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魔王を拾いました
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「はぐはぐ……もぐもぐ」
家に戻り、僕はお手製の料理を少女に振る舞うと、魔王は掻き込むように食事を頬張る。
言葉なく黙々と食事をとるその瞳にはうっすらと涙が浮かんでおり、彼女にとってこれが久しぶりの食事であったことを教えてくれる。
「やっぱりお腹空いてたんだね」
「うむ、うむ!……もうかれこれ一週間、水しかのんでおらなんだからな」
「それは大変だったね……おかわりあるから、遠慮しないでね」
「うむ‼︎」
嬉しそうに声を弾ませる魔王。
そんな彼女に僕は微笑むと、ミートパイを切り分けて魔王とついでにフレンの皿に乗せてあげる。
「……これもお前が作ったのか?」
ミートパイの出来上がりに関心をするようにフレンはそう呟いてパイにかぶりつく。
「まぁね、お味はどう?」
「うまいよ……でも意外だな、お前が料理作れるなんて」
「ブレイブハザード前、作った料理を美味しいって姉ちゃんに褒められたことがあって、今でもこっそり練習してるんだよね……今はやらせて貰えないから、誰かに振る舞うのは初めてで少し不安だったんだけれど、喜んでもらえて良かった」
「……災害前ねぇ。確か災害でお前が死にかけてから、お前の姉貴はあんな過保護になったんだっけ?」
「そうだね、今では想像できないと思うけれど、昔の姉ちゃんは相当やんちゃだったんだよ? 真冬の川に突き飛ばされたこともあったし、屋根から突き飛ばされて骨折したこともあったっけ?」
「本当にえらい変わり様なんだな、まるで別人じゃねえか」
「でしょ?」
驚いたようなフレンの言葉に僕は苦笑を漏らすが……きゅっと胸を締め付けるような感覚を覚える。
時々思うのだ。
もし僕が死にかけなければ、姉ちゃんはもっと自分のために生きられたんじゃないだろうかと。
僕の存在が姉ちゃんから自由を奪ってしまっているのではないかと。
「……ユウ? どうした?」
ふと、訝しげな様子のフレンに声をかけられ僕は首を振る。
「あぁ、ごめん。ちょっとボーッとしちゃってた」
「おいおい大丈夫か? ドラゴンに何かされたか?」
「平気平気……ごめん、それで、なんだっけ?」
「だから、こいつをこれからどうするんだって話、仮にも魔王だろこいつは?」
「そうだけど、別に何か悪さをしてるわけではないんだし、お腹も減ってるみたいだったからつい可哀想で……何か力になってあげられないかなって思って」
「力って?」
「仕事探しとか、魔法を使えるようになる方法だったりだとか色々だよ、魔王とは言えあんなにボロボロで痩せ細ってる人を放っておけないでしょ? 勇者として」
「やれやれ、まぁお前のお人好しに関してとやかくいうつもりはないんだけどよ……お前と違ってアンネの奴は融通が効かねえんだ。魔王なんて見つかったら賢者パワーで一瞬で消炭に変えられるか首が飛ぶかのどっちかだぞ……」
フレンの言葉に、僕は少し想像をして身震いをする。
確かにどんな説明をしても「魔王は魔王なんでしょ? 大丈夫、お姉ちゃんに任せて!」なんて言って彼女が血祭りにあげられる未来が見えた。
「……ま、まぁ。姉ちゃんが帰ってくるのは三日後だし、それだけ時間があればなんとかなるんじゃないかなぁ?」
「考えなしだったのかよ……お前も姉貴のこと笑えねえぞ?」
「うぐ、返す言葉もないね……でも仕事だったらフレンが紹介してあげられるだろ? 情報屋っていうのは仲介業も兼ねてるんだから」
「……まぁ、それぐらいだったら別に構いやしねえけど、結局他人任せじゃねえかお前」
「たはは……たしかにそうか。まぁでも、ゲスだけどフレンは根っこのところで僕以上に甘い所あるからついつい頼っちゃうんでげすよ」
「あれ? 今褒められたんだよな俺、ゲスって二回言われたけど褒められたんだよね?」
フレンの問いに僕は苦笑を漏らして無視をする。
と。
「ご馳走様でしたなのじゃ‼︎」
そんなやりとりをしていると、魔王の弾んだ声が部屋に響いた。
「お粗末様でした。お口にあったかな?」
「うむ! 妾こんなに人に優しくされたのは生まれて初めてじゃ。ユウ、お前良い奴だな、勇者だけど」
「魔王が餌付けされてりゃせわねえな」
「そしてお前は嫌な奴じゃ金髪」
「けっ、お褒めに預かり光栄ですね魔王様」
悪態をつくフレンを魔王は睨んで口を尖らせる。
どうにも二人は反りが合わないらしく、二人の視線の間でバチリと火花が舞うような錯覚が見える。
「そういえば、どうして君はダンジョンの中で魔物に襲われてたの? 魔王なのに」
「むっ……むー、妾の弱みを晒すことになる故言いにくいのだが……まぁ、お前は良い奴だし話しても良いか。 ご飯もくれたし」
「むしろこいつ以外に話しちゃいけない奴いるのかってぐらいの天敵だけど正気かお前」
「正気だからじゃ。たとえ天敵であろうが受けた恩には恩で返す。それが我がウロボロス家の家訓。情けは人の為ならず、身喰らう蛇とは螺旋の象徴。恩に恩が連なり合い、やがてそれは幸福の螺旋となる……人はそれを幸せスパイラルと呼ぶのじゃ」
「魔王が幸せを語ってどうするんだよ」
「魔王が幸せを語って何が悪いんじゃ?」
「まぁ確かに不幸を振り撒かれるよりゃマシだけどよ……はぁ。まあいいや、で?なんでお前はドラゴンに食われかけてたんだ?」
「ふむ、それなんじゃが、其方たちは妾たち魔王の力は知っておるか?」
「えっと、昔話でしか知らないけれど、確か魔物の使役と召喚だっけ?」
「そうじゃ、【魔王特権】と呼ばれるスキルでな、その力で妾たち魔王は魔物を召喚し使役するのじゃ……しかしどうにも復活をなしてから魔物の召喚がうまくいかなくてなぁ、使役どころか襲われる始末。だからああして洞窟の中で密かに練習をしていたのだが」
「……操るどころか、失敗して餌になりかけていたと」
「その通りじゃ。恐らくじゃが妾の封印中に妾の力の一部を奪った不埒物がいるのだろう……この非力で不完全な姿からして魔力以外の大半を持っていかれたと考えてよいだろう。魔法の知識は残っているがロクな魔法も使うことができぬ……かろうじて召喚魔法は使えるが、使役ができぬせいであの様じゃ」
やれやれとため息を漏らす魔王に、僕はふと浮かんだ疑問を口にする。
「あれちょっと待って? ということは、北部から進行してきてる魔王っていうのは……君のことじゃないの?」
「人違いじゃ……というよりは妾の名を騙った紛い物であろうな。十中八九そのものが妾の力を奪った張本人と見て良いだろう。本当いい迷惑じゃよ。せめて一人で生活できるぐらいの力を残しておいてくれればこんなひもじい思いをしなくて済んだのに……」
ぶつぶつと語る魔王、口振りは気丈だが言葉にはどこか悲壮感が漂っている。
「っつーと、お前自体はなんも悪さはしてねーんだな?」
「まぁ良いか悪いかと言われれば、人間からしてみれば極悪人であろうな。我が同胞の住処を荒らす人間どもと戦争をしたこともあるし、それが原因で勇者に封印もされた……じゃが、断じて言うが理由なき殺生をした事は一度もないし、ましてや恩人に手をかけるなどあろうはずがない、妾意外と名君なんじゃぞ?」
むふーと自慢げに胸をはる魔王に、毒気を抜かれてフレンと顔を見合わせる。
「って言ってるがどうするんだユウ? 信じるか?」
「うーん、まぁ嘘を言ってるようにも見えないから……いいんじゃないかな? 悪さしないって言ってるんだし、それよりも魔王の名前を騙ってる奴の方を何とかしないと」
「そうだなぁ……なぁペチャパイ」
「なんじゃ金髪……」
「お前の力を奪った奴に心当たりってねえのか? 昔の知り合いだったり、部下だったり」
「さぁなぁ皆目見当もつかぬわ。そも、他人のスキルを奪い取って自分のものにする能力など聞いたこともないし」
残念でしたと肩を竦める魔王。
どうやら彼女から聞き出せる情報はこれだけのようだ。
結局、現在進軍を続ける魔王の正体までは掴めなかったが……魔王の力を奪い取った……という情報を得られただけでも大きな進展だろう。
「なんだよ、魔王のくせにつっかえねーな」
「ふんじゃ、封印中の事など妾の預かりしるところではないわ。お前もなんなら封印されてみれば良いのじゃ金髪、300年程【いしのなか】を経験すればそんな戯言抜かせられまいて」
「フレンを封印か……それいいね。今度姉ちゃんに頼んでみようかな」
「ユウさんお願いだから「わーこのお菓子おいしぃ、今度うちでも作ってもらおーぅ‼︎」みたいな感覚で物騒な事言わないでもらえませんかねぇ!? お前の姉貴なら平気でやるからな? 洒落にならないんだからなまじで!」
「ははは、安心しなってフレン……姉ちゃんが帰ってくるのは三日後なんだよ? まだ出かけて一日目なのに……」
「ただいまー‼︎」
「そうそう、ただいまーなんて声が聞こえる訳が……ッ姉ちゃん‼︎‼︎?」
玄関を開ける音とともに響く姉ちゃんの声。
見れば、そこには大漁の荷物を背負った姉ちゃんがいた。
なぜかその体には、所々血がついていた。
家に戻り、僕はお手製の料理を少女に振る舞うと、魔王は掻き込むように食事を頬張る。
言葉なく黙々と食事をとるその瞳にはうっすらと涙が浮かんでおり、彼女にとってこれが久しぶりの食事であったことを教えてくれる。
「やっぱりお腹空いてたんだね」
「うむ、うむ!……もうかれこれ一週間、水しかのんでおらなんだからな」
「それは大変だったね……おかわりあるから、遠慮しないでね」
「うむ‼︎」
嬉しそうに声を弾ませる魔王。
そんな彼女に僕は微笑むと、ミートパイを切り分けて魔王とついでにフレンの皿に乗せてあげる。
「……これもお前が作ったのか?」
ミートパイの出来上がりに関心をするようにフレンはそう呟いてパイにかぶりつく。
「まぁね、お味はどう?」
「うまいよ……でも意外だな、お前が料理作れるなんて」
「ブレイブハザード前、作った料理を美味しいって姉ちゃんに褒められたことがあって、今でもこっそり練習してるんだよね……今はやらせて貰えないから、誰かに振る舞うのは初めてで少し不安だったんだけれど、喜んでもらえて良かった」
「……災害前ねぇ。確か災害でお前が死にかけてから、お前の姉貴はあんな過保護になったんだっけ?」
「そうだね、今では想像できないと思うけれど、昔の姉ちゃんは相当やんちゃだったんだよ? 真冬の川に突き飛ばされたこともあったし、屋根から突き飛ばされて骨折したこともあったっけ?」
「本当にえらい変わり様なんだな、まるで別人じゃねえか」
「でしょ?」
驚いたようなフレンの言葉に僕は苦笑を漏らすが……きゅっと胸を締め付けるような感覚を覚える。
時々思うのだ。
もし僕が死にかけなければ、姉ちゃんはもっと自分のために生きられたんじゃないだろうかと。
僕の存在が姉ちゃんから自由を奪ってしまっているのではないかと。
「……ユウ? どうした?」
ふと、訝しげな様子のフレンに声をかけられ僕は首を振る。
「あぁ、ごめん。ちょっとボーッとしちゃってた」
「おいおい大丈夫か? ドラゴンに何かされたか?」
「平気平気……ごめん、それで、なんだっけ?」
「だから、こいつをこれからどうするんだって話、仮にも魔王だろこいつは?」
「そうだけど、別に何か悪さをしてるわけではないんだし、お腹も減ってるみたいだったからつい可哀想で……何か力になってあげられないかなって思って」
「力って?」
「仕事探しとか、魔法を使えるようになる方法だったりだとか色々だよ、魔王とは言えあんなにボロボロで痩せ細ってる人を放っておけないでしょ? 勇者として」
「やれやれ、まぁお前のお人好しに関してとやかくいうつもりはないんだけどよ……お前と違ってアンネの奴は融通が効かねえんだ。魔王なんて見つかったら賢者パワーで一瞬で消炭に変えられるか首が飛ぶかのどっちかだぞ……」
フレンの言葉に、僕は少し想像をして身震いをする。
確かにどんな説明をしても「魔王は魔王なんでしょ? 大丈夫、お姉ちゃんに任せて!」なんて言って彼女が血祭りにあげられる未来が見えた。
「……ま、まぁ。姉ちゃんが帰ってくるのは三日後だし、それだけ時間があればなんとかなるんじゃないかなぁ?」
「考えなしだったのかよ……お前も姉貴のこと笑えねえぞ?」
「うぐ、返す言葉もないね……でも仕事だったらフレンが紹介してあげられるだろ? 情報屋っていうのは仲介業も兼ねてるんだから」
「……まぁ、それぐらいだったら別に構いやしねえけど、結局他人任せじゃねえかお前」
「たはは……たしかにそうか。まぁでも、ゲスだけどフレンは根っこのところで僕以上に甘い所あるからついつい頼っちゃうんでげすよ」
「あれ? 今褒められたんだよな俺、ゲスって二回言われたけど褒められたんだよね?」
フレンの問いに僕は苦笑を漏らして無視をする。
と。
「ご馳走様でしたなのじゃ‼︎」
そんなやりとりをしていると、魔王の弾んだ声が部屋に響いた。
「お粗末様でした。お口にあったかな?」
「うむ! 妾こんなに人に優しくされたのは生まれて初めてじゃ。ユウ、お前良い奴だな、勇者だけど」
「魔王が餌付けされてりゃせわねえな」
「そしてお前は嫌な奴じゃ金髪」
「けっ、お褒めに預かり光栄ですね魔王様」
悪態をつくフレンを魔王は睨んで口を尖らせる。
どうにも二人は反りが合わないらしく、二人の視線の間でバチリと火花が舞うような錯覚が見える。
「そういえば、どうして君はダンジョンの中で魔物に襲われてたの? 魔王なのに」
「むっ……むー、妾の弱みを晒すことになる故言いにくいのだが……まぁ、お前は良い奴だし話しても良いか。 ご飯もくれたし」
「むしろこいつ以外に話しちゃいけない奴いるのかってぐらいの天敵だけど正気かお前」
「正気だからじゃ。たとえ天敵であろうが受けた恩には恩で返す。それが我がウロボロス家の家訓。情けは人の為ならず、身喰らう蛇とは螺旋の象徴。恩に恩が連なり合い、やがてそれは幸福の螺旋となる……人はそれを幸せスパイラルと呼ぶのじゃ」
「魔王が幸せを語ってどうするんだよ」
「魔王が幸せを語って何が悪いんじゃ?」
「まぁ確かに不幸を振り撒かれるよりゃマシだけどよ……はぁ。まあいいや、で?なんでお前はドラゴンに食われかけてたんだ?」
「ふむ、それなんじゃが、其方たちは妾たち魔王の力は知っておるか?」
「えっと、昔話でしか知らないけれど、確か魔物の使役と召喚だっけ?」
「そうじゃ、【魔王特権】と呼ばれるスキルでな、その力で妾たち魔王は魔物を召喚し使役するのじゃ……しかしどうにも復活をなしてから魔物の召喚がうまくいかなくてなぁ、使役どころか襲われる始末。だからああして洞窟の中で密かに練習をしていたのだが」
「……操るどころか、失敗して餌になりかけていたと」
「その通りじゃ。恐らくじゃが妾の封印中に妾の力の一部を奪った不埒物がいるのだろう……この非力で不完全な姿からして魔力以外の大半を持っていかれたと考えてよいだろう。魔法の知識は残っているがロクな魔法も使うことができぬ……かろうじて召喚魔法は使えるが、使役ができぬせいであの様じゃ」
やれやれとため息を漏らす魔王に、僕はふと浮かんだ疑問を口にする。
「あれちょっと待って? ということは、北部から進行してきてる魔王っていうのは……君のことじゃないの?」
「人違いじゃ……というよりは妾の名を騙った紛い物であろうな。十中八九そのものが妾の力を奪った張本人と見て良いだろう。本当いい迷惑じゃよ。せめて一人で生活できるぐらいの力を残しておいてくれればこんなひもじい思いをしなくて済んだのに……」
ぶつぶつと語る魔王、口振りは気丈だが言葉にはどこか悲壮感が漂っている。
「っつーと、お前自体はなんも悪さはしてねーんだな?」
「まぁ良いか悪いかと言われれば、人間からしてみれば極悪人であろうな。我が同胞の住処を荒らす人間どもと戦争をしたこともあるし、それが原因で勇者に封印もされた……じゃが、断じて言うが理由なき殺生をした事は一度もないし、ましてや恩人に手をかけるなどあろうはずがない、妾意外と名君なんじゃぞ?」
むふーと自慢げに胸をはる魔王に、毒気を抜かれてフレンと顔を見合わせる。
「って言ってるがどうするんだユウ? 信じるか?」
「うーん、まぁ嘘を言ってるようにも見えないから……いいんじゃないかな? 悪さしないって言ってるんだし、それよりも魔王の名前を騙ってる奴の方を何とかしないと」
「そうだなぁ……なぁペチャパイ」
「なんじゃ金髪……」
「お前の力を奪った奴に心当たりってねえのか? 昔の知り合いだったり、部下だったり」
「さぁなぁ皆目見当もつかぬわ。そも、他人のスキルを奪い取って自分のものにする能力など聞いたこともないし」
残念でしたと肩を竦める魔王。
どうやら彼女から聞き出せる情報はこれだけのようだ。
結局、現在進軍を続ける魔王の正体までは掴めなかったが……魔王の力を奪い取った……という情報を得られただけでも大きな進展だろう。
「なんだよ、魔王のくせにつっかえねーな」
「ふんじゃ、封印中の事など妾の預かりしるところではないわ。お前もなんなら封印されてみれば良いのじゃ金髪、300年程【いしのなか】を経験すればそんな戯言抜かせられまいて」
「フレンを封印か……それいいね。今度姉ちゃんに頼んでみようかな」
「ユウさんお願いだから「わーこのお菓子おいしぃ、今度うちでも作ってもらおーぅ‼︎」みたいな感覚で物騒な事言わないでもらえませんかねぇ!? お前の姉貴なら平気でやるからな? 洒落にならないんだからなまじで!」
「ははは、安心しなってフレン……姉ちゃんが帰ってくるのは三日後なんだよ? まだ出かけて一日目なのに……」
「ただいまー‼︎」
「そうそう、ただいまーなんて声が聞こえる訳が……ッ姉ちゃん‼︎‼︎?」
玄関を開ける音とともに響く姉ちゃんの声。
見れば、そこには大漁の荷物を背負った姉ちゃんがいた。
なぜかその体には、所々血がついていた。
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