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第四章 ワラキア公国の未来が決まる日
第五十四話 狂乱のラドゥ
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ヴラド公の言葉にカチンと来たテオフィルは、剣を再び構えた。
「も、もうこれで終いだーーーーーっっ! バサラブ様がいおうがこのままヴラド、あんたを殺してやる!」
ヤバい! バサラブに剣を突きつけているグリゴアは思った。
しかし横にいるヴラド公は違った。
「面白い! 来い!」
ヴラド公は剣を構えたのである。
肩に矢が刺さり、身体中から血を出しているボロボロの状態なのに。
しかもグリゴアの前に手を差し出して『手助け無用』と合図した。
「どりゃああああああああああ!」
唸り声を出しながら向かって来るテオフィルを、ヴラド公はそのボロボロの身体で華麗に避けた。
そして同時に両手で構えていた剣をテオフィルの背中向かって振り下ろした。
剣はそのままテオフィルの背骨を砕きながら突き進み、腹を貫通した。
「ぐわああああああああああああ~!」
テオフィルは剣が刺さったまま、馬車に向かって崩れるように倒れた。
貫かれた腹からは血がボタボタと落ちている。
それを少し寂しい顔でヴラド公は見つめた。
「テオフィル。貴様は所詮、騎士ではない。貴族なのだよ。サシで勝負して、この私に勝てるとでも本気で思っていたのか?」
「が、がああああああ……」
テオフィルは口からも血をボタボタと流している。
声も出せないほどの致命傷を負ったようだ。
「悪いがもう貴様は助からない。残念だ」
ヴラド公は凛として立っている。
テオフィルはそんなヴラド公を見て、涙を流している。
この勝負は周りの敵兵の士気を落とすのに充分だった。
傷だらけでボロボロのはずのヴラド公が凛として立ち、周りの兵士を睨みつける。
敵兵は、自分がこの男に勝てるのか?
そういう疑問が頭に浮かび、むやみに斬りかかるどころか、ジリジリと後退を始めた。
その時である。敵軍の後方から「ぐわあ!」「ぎゃあ!」と叫び声が聞こえ始めた。
オクタヴィアンとテスラは、すぐにそれが何が起こっているのか理解した。
そしてヴラド公とグリゴアも、これがただ事ではないと身構えた。
「な、何? オロロックちゃん?」
グリゴアに盾にされているバサラブも、ついオクタヴィアンに頼って聞いた。
「あ~……れ~は……ラドゥだと思います」
「え? ラドゥ?」
すると怒りに満ちた雄叫びが聞こえてきた。
「テスラああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
ラドゥは敵、味方関係なく人間を斬りまくり、肉片をぶっ飛ばしながらこちらへ向かってくる。
「ふ~む……仕方ない。私が相手をするか」
テスラはため息をついた。
するとドドドドドドという音とともに、ラドゥがすぐ目の前の兵士も真っ二つにして現れた。
すでにその顔は、人間のものではない。
それに身体も二倍ぐらいに膨らんでいるように見える。
これにはヴラド公とグリゴア、バサラブの三人はかなり驚いた。
「テスラあああああ~~~! よくも、よくも僕のかわいい子猫ちゃん達を~~~~~っっ!」
テスラは何の事か分からず、キョトンとした。
「テスラ。あの取り巻きの事です」
オクタヴィアンがテスラの横に移動して、コソッと耳打ちした。
「ああ~。それはすまんかったな。しかしな。私の観察対象を殺しにかかってきた者を放っておくほど、私は優しくないんでな」
テスラは真っ向、勝負をするつもりのようだ。
「キサマだけは許さん! 許さんからなあああああ~っっ!」
ラドゥは鼻息を荒くし、周りを見渡した。
「何だ? キサマら全員集合してるじゃないか。だったら今すぐ全員天国に送ってやるわあ~!」
見境をなくしたラドゥはまずは目の前にいるテスラめがけて突っ込んできた。
テスラはフワッと空中に舞ったが、ラドゥはテスラを追わずに、ヴラド公とグリゴア、バサラブの三人にめがけて突っ込んできた。
ヤバい!
オクタヴィアンは一瞬にして、ラドゥと三人の間に移動した。
するとラドゥの鋭い指がオクタヴィアンめがけて振りかざされた。
オクタヴィアンは慌ててその指を自分の鋭い指で受け止める。
しかしラドゥのパワーは凄まじく、オクタヴィアンは弾き飛ばされた。
そしてラドゥはヴラド公めがけて突っ込んできた。
しかしヴラド公の身体から何やら嫌な臭いを感じ、すぐさま引き下がった。
「……ヴラド……そんな小細工をしやがって……身体中にニンニクを巻いているな?」
ヴラド公は鎧の隙間を少し見せた。
「怒り狂っている割には冷静じゃないか」
そう言うとヴラド公は胸の中から十字架のネックレスを表に出した。
それを見たラドゥはさらに後退した。
「十字架……あれだけ人を殺したキサマが十字架……神の何も信じていないくせに!」
するとヴラド公の横にいたグリゴアもバサラブを離して胸から十字架を出した。
「あ、ああ~、オレ様ちゃんをた、助けてくれえ~っっ!」
一人何も身につけていないバサラブは、神にもすがる気持ちでグリゴアの後ろに引っ込んだ。
それを見たラドゥは思わず笑った。
「ハハハハハ! バサラブ殿。何で撃つはずの敵の大将に助けを求めているんですか? 所詮は小さい人間ですね」
「オ、オ、オレ様ちゃんはねえ! この国の公になりたいんであってねえ! ラドゥちゃんみたいに見境なく人を殺したい訳じゃないの!」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ! まあキサマは人間だからね。僕からしたら、キサマなんぞ、クソ不味そうなパンにしか見えないよ。でもこれだけパンが揃っているんだ! 全部食べてあげるよ!」
「おい、ラドゥ。私の事を忘れているだろ?」
その言葉と共に、森の枝を折って作った杭が何本もラドゥめがけて降ってきた。
ラドゥはそんな物はお見通しとばかりに全て避ける。
「テスラ! キサマも姑息な手を使う。そんな小細工は効かん! 返り討ちにしてやる!」
頭に血が上っている状態のラドゥは、その木の杭を一本手に持つと、空中高く浮いているテスラに向かって行った。
テスラは向かってくるラドゥから逃げるようにかなりのスピードで森の中に入った。
それをすごいスピードでラドゥは追い、テスラを捕まえるほどの距離まで迫った。
その時、テスラはいきなり霧に姿を変え、消え失せた。
するとそこには木の枝が何本も茂っていた!
すごいスピードのラドゥは、霧に姿を変える事も出来ずにすごいスピードで木の茂み突っ込んだ!
無数の細い枝は葉を落としながら身体に食い込み皮膚を突き破り、肉に刺さり血を吹き出させ、ラドゥは血みどろになり身動きが取れなくなった。
あまりの突然な出来事に、ラドゥはパニックになり、手に持っていた木の杭を落とした。
「く、くそがあああああああああああっっ!」
ラドゥは慌ててその枝を抜き、脱出をするのに精一杯になった。
そして何とかラドゥが木の枝から脱出できたその瞬間に、ラドゥが木の間から落とした木の杭を掴んだオクタヴィアンがラドゥめがけて突っ込んできた!
オクタヴィアンの差し出した木の杭は、思いっきり胸に突き刺さった!
「な、な、なっっ!」
「ラドゥ! これでも食らえーーーーーっっ!」
ラドゥはオクタヴィアンに押され、空中高く舞い上がった。
「ば、ばかなっっ……!」
ラドゥは吸血鬼という存在を熟知しているテスラと、戦い慣れを始めていたオクタヴィアンを甘くみていた。
「も、もうこれで終いだーーーーーっっ! バサラブ様がいおうがこのままヴラド、あんたを殺してやる!」
ヤバい! バサラブに剣を突きつけているグリゴアは思った。
しかし横にいるヴラド公は違った。
「面白い! 来い!」
ヴラド公は剣を構えたのである。
肩に矢が刺さり、身体中から血を出しているボロボロの状態なのに。
しかもグリゴアの前に手を差し出して『手助け無用』と合図した。
「どりゃああああああああああ!」
唸り声を出しながら向かって来るテオフィルを、ヴラド公はそのボロボロの身体で華麗に避けた。
そして同時に両手で構えていた剣をテオフィルの背中向かって振り下ろした。
剣はそのままテオフィルの背骨を砕きながら突き進み、腹を貫通した。
「ぐわああああああああああああ~!」
テオフィルは剣が刺さったまま、馬車に向かって崩れるように倒れた。
貫かれた腹からは血がボタボタと落ちている。
それを少し寂しい顔でヴラド公は見つめた。
「テオフィル。貴様は所詮、騎士ではない。貴族なのだよ。サシで勝負して、この私に勝てるとでも本気で思っていたのか?」
「が、がああああああ……」
テオフィルは口からも血をボタボタと流している。
声も出せないほどの致命傷を負ったようだ。
「悪いがもう貴様は助からない。残念だ」
ヴラド公は凛として立っている。
テオフィルはそんなヴラド公を見て、涙を流している。
この勝負は周りの敵兵の士気を落とすのに充分だった。
傷だらけでボロボロのはずのヴラド公が凛として立ち、周りの兵士を睨みつける。
敵兵は、自分がこの男に勝てるのか?
そういう疑問が頭に浮かび、むやみに斬りかかるどころか、ジリジリと後退を始めた。
その時である。敵軍の後方から「ぐわあ!」「ぎゃあ!」と叫び声が聞こえ始めた。
オクタヴィアンとテスラは、すぐにそれが何が起こっているのか理解した。
そしてヴラド公とグリゴアも、これがただ事ではないと身構えた。
「な、何? オロロックちゃん?」
グリゴアに盾にされているバサラブも、ついオクタヴィアンに頼って聞いた。
「あ~……れ~は……ラドゥだと思います」
「え? ラドゥ?」
すると怒りに満ちた雄叫びが聞こえてきた。
「テスラああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
ラドゥは敵、味方関係なく人間を斬りまくり、肉片をぶっ飛ばしながらこちらへ向かってくる。
「ふ~む……仕方ない。私が相手をするか」
テスラはため息をついた。
するとドドドドドドという音とともに、ラドゥがすぐ目の前の兵士も真っ二つにして現れた。
すでにその顔は、人間のものではない。
それに身体も二倍ぐらいに膨らんでいるように見える。
これにはヴラド公とグリゴア、バサラブの三人はかなり驚いた。
「テスラあああああ~~~! よくも、よくも僕のかわいい子猫ちゃん達を~~~~~っっ!」
テスラは何の事か分からず、キョトンとした。
「テスラ。あの取り巻きの事です」
オクタヴィアンがテスラの横に移動して、コソッと耳打ちした。
「ああ~。それはすまんかったな。しかしな。私の観察対象を殺しにかかってきた者を放っておくほど、私は優しくないんでな」
テスラは真っ向、勝負をするつもりのようだ。
「キサマだけは許さん! 許さんからなあああああ~っっ!」
ラドゥは鼻息を荒くし、周りを見渡した。
「何だ? キサマら全員集合してるじゃないか。だったら今すぐ全員天国に送ってやるわあ~!」
見境をなくしたラドゥはまずは目の前にいるテスラめがけて突っ込んできた。
テスラはフワッと空中に舞ったが、ラドゥはテスラを追わずに、ヴラド公とグリゴア、バサラブの三人にめがけて突っ込んできた。
ヤバい!
オクタヴィアンは一瞬にして、ラドゥと三人の間に移動した。
するとラドゥの鋭い指がオクタヴィアンめがけて振りかざされた。
オクタヴィアンは慌ててその指を自分の鋭い指で受け止める。
しかしラドゥのパワーは凄まじく、オクタヴィアンは弾き飛ばされた。
そしてラドゥはヴラド公めがけて突っ込んできた。
しかしヴラド公の身体から何やら嫌な臭いを感じ、すぐさま引き下がった。
「……ヴラド……そんな小細工をしやがって……身体中にニンニクを巻いているな?」
ヴラド公は鎧の隙間を少し見せた。
「怒り狂っている割には冷静じゃないか」
そう言うとヴラド公は胸の中から十字架のネックレスを表に出した。
それを見たラドゥはさらに後退した。
「十字架……あれだけ人を殺したキサマが十字架……神の何も信じていないくせに!」
するとヴラド公の横にいたグリゴアもバサラブを離して胸から十字架を出した。
「あ、ああ~、オレ様ちゃんをた、助けてくれえ~っっ!」
一人何も身につけていないバサラブは、神にもすがる気持ちでグリゴアの後ろに引っ込んだ。
それを見たラドゥは思わず笑った。
「ハハハハハ! バサラブ殿。何で撃つはずの敵の大将に助けを求めているんですか? 所詮は小さい人間ですね」
「オ、オ、オレ様ちゃんはねえ! この国の公になりたいんであってねえ! ラドゥちゃんみたいに見境なく人を殺したい訳じゃないの!」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ! まあキサマは人間だからね。僕からしたら、キサマなんぞ、クソ不味そうなパンにしか見えないよ。でもこれだけパンが揃っているんだ! 全部食べてあげるよ!」
「おい、ラドゥ。私の事を忘れているだろ?」
その言葉と共に、森の枝を折って作った杭が何本もラドゥめがけて降ってきた。
ラドゥはそんな物はお見通しとばかりに全て避ける。
「テスラ! キサマも姑息な手を使う。そんな小細工は効かん! 返り討ちにしてやる!」
頭に血が上っている状態のラドゥは、その木の杭を一本手に持つと、空中高く浮いているテスラに向かって行った。
テスラは向かってくるラドゥから逃げるようにかなりのスピードで森の中に入った。
それをすごいスピードでラドゥは追い、テスラを捕まえるほどの距離まで迫った。
その時、テスラはいきなり霧に姿を変え、消え失せた。
するとそこには木の枝が何本も茂っていた!
すごいスピードのラドゥは、霧に姿を変える事も出来ずにすごいスピードで木の茂み突っ込んだ!
無数の細い枝は葉を落としながら身体に食い込み皮膚を突き破り、肉に刺さり血を吹き出させ、ラドゥは血みどろになり身動きが取れなくなった。
あまりの突然な出来事に、ラドゥはパニックになり、手に持っていた木の杭を落とした。
「く、くそがあああああああああああっっ!」
ラドゥは慌ててその枝を抜き、脱出をするのに精一杯になった。
そして何とかラドゥが木の枝から脱出できたその瞬間に、ラドゥが木の間から落とした木の杭を掴んだオクタヴィアンがラドゥめがけて突っ込んできた!
オクタヴィアンの差し出した木の杭は、思いっきり胸に突き刺さった!
「な、な、なっっ!」
「ラドゥ! これでも食らえーーーーーっっ!」
ラドゥはオクタヴィアンに押され、空中高く舞い上がった。
「ば、ばかなっっ……!」
ラドゥは吸血鬼という存在を熟知しているテスラと、戦い慣れを始めていたオクタヴィアンを甘くみていた。
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