今のはなんだか聞きようによってはプロポーズみたいになっちゃったし。
セレナも凄い顔を赤くしてモジモジしてるし。
どうしよう。急に恥ずかしくなってきた。
「あ、いや……その、ルードは男で、友達だからっていう意味でね。えと、だからその、深い意味は」
「……そうね。分かっているわフリーク。答えはもちろんOKよ。それで、子供は何人欲しいかしら?」
「いや、だから今のは・・・・・・」
誤解を解こうと僕はセレナの手を離そうとするが。
万力のような力で今度は僕の手が掴まれる。
「もう二度と離さない。あなたに誓うわ、何があっても私の心はあなたのもの。二度と置いていかないわ」
それは、いつか聞いた問いへの答えであり。
「セレナ……」
「だからフリーク……」
「え?……わっ⁉︎」
不意にセレナは勢いよく僕の手を引き……強引に僕の唇を奪う。
「私の全て、受け取ってくれる?」
上目遣いで迫るセレナ……結局そのまま押し切られ、僕とセレナはその日に夫婦となった。
やっぱり、人生はサイコロの連続だ……本当に何が起こるか分からない。
地下牢から王城に戻った僕たちはことの顛末を王様と王妃様に話をすると。
王妃様は安堵したように息をついて、王様はちょっぴり残念そうな顔をしたけれど、
それでも何か心の中で吹っ切れたのか、今は王妃様と二人で仲良く国を統治をしている。
どうやら、ボレアスの暗殺未遂の一件以降も二人の関係は良好なようで、王子様から火を吹きそうなほどイチャついているから何とかしてほしいと相談を受けるほどだった。
ボレアスとメルトラだが、 魔王との戦いの後、気がついた時には二人の姿は地下洞窟にはなかった。
セレナは「抜け目ないやつ」なんて言っていたけれども、口元が綻んでいたのでわざと逃したのだろう。
もう魔王に操られることもないし……何より、仲の悪い演技をする必要もなくなったから今ごろきっと二人で新しい人生を歩み始めているのかもしれない。
さて……そして僕たちの話だが。
「しかし、まさかボレアスとメルトラが付き合ってたなんてねぇ」
町中が建国百周年記念のお祭りで賑わう中、僕とセレナは約束をしていた通り快気祝いも兼ねて予定通りデートを結構した。
場所は外国の料理を多数取り扱う王都の中でも予約が十年先まで埋まっているという名店。
出てくる料理は王宮でも見たこともないような不思議なものばかりであり、そんな料理に舌鼓を打ちながら、僕たちはくだらない会話に花を咲かしていた。
「まぁ、二人ともあれで隠しているようだったし詮索はしなかったのだけれども。隠れて相当イチャついてたわよあの二人」
「へぇ。喧嘩するほど仲がいいって言うけれども。本当に、男女の仲ってわからないものだね」
「そうね……でもだからこそ恋というのは恐ろしくもあるし、美しいとも感じるのよね」
「ふーん。そういうの、僕にはよくわからないけど……それよりもセレナ。メルトラとボレアスがいなくなったなら、騎士団長とメルトラの仕事は誰に任せる予定なの?」
「……騎士団長はミノスに任せるつもりだと王は言っていたわ。私も賛成ね。実力は十分だし、何より街の人に慕われている。ボレアスが起こした謀反のせいで騎士団への信用が地に落ちかけている今、あの人柄はとても重要なのよ。ただそのためにはミノスとしてではなくサイモンとして生きてもらう事になるけどね」
「騎士団長だなんて、ミノス嫌がりそうだけどね」
「そこは力づくでも言う事を聞かせるわよ。あの男の弱みなら、ザクロの実の粒ほど握ってるから、私」
セレナはにっこりと微笑んで怖いことを言った。
「そ、そうなんだ……それじゃあメルトラの仕事は? 結構色々と兼任してたけど」
「そこなのよ……王も王妃も後任で頭を悩ませていたわ」
「王宮にあれだけ人がいるんだから、一人ぐらいいい人いないの?」
「メルトラの仕事は、悪用すれば魔王の復活まで可能になるほど自由と権力のある仕事だもの。ボレアスの口がいくら上手かったとはいえ、臣下のほぼ全てが王の暗殺を良しと見過ごしていた……そんな人に、任せたくないと言うのが王と王妃が頭を悩ませてる理由よ」
「……なるほど、できれば身内以外で信頼できる実力者をそばに置きたいって言うのが王様の本音なんだ」
「そうね」
「だったらさ……いい人がいるよ‼︎」
「はぁ……分かってるわ。ルードでしょ」
僕が思いついた提案にセレナは口元を膨らませて不機嫌そうに答えを先に言う。
「な、なんで分かったの⁉︎」
「わかるわよ。貴方にとって一番信頼できる人だもの。それに実力もあるしお金もあるし……今回のパレードで民衆からの信頼もある。えぇ、貴方の考える通り最適すぎる人材よ。貴方が頼めば断らないでしょうしね……でも」
「で、でも?」
「あの男、私は嫌いよ……フリークの凄いところも見つけられて、貴方を誰よりも笑顔にできて。貴方を輝かせることもできて……私とは違うものをたくさん持ってて、貴方とすっごい仲良くて、相棒で……だから、だから大っ嫌いなの」
嫌いだと言いながら、セレナはルードのいいところをたくさん上げていく。
「ど、どうして?」
「だって私はフリークの相棒にはなれないから……その、だから……フリークを、取られちゃいそうで嫌なんだもん」
しょんぼりと顔を赤くして項垂れるセレナ
その表情は反則だ。
「と、取られたりなんかしないよ。ル……ルードは確かに相棒だけど⁉︎ 僕の心はずっと、これからも、永遠にセレナのものだから!」
「‼︎」
思わずセレナの手を取って本心をぶつけてしまったが、思ったよりも大きな声が出てしまったようで、騒がしかった店内は静まり返り、僕達に視線が集中する。
と言うか、今のはなんだか聞きようによってはプロポーズみたいになっちゃったし。
セレナも凄い顔を赤くしてモジモジしてるし。
どうしよう。急に恥ずかしくなってきた。
「あ、いや……その、ルードは男で、友達だからっていう意味でね。えと、だからその、深い意味は」
「……そうね。分かっているわフリーク。答えはもちろんOKよ。それで、子供は何人欲しいかしら?」
「いや、だから今のは・・・・・・」
誤解を解こうと僕はセレナの手を離そうとするが。
万力のような力で今度は僕の手が掴まれる。
「もう二度と離さない。あなたに誓うわ、何があっても私の心はあなたのもの。二度と置いていかないわ」
それは、いつか聞いた問いへの答えであり。
「セレナ……」
「だからフリーク……」
「え?……わっ⁉︎」
不意にセレナは勢いよく僕の手を引き……強引に僕の唇を奪う。
「私の全て、受け取ってくれる?」
上目遣いで迫るセレナ……結局そのまま押し切られ、僕とセレナはその日に夫婦となった。
やっぱり、人生はサイコロの連続だ……本当に何が起こるか分からない。
0
お気に入りに追加
258
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説

ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に
椎名 富比路
ファンタジー
錬金術師を目指す主人公キャルは、卒業試験の魔剣探しに成功した。
キャルは、戦闘力皆無。おまけに錬金術師は非戦闘職なため、素材採取は人頼み。
ポンコツな上に極度のコミュ障で人と話せないキャルは、途方に暮れていた。
意思疎通できる魔剣【レーヴァテイン】も、「実験用・訓練用」のサンプル品だった。
しかしレーヴァテインには、どれだけの実験や創意工夫にも対応できる頑丈さがあった。
キャルは魔剣から身体強化をしてもらい、戦闘技術も学ぶ。
魔剣の方も自身のタフさを活かして、最強の魔剣へと進化していく。
キャルは剣にレベッカ(レーヴァテイン・レプリカ)と名付け、大切に育成することにした。
クラスの代表生徒で姫君であるクレアも、主人公に一目置く。
彼女は伝説の聖剣を
「人の作ったもので喜んでいては、一人前になれない」
と、へし折った。
自分だけの聖剣を自力で作ることこそ、クレアの目的だったのである。
その過程で、着実に自身の持つ夢に無自覚で一歩ずつ近づいているキャルに興味を持つ。

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す
名無し
ファンタジー
ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。
しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
最後まで面白かったです!
ハピエンで良かった。
(・∀・)
ありがとうございます!
セレナさんェ
セレナさんは残念な子です。
ルードが幽閉されてる?!
直しました、ありがとうございます!