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聖邪激突
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降りしきる雨は止むことはなく土砂降りの中、傘もささずに俺とセッカは目的地へと向かう。
フェリアスの手に握られていた布の切れ端。
そこに染み付いたヨタカの匂いをたどって、俺は町のはずれにある廃墟へと向かう。
人狼族である俺にとって、この雨の中でもしっかりと染み付いたヨタカの香りをおうのは難しいことではなく。
そのことを知っていたのか、それとも偶然か、廃墟の前では一人の男が同じように傘もささずに俺たちのことを出迎えた。
「お父様……いや、ツキシロヨタカ」
セッカの言葉に、俺は剣の柄に手を触れる。
【やぁセッカ……随分と大きくなったね。 といっても、こっちの男の中に眠っている映像と比較しただけなんだけどね】
「……お父様とは似ても似つかん喋り方よな。これではヨタカと呼ぶのも違和感がある……貴様のことは、なりそこない……いや、出来損ないとでも呼べば良いか?」
皮肉を織り交ぜてそう語るセッカ。
その言葉にヨタカは少し不満げな表情を見せる。
【できそこないとは随分と言葉の悪い……しかし言い得て妙なのが腹立たしいな。セッカ】
「軽々しく我の名前をよぶな下郎。 怖気がする」
【そう言っても、俺はセッカの父親なんだ。娘の名前を呼ばない父親がどこにいるっていうんだ?】
「偽物が、父を語るな」
【ヨタカの見た目で、ヨタカの記憶を保有する存在。それはもはやツキシロヨタカに他ないだろう? それとも、不純物が混じったらそれは父親ではないのか? だが、例え水に絵の具を一滴垂らそうが水は水だろう? それと同じように俺だってツキシロヨタカには変わりがないんだ】
「哲学にすらなってない屁理屈はよせ阿呆。 さっきも言ったであろう? 不純物が混ざったならばそれは父親であって父親ではない……出来損ないというのだよ」
【くっくく、釣れないねぇ。 君のところの大事な犬を殺されてご立腹? それとも君に親殺しをさせないために一人挑んだ友達を切り刻んだことへの憤りか? くくく、心地いいねぇ。 なんなら、どんなふうに、どんな言葉をあげてあの王女様が切り刻まれたかも教えて……】
「ルーシー」
「応」
言い終わるよりも早くセッカは俺に命令を下し、その言葉と同時に俺はおっさんの刀を引き抜き、ヨタカの首めがけて刃を振るうが、読んでいたとばかりにヨタカは体をそらしてその一閃を回避する。
【おっと危ない】
「まだまだぁ‼︎」
逃げた先に、さらに剣を振るうが、ヨタカはその全てを回避しつつ愉快げに笑う。
【ふっははは……随分と荒々しい剣だな。打ち込みは激烈にして剣閃は達人の域……その刃に絡め取られればいくら俺でも殺されちまいそうだ。だがそれだけに惜しいな、殺気がこもりすぎて、攻撃のタイミングがバレバレだぞ】
にやりと笑いながら、剣を抜き反撃に出るヨタカ。
「‼︎」
攻撃の隙を縫うように、剣閃を湾曲させながら急所を狙うヨタカ。
的確にしていやらしいその剣は、剣技というよりも曲芸に近く。
俺の攻撃を先読みして回避しては、一手先を読むかのような反撃を繰り出してくる。
一閃を放てば返すように一閃が返ってくる。
互いに互いの攻撃を紙一重で回避はするものの。
どちらが優勢かは火を見るよりも明らか。
技量・実力は確実にこちらが上なのは確かだが。
冷静か否かという点で、圧倒的にあちらが優勢に立っている。
おそらく、フェリアスのこと、ゲンゴロウのことを忘れ剣を振るえば勝てるだろう。
だが、セッカは「憎しみを持って殺害をしろ」と命令を下した。
いや、そうでなくても。
この戦いにおいて、怒りを消して戦うなんてことできるはずがない。
【ふぅん、忠告をしてやったというのに。 まぁいい、そのまま怒りに飲まれて死ね‼︎】
力任せの一撃は大地を割るが、体を翻して俺の剣を回避したヨタカは、そのまま剣を俺につきたてようと放つが。
【狐火‼︎】
【ぐっ……なにっ‼︎?】
その横腹に、火柱が走りヨタカを撃ち抜く。
「一騎打ちなどと誰が言った出来損ない……貴様は殺す、どんな手を使っても殺す。憎悪を込めて、呪いを込めて、全霊を持って殺してやる‼︎」
怒りにまみれ、俺から引き剥がし取り込んだ狐の尾を四本を浮かび上がらせながらセッカは炎を巻き上げる。
その瞳は赤く光り、セッカの周りだけ雨が蒸発する。
……猛り狂うセッカの肌をその炎が焼いていたが、それすらもセッカは気がつかないようにセッカは炎を巻き上げる。
【……はっ、ははは……あぁやばいな。 憎しみが深すぎて、気持ちよすぎる‼︎ いいぜいいぜ‼︎ 二人掛かりで俺を殺してみろよ‼︎ その呪い、その憎悪、あぁ、本当に災厄だ‼︎】
対し、ヨタカは狐の尾を五本を生やして剣をかまえる。
集うはこの世の災厄狐尾九本。
セッカが復讐を果たそうが。
ヨタカが野望を果たそうが。
九尾の物語はここで終わりを告げる。
狐尾五本・悪鬼羅刹の大厄災 ツキシロ ヨタカ
対
狐尾四本・復讐姫 ツキシロ セッカ
狐尾零本・御剣 ルーシー
最終局面・いざ尋常に、勝負‼︎
フェリアスの手に握られていた布の切れ端。
そこに染み付いたヨタカの匂いをたどって、俺は町のはずれにある廃墟へと向かう。
人狼族である俺にとって、この雨の中でもしっかりと染み付いたヨタカの香りをおうのは難しいことではなく。
そのことを知っていたのか、それとも偶然か、廃墟の前では一人の男が同じように傘もささずに俺たちのことを出迎えた。
「お父様……いや、ツキシロヨタカ」
セッカの言葉に、俺は剣の柄に手を触れる。
【やぁセッカ……随分と大きくなったね。 といっても、こっちの男の中に眠っている映像と比較しただけなんだけどね】
「……お父様とは似ても似つかん喋り方よな。これではヨタカと呼ぶのも違和感がある……貴様のことは、なりそこない……いや、出来損ないとでも呼べば良いか?」
皮肉を織り交ぜてそう語るセッカ。
その言葉にヨタカは少し不満げな表情を見せる。
【できそこないとは随分と言葉の悪い……しかし言い得て妙なのが腹立たしいな。セッカ】
「軽々しく我の名前をよぶな下郎。 怖気がする」
【そう言っても、俺はセッカの父親なんだ。娘の名前を呼ばない父親がどこにいるっていうんだ?】
「偽物が、父を語るな」
【ヨタカの見た目で、ヨタカの記憶を保有する存在。それはもはやツキシロヨタカに他ないだろう? それとも、不純物が混じったらそれは父親ではないのか? だが、例え水に絵の具を一滴垂らそうが水は水だろう? それと同じように俺だってツキシロヨタカには変わりがないんだ】
「哲学にすらなってない屁理屈はよせ阿呆。 さっきも言ったであろう? 不純物が混ざったならばそれは父親であって父親ではない……出来損ないというのだよ」
【くっくく、釣れないねぇ。 君のところの大事な犬を殺されてご立腹? それとも君に親殺しをさせないために一人挑んだ友達を切り刻んだことへの憤りか? くくく、心地いいねぇ。 なんなら、どんなふうに、どんな言葉をあげてあの王女様が切り刻まれたかも教えて……】
「ルーシー」
「応」
言い終わるよりも早くセッカは俺に命令を下し、その言葉と同時に俺はおっさんの刀を引き抜き、ヨタカの首めがけて刃を振るうが、読んでいたとばかりにヨタカは体をそらしてその一閃を回避する。
【おっと危ない】
「まだまだぁ‼︎」
逃げた先に、さらに剣を振るうが、ヨタカはその全てを回避しつつ愉快げに笑う。
【ふっははは……随分と荒々しい剣だな。打ち込みは激烈にして剣閃は達人の域……その刃に絡め取られればいくら俺でも殺されちまいそうだ。だがそれだけに惜しいな、殺気がこもりすぎて、攻撃のタイミングがバレバレだぞ】
にやりと笑いながら、剣を抜き反撃に出るヨタカ。
「‼︎」
攻撃の隙を縫うように、剣閃を湾曲させながら急所を狙うヨタカ。
的確にしていやらしいその剣は、剣技というよりも曲芸に近く。
俺の攻撃を先読みして回避しては、一手先を読むかのような反撃を繰り出してくる。
一閃を放てば返すように一閃が返ってくる。
互いに互いの攻撃を紙一重で回避はするものの。
どちらが優勢かは火を見るよりも明らか。
技量・実力は確実にこちらが上なのは確かだが。
冷静か否かという点で、圧倒的にあちらが優勢に立っている。
おそらく、フェリアスのこと、ゲンゴロウのことを忘れ剣を振るえば勝てるだろう。
だが、セッカは「憎しみを持って殺害をしろ」と命令を下した。
いや、そうでなくても。
この戦いにおいて、怒りを消して戦うなんてことできるはずがない。
【ふぅん、忠告をしてやったというのに。 まぁいい、そのまま怒りに飲まれて死ね‼︎】
力任せの一撃は大地を割るが、体を翻して俺の剣を回避したヨタカは、そのまま剣を俺につきたてようと放つが。
【狐火‼︎】
【ぐっ……なにっ‼︎?】
その横腹に、火柱が走りヨタカを撃ち抜く。
「一騎打ちなどと誰が言った出来損ない……貴様は殺す、どんな手を使っても殺す。憎悪を込めて、呪いを込めて、全霊を持って殺してやる‼︎」
怒りにまみれ、俺から引き剥がし取り込んだ狐の尾を四本を浮かび上がらせながらセッカは炎を巻き上げる。
その瞳は赤く光り、セッカの周りだけ雨が蒸発する。
……猛り狂うセッカの肌をその炎が焼いていたが、それすらもセッカは気がつかないようにセッカは炎を巻き上げる。
【……はっ、ははは……あぁやばいな。 憎しみが深すぎて、気持ちよすぎる‼︎ いいぜいいぜ‼︎ 二人掛かりで俺を殺してみろよ‼︎ その呪い、その憎悪、あぁ、本当に災厄だ‼︎】
対し、ヨタカは狐の尾を五本を生やして剣をかまえる。
集うはこの世の災厄狐尾九本。
セッカが復讐を果たそうが。
ヨタカが野望を果たそうが。
九尾の物語はここで終わりを告げる。
狐尾五本・悪鬼羅刹の大厄災 ツキシロ ヨタカ
対
狐尾四本・復讐姫 ツキシロ セッカ
狐尾零本・御剣 ルーシー
最終局面・いざ尋常に、勝負‼︎
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