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油断

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「よもや、族長の証である宝具を狐の尾の核にするとはのぉ」

  人狼族の村へと続く道を歩きながら、俺とセッカ、そして気だるげなフェリアスは人狼族の村まで向かう。

  もう二度と立ち入ることはないとおもっていた故郷への想像よりもはるかに早い帰郷。
 
  当然、奴隷同然に扱われてきた村への帰郷は快いものではなく。足取りは自然と重くゆっくりになっていく。

「う、うぷ……ごめん、少し待ってて」

  いや、足取りが重くゆっくりなのは、セッカとフェリアスが先ほどから交互に虹色の液体を茂みを見つけるたびに吐き出しているからか。

 「本当に大丈夫なのかセッカ……俺一人でさくっと倒してきちまった方が早かったんじゃないか?」

「馬鹿者、フラフラほっつき歩く剣がどこにいる。 それに、あの小賢しいガルルガと魔獣塊捜索の同盟を結んだのは我じゃ。 その尻拭いをお前にさせて、我は二日酔いでお留守番とか、それこそブラック企業じゃろ‼︎」

「いや、そもそも二人のお守りをさせられてる時点でそこそこひどい気がするけど……てかなんでお前まできてるんだよフェリアス。 お前は寝ててもいいだろう」

「なにを言ってるのよご主人様……主人一人置いて従者は二日酔いとか、それこそ大問題でしょうに」

「とか言いつつ、あわよくば狐の尾を奪い取ってやろうとかいう算段なんじゃないか?」

「なっ‼︎?なななな、なにをいっているのかしら? そそそそそ、そんなわけないじゃない‼︎?」

「図星かよ……まったく」

  本当にこれで魔獣塊退治なんてできるんだろうか。
 
  そんな一抹の不安を抱えながらも俺達は人狼族の村の正門前に到着をした。

「……外から見た限りは、何かに飲み込まれたようには見えないが……人っ子一人、見張りの一人いないところを見るに、何かあったのは明白だの。まぁしかし、中にいるのは魔獣塊だとすでにわかっているのだし、其方がいれば苦戦するほどでもなかろう。ちゃちゃっと倒して、サクッと狐の尾を手に入れようぞ」

  セッカはそう言いながら、気軽に門に触れる。

「お、おい。 気をつけなさいよあんた。 中には化け物がいるっていうのに‼︎?」

「フェリアス様は臆病者じゃのぉ。 そんな、魔獣塊みたいな泥の化け物に、待ち伏せなんて頭があるわけなかろう」

  カラカラと笑いながら、呑気に正門の扉を開けるセッカ。

  だが……扉を開けると同時に。

【dkふぁjヶl;hf;いdfじゃえ ‼︎‼︎‼︎】

  待ち構えていたと言わんばかりに、扉の奥から飛びかかる泥の塊。
 
  その不気味な形容し難き声のようなものは……間違いなく森で戦った魔獣塊と同じであり。

「セッカ‼︎?」


「にょわあああああああぁ‼︎? にゃ、にゃんでえええええぇ‼︎?」

  セッカは悲鳴とともに、頭から泥に飲み込まれたのであった。


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