追放されて良かったと君たちにこう伝えよう〜冒険者パーティーを追放された後、迷宮の絵を趣味で描いていただけなのに成り上がるのが止まらない〜

nagamiyuuichi

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王子の依頼

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「いやね、こいつがどうしてもってんでこっそり連れてきてやったんですよ」

「……ボレアス。あなた王子様を少し甘やかしすぎなんじゃないですか?」

「そんなことねぇですよ? なぁ、王子?」

「ですよね? ボレアス」

 にやりと悪い顔をして笑うボレアスと王子様。

 オークション会場での一件の後、王子の命が狙われているとようやく知った王様は、ボレアスを王子の護衛として任命をした。

 初めは窮屈だと嫌がっていた王子様であったものの、そこは子供の扱いが得意なボレアス。

 いまではこの通りすっかり王子様を自分色に染め上げてしまっている。

「……はぁ、すっかりこのバカに染まってしまいましたか王子……教育係のセバスが王子様にサボり癖がついたって泣いてましたよ? だから私が護衛を引き受けると申し出たのに……なんでセレナさんはボレアスなんかに任せたのでしょうか?」

「と、年上魔法使いお姉さんの専属護衛……………」

 呆れるようにそうメルトラは呟くが、その言葉に王子様は顔を赤くしてごくりと息を呑んで、なぜか胸の辺りを目を見開いて凝視していた。

「……お前の方が断然教育に悪いですよ、牛女」

  ぼそりと毒づきながらボレアスはそっと王子様に目隠しをする。

「誰が牛ですか失礼な。貴方はいつもいつも私のことをそうやってバカにして」

「馬鹿になんてしてねーです。ちったー自分の魅力を自覚しろって話をしてるんですよ」

「み⁉︎ あ、……ば、馬鹿なこと言ってないでさっさと要件を言って帰ってください」

 メルトラはボレアスのことになると少々冷静さを欠くきらいがあるし、ボレアスもメルトラに対しては少し子供っぽい。
 
 なぜかはわからないが、セレナやミノスはいつもそんな二人のやりとりを「犬も食わない」と言っていたが。

 なんでそこで犬が出てくるんだろう?

「へーへー分かりましたよ。 ほれ王子様、思春期なのはいいですが、今日の目当てはそこのおっぱいじゃねーでしょ」

「お、おおお、おっぱ……胸なんて見てませんし‼︎ ちょっと突然何言いだすんですかボレアス‼︎」

「はいはい、俺が悪かったですよ、すいませんでした王子。ほらほら、そこのおっぱいも王子が話に集中できないんでちょいと席外してもらって構わねーですかね?これから男同士で大事な所の話をするんですから」

「っ、穢らわしい……」

 ゴミを見るような目でメルトラは王子とボレアスを睨むと、そんな暴言を残してさっさと部屋を出ていってしまった。

「やれやれ、相変わらず冗談が通じねぇ女ですねぇ本当」

「貴方が誤解されるような事言うからでしょ……まったく」

 ぷりぷりと怒りながらも王子様は少し息が荒い。

「えと、それで僕に何の用事?」

「あぁ、騒がせて申し訳ありませんねフリーク。今日は貴方にお願いがあって来たのですよ」

「お願い?」

 きょとんとして聞き返すと。王子様はうなずいて続きを話す。

「実はもうすでに知っているとは思いますが、来月僕は誕生日を迎えて十五歳……成人をするんです」

「わぁ、そうだったんですね。 えと、その、おめでとうございます」

 心からの賛辞を述べたつもりだったのだが、王子は複雑そうな顔をして苦笑いを見せた。

「……ま、まぁいいです。 とにかく、来月七月十七日、僕は成人するわけなのですが。困ったことがおこりまして」

「困ったこと?」

「誕生日に父が僕を黒の森に連れて行くと言い出したのです」

 黒の森は王都が保有している大きい森林のことだ。
 魔王に滅ぼされるまでは、ウッドエルフが暮らしていた大森林なのだが、ウッドエルフ亡き後も森の豊かさは百年以上損なわれることがなく、木も、動物も昆虫も魔法が掛かっているかのように巨大に育つと言われているらしい。

「王子様、もしかしてもうすぐ夏だから、王様とセミとかカブトムシとかクワガタをとりにいくの? いいなぁ、僕も昔はセレナと捕まえた虫を戦わせてたなぁ……」

 もちろん一度も勝てたことがなかったけど、今思えばそれもいい思い出だ。
 
 だけど、どうやら王子様は虫取りに行くわけではないらしく、見るからに不機嫌そうな表情をした。

「虫取りじゃないですよ‼︎ 狩りです、狩り‼︎ 僕だって虫取りだったら相談なんてしませんよ」 

「狩り? ウサギとか狼とかを追いかけて殺すあの?」

「えぇ、その悪趣味な狩りです。父上は狩りが大好きで是非一緒に行きたいって言い出したんです。狩りのやり方を教えてくれるって」

「そうなんだ、いいお父様だね」

「どこがですか‼︎」

 僕の言葉に憤慨するように王子様は頬を膨らませ、やれやれとボレアスはため息をもらした。

「……あー、もしかしてだけど王子様、狩りは嫌い?」

「当たり前じゃないですか‼︎ 獣臭いし、血で服は汚れるし……おまけにせっかく捕まえた動物をそのまま槍で突き刺すなんて信じられませんよ‼︎ 今までは成人してないからって断ってたのに、それなのにとうとうこの前、狩りができないようなやつを後継者にはできんって言い出して……あぁもぅやんなっちゃうなぁ」

「それは……うん……大変だね」

「そうなんです困ってるんです‼︎ だからお願いですフリーク‼︎ オークションの時みたいに僕の代わりにお父様と狩りに行ってください!?」

「…………………………………………はい?」
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