23 / 51
ガルガンチュアオークション
しおりを挟む
世界で未だ一組だけしか踏破したことのない最難関と言われる迷宮。
ガルガンチュアの迷宮。
それがどれだけ凄いことなのか、今まで僕はなんとなく程度にしか理解していなかった。
だが、ルードに連れられて会場にやってきて、僕は今更ながらそれがどれだけの偉業であったのかを理解した。
「す……ごい」
到着したのは王都に存在する王家御用達の巨大な劇場。
王都中央演劇場。
世界中の貴族や王族まで利用するこの演劇場は、観客席総数一万人を誇るこの国最大の劇場であり、世間のことにに疎い僕ですら名前を知っているぐらいには有名な劇場である。
そんな場所を終日貸切にして、今日一日オークション会場とするなんて聞いた時は、驚きすぎて目がこぼれ落ちてしまうかと思ったほどだ。
「いよいよ~この時がきましたねぇ~。私もこの絵がどんな結果になるのか~、とても楽しみです~」
会場に到着し、ルードと共に鉄箱へと厳重に保管した迷宮の絵をアキナに渡すと、
アキナはいつも通りおっとりとした口調でそう言ったが。
体は正直なようで、どこかソワソワして緊張しているのが丸わかりだった。
この会場を貸し切るだけでも相当なお金が動いているだろう。
頼むから損が出ない程度の値段はついてくれよ……。
なんて思いながら僕はアキナさんに鉄箱を託すと。
「やーやーどーも皆様おそろいで」
会場からボレアスが鎧を纏った兵士を連れて現れた。
「あれ? ボレアス、どうしてここに?」
「のんびりオークション見物ー……ってんだったらよかったんですがねぇ。当然仕事ですよ。騎士団は総出で王族の警護に当たってるんですわ。何しろ、下は下級貴族から上は各国の王様まで、お偉方総出で今回のオークションに参加するんだ。 万が一があっちゃいけねーですからね……最近色々と物騒ですし」
そういって、ボレアスは指を鳴らすと、鎧を着た兵士たちが五人がかりで鉄箱を運び出す。
「物騒?」
「あぁいや、こっちの話ですよ。そんじゃまぁ、絵は部下がしっかり見ておくんで、皆様方はお席までエスコートさせていただきますよ。 会場を一望できる、特等席へとね?」
◇
会場の最上階に案内された僕たちは、厳重な警備が敷かれた部屋へと通される。
高そうな絨毯が敷かれ、ソファやテーブルの上には果物やおいしそうなお酒が置かれたその部屋は、一見すると貴族や王族の人が使用する待合室のようにも見えるが、正面の壁がくり抜かれ、会場が見渡せるようになっている。
ボックス席……という奴らしく、他にも似たような構造の部屋は会場にはいくつもあるが、ここだけは飛び抜けて広く大きい。
「すげぇ部屋だなおい……」
息を呑むようにルードはそういうと、身を乗り出して階下を見下ろす。
「王族や貴族でも滅多に入れない極上の特等席だ。お前さんが出席をするって口ぞえしたらオーナーが是非にって貸し出してくれたんだとよ。人気者ですねぇフリーク」
「そ、そうなの?」
「えぇ、何を隠そうここのオーナーも、フリークさんの絵の大ファンですから。
今日はオークションの参加者として~、出席してるはずですよ~?」
「さすがは相棒だな」
「……う、うーん? なんだか未だにしっくり来ないんだよね。ちょっと前までこんないい服なんて着たことすら無かったのに」
ルードに着せられた貴族用の服は、ひんやりとしている上に肌に纏わりつくようで着心地がすこぶる悪い。
なんだか濡れてるみたいで落ち着かない。
「相棒、頼むからシミとか作らねーでくれよ? 口の汚れ袖で拭くとかもっての他だからな」
「うぅ……面倒くさいなぁ」
「ははは、まぁそうでしょうねぇ。俺だって王国の騎士団なんて今でも柄じゃねえって最初の頃は思いましたからね。でもま、そんな考えもこのオークションで吹き飛ぶでしょーよ。
それに、ここにゃ王族も貴族の皆さんも来やしねえんですし、肩の力を抜いて楽しんでくださいよ。ほら、高そうなワインもありますよ?」
そう言ってボレアスグラスを一つ手に取ると、ワインを注いで僕に渡してくれる。
「え? ボレアスここに残るの? 警備の仕事は?」
「出品者の身の安全を確保するのも立派な警備な仕事でしょう?」
「屁理屈こねやがって、仕事しろよ給料泥棒」
根は真面目なルードは相性が悪いのだろう。
珍しくボレアスに向かって毒を吐く。
「あらら、どうやら随分と嫌われちまったようですねぇ。まぁ邪魔だってんなら俺は端っこの方で一人で楽しみますんで、どうぞお気遣いなく」
そう言うとボレアスは一人ワインボトルを手に持ったまま部屋の隅に行ってしまった。
「胡散臭い奴だな……腕が確かってのは見ればわかるけどよぉ、追放した人間に対していささかなれなれしすぎじゃねぇか?」
少し悪態をつくようにルードはひそひそ声でそう溢すと、眉を潜めて僕の方をみる。
「元々ああいう性格なんだよボレアスは」
「相棒は優しすぎんだよ。 ありゃ絶っっ対何か企んでるって顔にしかみえねーぜ? 助けて貰ったって話は聞いたけどよぉ、警戒しておかないと今度はもっとひどい目に遭わされるかもしれねーぜ?」
「あぅ」
ルードのいうことはもっともであり、僕は返す言葉もなく項垂れる。
ガルガンチュアの迷宮。
それがどれだけ凄いことなのか、今まで僕はなんとなく程度にしか理解していなかった。
だが、ルードに連れられて会場にやってきて、僕は今更ながらそれがどれだけの偉業であったのかを理解した。
「す……ごい」
到着したのは王都に存在する王家御用達の巨大な劇場。
王都中央演劇場。
世界中の貴族や王族まで利用するこの演劇場は、観客席総数一万人を誇るこの国最大の劇場であり、世間のことにに疎い僕ですら名前を知っているぐらいには有名な劇場である。
そんな場所を終日貸切にして、今日一日オークション会場とするなんて聞いた時は、驚きすぎて目がこぼれ落ちてしまうかと思ったほどだ。
「いよいよ~この時がきましたねぇ~。私もこの絵がどんな結果になるのか~、とても楽しみです~」
会場に到着し、ルードと共に鉄箱へと厳重に保管した迷宮の絵をアキナに渡すと、
アキナはいつも通りおっとりとした口調でそう言ったが。
体は正直なようで、どこかソワソワして緊張しているのが丸わかりだった。
この会場を貸し切るだけでも相当なお金が動いているだろう。
頼むから損が出ない程度の値段はついてくれよ……。
なんて思いながら僕はアキナさんに鉄箱を託すと。
「やーやーどーも皆様おそろいで」
会場からボレアスが鎧を纏った兵士を連れて現れた。
「あれ? ボレアス、どうしてここに?」
「のんびりオークション見物ー……ってんだったらよかったんですがねぇ。当然仕事ですよ。騎士団は総出で王族の警護に当たってるんですわ。何しろ、下は下級貴族から上は各国の王様まで、お偉方総出で今回のオークションに参加するんだ。 万が一があっちゃいけねーですからね……最近色々と物騒ですし」
そういって、ボレアスは指を鳴らすと、鎧を着た兵士たちが五人がかりで鉄箱を運び出す。
「物騒?」
「あぁいや、こっちの話ですよ。そんじゃまぁ、絵は部下がしっかり見ておくんで、皆様方はお席までエスコートさせていただきますよ。 会場を一望できる、特等席へとね?」
◇
会場の最上階に案内された僕たちは、厳重な警備が敷かれた部屋へと通される。
高そうな絨毯が敷かれ、ソファやテーブルの上には果物やおいしそうなお酒が置かれたその部屋は、一見すると貴族や王族の人が使用する待合室のようにも見えるが、正面の壁がくり抜かれ、会場が見渡せるようになっている。
ボックス席……という奴らしく、他にも似たような構造の部屋は会場にはいくつもあるが、ここだけは飛び抜けて広く大きい。
「すげぇ部屋だなおい……」
息を呑むようにルードはそういうと、身を乗り出して階下を見下ろす。
「王族や貴族でも滅多に入れない極上の特等席だ。お前さんが出席をするって口ぞえしたらオーナーが是非にって貸し出してくれたんだとよ。人気者ですねぇフリーク」
「そ、そうなの?」
「えぇ、何を隠そうここのオーナーも、フリークさんの絵の大ファンですから。
今日はオークションの参加者として~、出席してるはずですよ~?」
「さすがは相棒だな」
「……う、うーん? なんだか未だにしっくり来ないんだよね。ちょっと前までこんないい服なんて着たことすら無かったのに」
ルードに着せられた貴族用の服は、ひんやりとしている上に肌に纏わりつくようで着心地がすこぶる悪い。
なんだか濡れてるみたいで落ち着かない。
「相棒、頼むからシミとか作らねーでくれよ? 口の汚れ袖で拭くとかもっての他だからな」
「うぅ……面倒くさいなぁ」
「ははは、まぁそうでしょうねぇ。俺だって王国の騎士団なんて今でも柄じゃねえって最初の頃は思いましたからね。でもま、そんな考えもこのオークションで吹き飛ぶでしょーよ。
それに、ここにゃ王族も貴族の皆さんも来やしねえんですし、肩の力を抜いて楽しんでくださいよ。ほら、高そうなワインもありますよ?」
そう言ってボレアスグラスを一つ手に取ると、ワインを注いで僕に渡してくれる。
「え? ボレアスここに残るの? 警備の仕事は?」
「出品者の身の安全を確保するのも立派な警備な仕事でしょう?」
「屁理屈こねやがって、仕事しろよ給料泥棒」
根は真面目なルードは相性が悪いのだろう。
珍しくボレアスに向かって毒を吐く。
「あらら、どうやら随分と嫌われちまったようですねぇ。まぁ邪魔だってんなら俺は端っこの方で一人で楽しみますんで、どうぞお気遣いなく」
そう言うとボレアスは一人ワインボトルを手に持ったまま部屋の隅に行ってしまった。
「胡散臭い奴だな……腕が確かってのは見ればわかるけどよぉ、追放した人間に対していささかなれなれしすぎじゃねぇか?」
少し悪態をつくようにルードはひそひそ声でそう溢すと、眉を潜めて僕の方をみる。
「元々ああいう性格なんだよボレアスは」
「相棒は優しすぎんだよ。 ありゃ絶っっ対何か企んでるって顔にしかみえねーぜ? 助けて貰ったって話は聞いたけどよぉ、警戒しておかないと今度はもっとひどい目に遭わされるかもしれねーぜ?」
「あぅ」
ルードのいうことはもっともであり、僕は返す言葉もなく項垂れる。
0
お気に入りに追加
258
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる