29 / 51
フリーク、王宮へ
しおりを挟む
ボレアスが依頼して来たのは何てことない仕事で、王都の詳細な地図の作成と、宮廷内部の見取り図を作ってほしいという内容であった。
何でそんなものが必要なのかは疑問であったが。
ボレアス曰く、正確な地図があると騎士団の巡回や城の警備に役立つらしく、大した内容でもなかったため僕は二つ返事でその依頼を承諾した。
そんなことでセレナに会えるようになるなら安いものだ。
その時僕はそう思ったのだが、ギルドハウスに戻ってルードにこの話をすると、ルードは右の眉をまつ毛とくっつきそうになるほど顰めた。
「どっからどう聞いても胡散臭い話だぞ相棒……俺を通さないようにって足早に話を進めてきたのも怪しさぷんぷんじゃねえか。なぁんでそんな話受けちまったんだ?」
呆れたようなルードのセリフに僕は少し考えてみるが。
「なんでって、セレナに会いたいから」
上手い言葉を思いつかなかったので素直にそう告白をする。
「はぁ。お熱いことで結構だがよ、正直俺は反対だね……女をダシに要求を飲ませようって考え方が俺としては特に気に入らねえ。分かってんのか相棒……また捨てられて辛い思いするかもしんねーんだぞ?」
心配するようにそう呟くルードに、僕は一瞬、パーティーを追放された時の光景を思い出す。
だけど。
「その時は、いい加減に懲りてまた一からやり直すさ。筆一本でここまで来れたんだもの、いくらだってやり直せるよ。おまけに今はルーディバイスっていう相棒がいる。怖いものなんてあるもんか」
もちろん強がりだ。
実際にそうなったら落ち込むだろうし、子供みたいに泣きじゃくるだろう。
でも、前みたいにおしまいだなんてもうきっと思わない。
だって僕はもう、自分のすごいところを見つけたんだから。
そう思いを込めて僕はルードにそう返すと。
ルードは一瞬驚いたような表情を見せた後、優しく笑ってくれた。
「それもそうか……わかった!もうこれ以上は何も言わねえさ相棒。ちゃっちゃとあのおっかねえ女を口説き落としちまえ!」
「く、口説くわけじゃないけど……その、ごめんねルード……多分一緒に仕事はできなくなるかもだけど」
「なんで謝るんだよ相棒。元々は、絵を描いてほしいってわがままをずーっと聞いてもらってたのはこっちなんだぜ?」
「あ、そっか……」
ルードの言う通り。僕は今日までルードの頼みを聞いてきただけにすぎなかった。
楽しすぎてそんなことすっかり忘れちゃっていたが。
思えば今まで、僕のやりたいことをルードはいつだってやらせてくれた。
「あぁそうさ。だから俺のことなんざ気にせずやりたいことをやればいいんだ。友達として心配はするがよ、男が振り出しに戻る覚悟で挑もうってんだ……それなら親友の俺は応援してやるのが正解だろ?」
満面の笑みで僕を見つめるルード。その表情にはぼくでもわかるほど寂しさが滲み出ていたが、ルードは決して引き止めようなんてしなかった。
僕は改めて、僕の一番の幸運は彼と出会えたことなのだと理解する。
「……ありがとうルード。信じてくれて」
「当たり前だろ? 親友なんだからよ」
そう言ってルードは僕に手を差し伸べ。
何も言わずに僕はその手を取って固く握手を交わす。
そこにある確かな絆は決して解けることはない。
そんな確信めいたものをお互い確認したのち、僕達はこうして袂を別ったのであった。
何でそんなものが必要なのかは疑問であったが。
ボレアス曰く、正確な地図があると騎士団の巡回や城の警備に役立つらしく、大した内容でもなかったため僕は二つ返事でその依頼を承諾した。
そんなことでセレナに会えるようになるなら安いものだ。
その時僕はそう思ったのだが、ギルドハウスに戻ってルードにこの話をすると、ルードは右の眉をまつ毛とくっつきそうになるほど顰めた。
「どっからどう聞いても胡散臭い話だぞ相棒……俺を通さないようにって足早に話を進めてきたのも怪しさぷんぷんじゃねえか。なぁんでそんな話受けちまったんだ?」
呆れたようなルードのセリフに僕は少し考えてみるが。
「なんでって、セレナに会いたいから」
上手い言葉を思いつかなかったので素直にそう告白をする。
「はぁ。お熱いことで結構だがよ、正直俺は反対だね……女をダシに要求を飲ませようって考え方が俺としては特に気に入らねえ。分かってんのか相棒……また捨てられて辛い思いするかもしんねーんだぞ?」
心配するようにそう呟くルードに、僕は一瞬、パーティーを追放された時の光景を思い出す。
だけど。
「その時は、いい加減に懲りてまた一からやり直すさ。筆一本でここまで来れたんだもの、いくらだってやり直せるよ。おまけに今はルーディバイスっていう相棒がいる。怖いものなんてあるもんか」
もちろん強がりだ。
実際にそうなったら落ち込むだろうし、子供みたいに泣きじゃくるだろう。
でも、前みたいにおしまいだなんてもうきっと思わない。
だって僕はもう、自分のすごいところを見つけたんだから。
そう思いを込めて僕はルードにそう返すと。
ルードは一瞬驚いたような表情を見せた後、優しく笑ってくれた。
「それもそうか……わかった!もうこれ以上は何も言わねえさ相棒。ちゃっちゃとあのおっかねえ女を口説き落としちまえ!」
「く、口説くわけじゃないけど……その、ごめんねルード……多分一緒に仕事はできなくなるかもだけど」
「なんで謝るんだよ相棒。元々は、絵を描いてほしいってわがままをずーっと聞いてもらってたのはこっちなんだぜ?」
「あ、そっか……」
ルードの言う通り。僕は今日までルードの頼みを聞いてきただけにすぎなかった。
楽しすぎてそんなことすっかり忘れちゃっていたが。
思えば今まで、僕のやりたいことをルードはいつだってやらせてくれた。
「あぁそうさ。だから俺のことなんざ気にせずやりたいことをやればいいんだ。友達として心配はするがよ、男が振り出しに戻る覚悟で挑もうってんだ……それなら親友の俺は応援してやるのが正解だろ?」
満面の笑みで僕を見つめるルード。その表情にはぼくでもわかるほど寂しさが滲み出ていたが、ルードは決して引き止めようなんてしなかった。
僕は改めて、僕の一番の幸運は彼と出会えたことなのだと理解する。
「……ありがとうルード。信じてくれて」
「当たり前だろ? 親友なんだからよ」
そう言ってルードは僕に手を差し伸べ。
何も言わずに僕はその手を取って固く握手を交わす。
そこにある確かな絆は決して解けることはない。
そんな確信めいたものをお互い確認したのち、僕達はこうして袂を別ったのであった。
0
お気に入りに追加
258
あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる