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仕官

観音寺合戦

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安治は、槍を持つ手に汗が滲んでくるのを感じていた。ふと、隣に目をやると、父安明が真一文字に口を結び、南に見える山を睨んでいた。
 「安治、怖いか?」
 山を見据えたまま、安明が声をかけてきた。安治は、咄嗟に答えられなかった。脇の下からも汗が垂れてくるのを感じている。だが、怖いわけではなかった。己の進むべき道が、この戦をきっかけに大きく変わるかもしれない。そんな期待と興奮に包まれていた。だが、傍から見れば、恐怖でこ顔が強張っていると思われたのかもしれない。そんな安治を慮って、安明は声をかけてきたのだろう。
 「此度の六角勢との戦、そなたにとっては初陣。不安もあろう。じゃがこの戦、脇坂家にとっても出世の糸口となりうるもの。」
 安治に視線を動かすことなく、安明は続けた。
 「我らが主、備前守様は、これまで六角家の下風に立たされておった。備前守様のお立場がそうであらされる以上、我らも高望みはできぬ。ところがじゃ、尾張の織田上総介殿が、尾張を統一するや否や、瞬く間に美濃も席巻し、上洛を目指されるまでになった。上洛の途上、目障りは六角家。上総介殿は、戦を避けるべく、織田家の傘下に入る様、六角家と交渉したが、敢え無く決裂。六角家は、徹底抗戦の構えを見せた。六角家と戦火を交えることになる以上、上総介殿としては、後顧の憂いは絶っておきたい。そこで、上総介殿は、浅井家との同盟に踏み切った。備前守様が上総介殿の妹君を北の方として迎えられたのはそういうことじゃ。もちろん、この同盟、浅井家にとっても願ったりかなったりじゃ。これまでの六角家への恨みを一挙に晴らせるのじゃからのう。この戦で六角家を駆逐できれば、浅井家が近江の支配者となれる。そうなれば、我らも働きに応じて、浅井家中で重きをなすこともできよう。この戦を、脇坂家の飛躍の一歩とするのじゃ。」
 山を見据えたままの父は、幾分高揚しているように見えた。
 父上も、きっと手に汗が滲んでいることだろう。そう思うと、肩の力が少し抜けたような心地がした。
 そこへ、伝令の侍がや安明を呼びにやってきた。安治に暫し待つよう言い含め、安明は持ち場を離れていった。
 四半刻ほど経ったころ、安明が興奮した面持ちで戻ってきた。
 「織田殿配下、木下藤吉郎殿が、和田山、箕作を落城せしめた由。これより、観音寺城攻め入る。狙うは、六角承禎の首ぞ、続け!」
 安明は言うや否や、郎党を引き連れ駆け出していった。安治も、急いで後を追った。
 観音寺城への攻撃は、城の南北から行うことになる。木下藤吉郎が落とした和田山城、箕作城は観音寺城の南に位置し、観音寺城防衛の要であった。この要が落ちたのである。安明ならずとも、興奮せぬ者はいないであろう。まして、浅井方は観音寺城の北側に陣取っていた。丁度、観音寺城を南北から挟み撃ちにした格好である。六角承禎は、いまや袋の鼠。六角承禎の首を狙うには、絶好の機会である。
 観音寺城の北側には、大きな曲輪はない。しかしながら、尾根が天然の土塁となり、行く手を阻む。木々も生い茂っているため、伏兵が身を隠すにはもってこいの場所でもある。こちらが優勢とはいえ、このようなところで待ち伏せでもされ、一斉に矢でも射かけられようものなら、ひとたまりもない。
 もっとも、案に相違して、敵らしい敵を見かけることもなく、軍は進んでいた。遠くに堂舎が見えてきたころ、浅井本陣からの伝令と思しき侍が、安明のもとに駆け寄ってきた。
 「我が浅井軍は、観音正寺に本陣を置く。諸将は、観音正寺付近で待機せよ。」
 侍は下知を言い渡して、再び走り去っていった。
 堂舎が間近に迫ってくるころ、既に夥しい軍勢が屯していた。六角承禎の首を取らんと、兵卒の熱気で満ちていた。
 「今更、境内に入っても身動きが取れん。山道沿いで下知を待つこととする。」
 安明は、観音寺城の南西で待機することとした。そこへ、再び伝令が大声で叫びながら、走り寄ってきた。
 「六角承禎、観音寺城から既に退去した由!各々方、至急、探索に励め!」
 「何!?城を打ち捨てて逃げ出したじゃと!ふん、腰抜けめ。安治、追うぞ!」
 安明は、一気に山道を下っていった。
 これで、六角承禎に逃げられては、ただの山登りではないか…。安治は、肩透かしを食らった気分であった。六角承禎であれば、このような事態も想定し、観音寺城周辺のけもの道は、把握していよう。闇雲に追ったところで、捕まえられるわけない。安治は、半ば諦めて安明の後を追った。
 ところが、である。安明は、迷うそぶりを見せることなく、先を進んでいる。まるで、六角承禎の逃げる先を知っているようだ。
 「父上!六角承禎の行く先が分かっているのですか!?」
 安治は、たまらず父に問いかけた。安明は、振り替えることなく答えた。
 「観音寺城を捨てて落ち延びるとすれば、奴は甲賀に向かうしかあるまい。そして、箕作城が落ちた今、そこから甲賀へは向かえぬ。であれば、ひとまず瓢箪山に向かって、そこから甲賀に向かう他ない。観音寺城から瓢箪山に向かうのであれば、観音寺城の北から向かうことになろう。我らは、観音寺城の南西から山道沿いに瓢箪山に向かう。」
 なるほど、先回りというわけか。槍を持つ手にも自然力が入る。安治は、父に遅れまいと懸命に走った。
 突然、木々がざわめいた。
 「安治、敵襲ぞ!」
 安明が叫ぶや否や、木々の木々の間から山伏に扮した者どもが、白刃を手に襲い掛かってきた。
 「このようなところに伏兵など。六角め、手の込んだことを!」
 安明は、手に持った槍で敵兵を薙ぎ払った。安治は、父と背中合わせになり、父目掛けて突進してくる敵兵に槍を突き出していた。
 敵は刀で応戦してくるため、縦横無尽に駆け寄ってくる。対するこちらは槍。敵に間合いを詰められることはない代わりに、仕留めることもできない。一進一退が続く。
 「ここは、任せろ!安治、お主は、敵兵をかいくぐり、六角を追え!雑兵に構っている暇はない!」
 安明は、敵兵に突っ込んでいった。囮となって敵を引き付け、その間に安治を先に行かせようとした。二度、三度槍を払ったところ、一本の矢が、安明の左肩に刺さった。
 「父上!」
 安治は、父のもとに駆け寄ろうとした。
 「先を行け、安治!矢傷は深くない。こやつらを片付けたら、わしも後を追う。」
 安明は、左肩の矢を引き抜き、槍を手に取り、二度、三度槍を払った。怯んだ敵に追い打ちをかけようと一歩踏み出した途端、突然。安明は膝から崩れ落ちた。手にしていた槍も地に落ちた。たまらず安治は、父の元に駆け寄った。
 安明の手足は、ぴくぴくと痙攣していた。安治を認めると、何事か叫ぼうとしているように見えた。だが、声になっていない。それでも、安明は懸命に何かを伝えようとしていた。
 …追え。痙攣する父の口元が動いた。だが、このような父を残して行けるわけがない。気づけば、周りから敵兵の影も消えていた。たった一人、僧体の音が、間合いを図りながらこちらを見ていた。半弓を手にしていた。傍らの父は、痙攣が収まってくるにつれ、顔色が青白くなってきていた。
 「もはや、助からぬ。」
 僧体の男が、静かにいった。決して大きな声を出したわけではない。だが、不思議と届く声だった。それに、殺意も感じられない。なぜ、わしを放っておくのか。それもまた不思議だった。
 「何故、襲ってこない。今、そう考えているのだろう。」
 安治は、どきりとした。心を見透かされたこともあるが、それ以上に、その余裕綽々とした態度に威圧されていた。父は、完全に動かなくなっていた。目の前の男は、父の仇だ。せめて、父の無念は晴らしたい。ところが、槍を持つ手に力が入らない。
 「ふん。拙者を討ち取ろうというわけか。無益なことよ。今のお主では、拙者の足元にも及ばぬ。そのようなひよっこ、討ち取ったとて、それこそ無益。なにより、拙者の任務は、六角様を無事に逃がすこと。敵の命を奪うことではない。」
 安治があたりを見回すと、脇坂家の郎党どもは一人も見当たらなかった。目の前の男の手下に討ち取られたのであろうか?安治はたった一人で男と向かいあっていた。
 「取り乱したりせず、かといって無闇に槍を突いてくるわけでもない。ひよっことはいえ、中々見どころはある。案ずるな、無駄に歯向かってこなければ、危害は加えぬ。お主の家の子らも蹴散らしただけで、命まではまでは取っておらぬ。申したであろう。拙者の任務は、六角様を安全に逃がすこと。時を稼げればそれでよいのじゃ。こうして、お主に付き合って喋っているのも、偏にそのためよ。…さて、そろそろよいであろう。お主もさっさと去るがよい。六角様に追いつくことは、出来まいて。」
 安治は、再び怒りがこみあげてきた。殺意もなく淡々と語りかけるこの男の口調が、人を人とも思わぬように聞こえてきたのだった。
 「脇坂の小倅。拾った命は、大切にせよ。拙者は、無益な殺生はせぬと申したが、六角様の邪魔になる者には、容赦はせぬ。」
 脇坂の小倅だと!?何故、この男はわしらのことを知っておるのか。この男は、時を稼ぐためにここにいる。であれば、こちらの問いかけにも応じるはずだ。どのみち、この男を差し置いて六角は追えぬ。安治は、この男の素性を暴いてやろうと思った。
 「無益な殺生はしないと申したではないか。ならば、何故、わしの父を殺めた?そもそも、お主は何者ぞ?」
 「問いかけは、一つずつにすることだ。」
 案の定、男は話に乗ってきた。
 「脇坂安明。浅井家中において、決して高い身分ではないが、虎視眈々と機会を伺う抜け目のない男であった。気概だけでなく、相応の器量も持ち合わせておった。六角様を追ってこの道をたど辿ってきただけでも、それは分かる。六角様に追いつくには、この道を辿るしかない。故に、拙者達はここに潜んでおった。正直、徒労になると思うておったわ。並みの侍であれば、この道は選ぶはずないからのう。ところがお主の父は、迷うことなくこの道を選んだ。槍さばきも只者ではない。下手をすると、こちらの手勢がやられかねぬ。こちらが犠牲を払うことなく、お主の父一人を仕留めるには、これしか手段はない。できれば、これは使いたくなかったのじゃが、これを拙者に使わせたことをもってしても、お主の父は並々ならぬ男よ。」
 言いながら男は、背中にかけてあった矢筒から一本の矢を取り出した。みたところ、何の変哲もない矢である。心なしか矢尻が小さく見えた。
 「毒矢か!?」安治は思わず声を上げた。安治の見たところ、矢傷は確かに深くなかった。容易に抜け、出血も多くなかった。その後、父は痙攣し、ついには動かくなくなった。矢尻に塗られた毒のせいだったのだ。とはいえ、侍は毒矢は用いない。いや、用いることができない。毒矢の作り方を知らぬからだ。ところが、目の前の男は毒矢を用いた。ということは…。
 「お主、忍びの者か!?」
 安治は、問いかけた。この男が忍びであればこそ、我ら父子のことも知っていたのだ。もちろん、この男のいうとおり、今の安治では勝てないであろう。むしろ、安治の命を狙っていないことをこそ、僥倖と考えるべきであろう。とはいえ、父の仇であることに変わりはない。この男の素性を知り、いつの日か父の無念を晴らさねばなるまい。安治の決意は固まった。
 「お主には、やはり見どころがある。ひとかどの部将となるやも知れぬ。お主の力量に敬意を表して教えてやろう。拙者は、園城寺光浄院の住持、暹慶(せんけい)と申す。お主の察しのとおり、出自は甲賀の山岡家じゃ。勢多城主の山岡美作守は存じておろう。拙者の父じゃ。もっとも、山岡家の一族として働いているわけではない。拙者は、山岡家の惣領ではないからのう。あくまで、この身をどうすれば最も活かせるかに腐心しておる。故に住持になった。そして、今は六角様を逃がすことが使命と心得ているからこそ、こうしてここにおるのじゃ。お主のことじゃ、いつか父の無念を晴らしたいと思うておるのであろう。殊勝な心掛けじゃが、仮に拙者を討ったとしても、父は戻ってはこぬ。それに、拙者を討った後のお主はどうなる?それは、よく考えることじゃ。…そうじゃ、拙者も僧の端くれ。乱世のならい故、犠牲は是非も無い。さりながら、お主の無念は察するに余りある。せめて、お主の父の菩提は弔って進ぜよう」
 言うや否や、男は踵を返して疾風のように走り去った。気づけば男の手下どもの気配も消えていた。傍らにあった父の骸も忽然と消えていた。残されたのは安治と父が手にしていた槍だけだった。
 安治は、夢を見ているような気分だった。父を葬った男は、何故か安治を生かし、あろうことか手にかけた父を弔った。一体、あの男は何だったのであろうか?それこそ、父が生きていれば尋ねることもできたであろうが、それも叶わない。安治は父の槍を握りしめた。ふと見ると、逆輪と胴金の間に「隣花院 」と書かれていた。安治は、はっとした。あの男が、父の槍を位牌に見立て、戒名として書いたのだ。
 あの男は、何故、そこまでわしに目をかけるのであろうか?安治には、見当もつかなかった。とはいえ、いつまでも迷っていることは安治にはできなかった。安治は、今や脇坂家の惣領である。脇坂家の命運は、安治が握っているのだ。あの男の申すとおり、これからのこと、よくよく考えねばならぬ。安治は、覚悟を決めて、山を下っていった。
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