追放されて良かったと君たちにこう伝えよう〜冒険者パーティーを追放された後、迷宮の絵を趣味で描いていただけなのに成り上がるのが止まらない〜

nagamiyuuichi

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恩恵保有者

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「頼むフリーク‼︎ 俺に協力してくれ‼︎」

 初めて絵が売れた次の日の朝、ルードは金貨の大量につまった袋を持って僕のところにきてそう言った。

「え、そんなに気に入ったの? というかどうしたのそのお金……」

「借りた‼︎ 俺の装備と剣を担保にな‼︎」

「借りた……って、なんでそこまでして。そんなに僕の絵が気に入ったの?」

「気に入ったなんてもんじゃねえよ‼︎ お前の絵がありゃ、俺はすぐに大金持ちさ‼︎ 頼むフリーク‼︎ お前は天才だ‼︎ 俺のために絵を描いてくれ‼︎ このとおりだ‼︎」

「え? えええ、ちょ、ど、どういうこと???」

 困惑する僕にルードは迷宮の絵を開く。

「この絵、タイトルの場所に言ってみたんだが、迷宮の風景どころか壁にできた傷の数まで全く同じだった。風景を見て描き移すならまだしも、お前がこの絵を描いたのは迷宮でも何でもない湖の近くだ……つまりお前はこれを、記憶だけを頼りに描いたってことだろ?」

「そ、そうだけど……」

「やっぱりか……なぁ、もしかしてお前一回見たものって忘れないんじゃないか?」

「え、そ、そうだけど。みんなそれが普通なんじゃないの?」

「なんてこった。やっぱり……恩恵保有者(ギフテッドホルダー)か。なんだって銀の風の奴らはこんな天才を捨ててったんだ?」

「ぎ、ギフテッド?」

「ごく稀に産まれてくる神様から特別な力を授かって産まれてくる人間のことだよ……お前の場合、瞬間記憶能力の恩恵保有者(ギフテッドホルダー)だな」

 いろいろな単語の出現に、僕は頭がショートしそうになりポカンとする。

「え、えと。ごめん、話が難しくてついていけないんだけど」

「あぁ悪い。つまりお前には普通の人間にはない特別な才能があるってことだ。誰も気付いてなかったみたいだけどな」

「……そ、そうなの? いや、でも僕、本も読めないし、計算だってできないよ?」

「前にも聞いたが、それは頭が悪くて覚えられないんじゃなくて、他に理由があるんじゃないか? 例えば、文字を読もうとすると文字が動いて見えるとか?」

「なんで知ってるの?」

「やっぱり……恩恵保有者(ギフテッドホルダー)の特徴だ。驚異的な能力を持つ代わりに、普通の人間が当たり前に持っているような能力が衰えていたり無くしていたりするんだよ。味覚がなかったり、感情がなかったり……視力が極端に弱かったりって言った具合にな。識字障害、文字が読めなくなるってのもその一つだ」

「そ、そうなんだ……で、でもなんでそんな凄い事なのに、みんな気付いてくれなかったんだろ?」

「フリークの場合は、瞬間記憶能力の代償が識字障害だったってのが原因だろうな。大体瞬間記憶能力者ってのは、本の内容や、数字の羅列を一瞬で記憶するって離れ技をやってのけるからギフテッドホルダーだと認知されるんだが。文字や数字がそもそも読めないんじゃ、ちょっと人の顔を覚えるのや道をおぼえるのが得意なやつ程度の認識で終わっちまう……こうやって絵でも描かないと自分の才能に気付いてもらう機会がないんだよ」

 なるほど……と僕は納得してしまう。
 親に絵を禁止されてから今まで、僕は銀の風のみんなに絵を見せたことがない。

 ルードのいう通り、僕に瞬間記憶能力があったとしても気付かなかったのは無理もない……のかな?

「……でも、今まで生きてきてこの能力が役に立ったことってあんまりないよ」
 
 迷宮の攻略を手伝って欲しい……と言われても、いままで十年間迷宮の攻略においてこの力が役に立ったことなど一度もない。いまさらどうやって手伝えば良いのだろう。

 しかし、ルードは「とんでもねぇ」と一言呟くと。

「お前は迷宮の地図そのものなんだよフリーク。 歩いた場所、見た場所全てがお前の頭の中に全部入ってるなら、俺はこれからどんな迷宮も安全なルートで迷うことなく攻略ができるってことになる‼︎」

「……あぁ、確かに」

 銀の風に所属していた時はみんなの後をついていくだけだったが、攻略方法も迷宮内の構造も全て記憶している。
  
 もちろん、最短ルートも、安全なルートも全部映像として記憶されている。

「頼む‼︎ お前のその記憶力で俺に力を分けてくれ‼︎ 報酬はきっちり半分、悪い話じゃないだろ? な?な? 頼む、この通りだ‼︎」


 終いには頭を地面に擦り付けて土下座まで始めるルード。

「あぁ……もぅわかった、わかったからルード。頭を上げて」

 その気迫に押され、僕はルードに協力をすることにした。
 あまりにもルードが必死だったからというのもあるが。

 今までずっと探していた、自分でも気付いていない僕の凄いところを初めて見つけてくれた彼との出会いには、僕も特別なものを感じずにはいられなかったからだ。

「本当か‼︎」

「うん、どうせ暇だし……ただ、絵を描くのは趣味だから続けさせてもらうけれどもそれでもいい?」

「もちろん、もちろんだぜフリーク‼︎」

「そう、だったらこれからよろしくね。ルード」


「あ、ああ、こっちこそよろしくなフリーク‼︎ いや、相棒ーー‼︎」

 ルードは叫びながら僕に抱きつく。
 大袈裟だな……とは思いつつも、悪い気はしなかった。


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