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第二章 吸血鬼初心者
第三十話 オロロック邸の最期
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「エ! エリザベターーーーーーーーーッッ!」
オクタヴィアンはあまりの事に大声で叫んだ。
その叫び声を聞いたローラが一瞬でオクタヴィアンの横に現れた。
しかしオクタヴィアンとヨアナはローラを構っている余裕などない。
「オ、オクタヴィアン……ヨアナ……」
エリザベタはボグダンだった屍食鬼に首筋を噛まれ、身動きが取れない。
噛みつかれた左肩からは大量の血を流し始め、服を真っ赤に染めていく。
身体の力が抜け始め、意識も朦朧となっていっているのが分かる。
よく見ると、部屋の窓が開いていた。
「ま、窓から入ったのか?」
庭師の仕事の中に、庭木の剪定も入っている。
ボグダンは普段から木に登る事に長けていた。
それがこんな形で反映されてしまったのだ。
「お、お母様ーーーーーーーっっ!」
ヨアナも泣きながら叫んだ。
エリザベタの目から涙がこぼれる。
しかしその瞬間、屍食鬼の体から火が噴き出した。
エリザベタは胸元に十字架のネックレスをしていたのだ。
屍食鬼はそれに反応し、燃え始めたのである。
しかし屍食鬼はエリザベタから離れない。
血を吸う本能がすごいのか、身体が燃えている事に気づいていないかのようだ。
その火はみるみるエリザベタ本人にも広がり始めた。
その時だった。
「お母様を離せーーーーーーーっっ!」
オクタヴィアンに抱きかかえられていたヨアナがオクタヴィアンを蹴ってエリザベタと屍食鬼に向かって飛んだ。
燃え広がる二人に飛び込んだヨアナは、渾身の力で指を真っ直ぐに伸ばした右手を屍食鬼の顔面目掛けてぶつけた。
そのナイフのような右手は屍食鬼の顔面、鼻の真横に縦にブッサリと突き刺さった。
そしてそのまま、残った左手で、その突き刺した傷を広げて顔面を縦に真っ二つに裂いた。
しかしエリザベタの付けている十字架の効力と、二人を包んでいた炎がヨアナにも広がり、ヨアナも炎に包まれた。
それに屍食鬼は活動を止めたのに、エリザベタから離れない。
がっつりしがみついたまま、固まってしまったのだ。
それがわずか数秒で起こった。
「ヨ、ヨアナ! は、離れるんだ!」
「ヨアナ様ーーーーーーーーーーーッッ!」
オクタヴィアンとローラは叫んだ。
しかしヨアナは離れない。
なんと瀕死のエリザベタがヨアナをしっかりと掴んでいた!
「……ごめんね……。こんな母親で……ごめんね……」
「お、お母様……」
炎の中でエリザベタとヨアナは涙を流しながらも本当の笑顔をお互いに見せた。
それをオクタヴィアンとローラは見逃さなかった。
そして二人と屍食鬼の身体は更に炎に包まれ、部屋の鏡台やベッドにも火を付けながら共に窓に向かってよろけ、そのまま窓から転落してしまった。
その時、ローラが一歩遅れて二人めがけて飛んだ。
そしてローラはエリザベタの燃えたぎる服を掴んで、一緒に落下した。
「な! な!」
オクタヴィアンは一瞬で窓際まで移動して、窓から顔を出した。
するとエリザベタとヨアナと屍食鬼は既に燃え尽きて跡形もなくなり、炎だけがゴオゴオと激しく地面を燃やしている。
その炎が今度はローラを襲っていた。
オクタヴィアンは大慌てで、まだ火が燃え移ってないカーテンの片側を外すと、窓から飛び降りてローラを包んだ。
しかし簡単に火が消えない。
「あ、熱い! ヨアナ様ーーーーーーーッッ!」
もはや半狂乱になったローラを包み込んだまま、オクタヴィアンはエリザベタとヨアナを包み込んだ炎から慌てて離し、カーテンの外側からバタバタとローラを叩いて火を消す事に必死になった。
その間も、ローラは苦しみながらも叫んでいる。
そして何とか鎮火したローラは慌てて煙が上がっているカーテンから顔を出すと、ヨアナを捜した。
しかしそこには地面に広がる炎のみ。
エリザベタとヨアナの姿はない。
その炎は地面から本館の一階にも燃え移り、本館は二階のエリザベタの部屋と下の一階がゴオゴオと音を立てて燃えている。
「ヨアナ様……ヨアナ様……ヨアナ……ヨアナ……ヨアナ様ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!」
ローラは気が狂ったようにヨアナの名前を連呼して、炎の海へ入ろうとする。
それをオクタヴィアンは慌てて抱きついて止めに入った。
「やめて! 離して! オクタヴィアン様! 離して!」
「バカ言うな! 離せられるか! ローラまでいなくなったら、ボクはどうしたらいいんだよ! エリザベタもヨアナも死んだんだ! 死んだんだ!」
「いやーーーーーー! ウソよーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!」
ローラは泣き叫びながらその場で崩れた。
抱きついて止めたオクタヴィアンもいっしょになって大粒の涙を流してその場に崩れた。
屋敷は炎に包まれた。
オクタヴィアンはあまりの事に大声で叫んだ。
その叫び声を聞いたローラが一瞬でオクタヴィアンの横に現れた。
しかしオクタヴィアンとヨアナはローラを構っている余裕などない。
「オ、オクタヴィアン……ヨアナ……」
エリザベタはボグダンだった屍食鬼に首筋を噛まれ、身動きが取れない。
噛みつかれた左肩からは大量の血を流し始め、服を真っ赤に染めていく。
身体の力が抜け始め、意識も朦朧となっていっているのが分かる。
よく見ると、部屋の窓が開いていた。
「ま、窓から入ったのか?」
庭師の仕事の中に、庭木の剪定も入っている。
ボグダンは普段から木に登る事に長けていた。
それがこんな形で反映されてしまったのだ。
「お、お母様ーーーーーーーっっ!」
ヨアナも泣きながら叫んだ。
エリザベタの目から涙がこぼれる。
しかしその瞬間、屍食鬼の体から火が噴き出した。
エリザベタは胸元に十字架のネックレスをしていたのだ。
屍食鬼はそれに反応し、燃え始めたのである。
しかし屍食鬼はエリザベタから離れない。
血を吸う本能がすごいのか、身体が燃えている事に気づいていないかのようだ。
その火はみるみるエリザベタ本人にも広がり始めた。
その時だった。
「お母様を離せーーーーーーーっっ!」
オクタヴィアンに抱きかかえられていたヨアナがオクタヴィアンを蹴ってエリザベタと屍食鬼に向かって飛んだ。
燃え広がる二人に飛び込んだヨアナは、渾身の力で指を真っ直ぐに伸ばした右手を屍食鬼の顔面目掛けてぶつけた。
そのナイフのような右手は屍食鬼の顔面、鼻の真横に縦にブッサリと突き刺さった。
そしてそのまま、残った左手で、その突き刺した傷を広げて顔面を縦に真っ二つに裂いた。
しかしエリザベタの付けている十字架の効力と、二人を包んでいた炎がヨアナにも広がり、ヨアナも炎に包まれた。
それに屍食鬼は活動を止めたのに、エリザベタから離れない。
がっつりしがみついたまま、固まってしまったのだ。
それがわずか数秒で起こった。
「ヨ、ヨアナ! は、離れるんだ!」
「ヨアナ様ーーーーーーーーーーーッッ!」
オクタヴィアンとローラは叫んだ。
しかしヨアナは離れない。
なんと瀕死のエリザベタがヨアナをしっかりと掴んでいた!
「……ごめんね……。こんな母親で……ごめんね……」
「お、お母様……」
炎の中でエリザベタとヨアナは涙を流しながらも本当の笑顔をお互いに見せた。
それをオクタヴィアンとローラは見逃さなかった。
そして二人と屍食鬼の身体は更に炎に包まれ、部屋の鏡台やベッドにも火を付けながら共に窓に向かってよろけ、そのまま窓から転落してしまった。
その時、ローラが一歩遅れて二人めがけて飛んだ。
そしてローラはエリザベタの燃えたぎる服を掴んで、一緒に落下した。
「な! な!」
オクタヴィアンは一瞬で窓際まで移動して、窓から顔を出した。
するとエリザベタとヨアナと屍食鬼は既に燃え尽きて跡形もなくなり、炎だけがゴオゴオと激しく地面を燃やしている。
その炎が今度はローラを襲っていた。
オクタヴィアンは大慌てで、まだ火が燃え移ってないカーテンの片側を外すと、窓から飛び降りてローラを包んだ。
しかし簡単に火が消えない。
「あ、熱い! ヨアナ様ーーーーーーーッッ!」
もはや半狂乱になったローラを包み込んだまま、オクタヴィアンはエリザベタとヨアナを包み込んだ炎から慌てて離し、カーテンの外側からバタバタとローラを叩いて火を消す事に必死になった。
その間も、ローラは苦しみながらも叫んでいる。
そして何とか鎮火したローラは慌てて煙が上がっているカーテンから顔を出すと、ヨアナを捜した。
しかしそこには地面に広がる炎のみ。
エリザベタとヨアナの姿はない。
その炎は地面から本館の一階にも燃え移り、本館は二階のエリザベタの部屋と下の一階がゴオゴオと音を立てて燃えている。
「ヨアナ様……ヨアナ様……ヨアナ……ヨアナ……ヨアナ様ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!」
ローラは気が狂ったようにヨアナの名前を連呼して、炎の海へ入ろうとする。
それをオクタヴィアンは慌てて抱きついて止めに入った。
「やめて! 離して! オクタヴィアン様! 離して!」
「バカ言うな! 離せられるか! ローラまでいなくなったら、ボクはどうしたらいいんだよ! エリザベタもヨアナも死んだんだ! 死んだんだ!」
「いやーーーーーー! ウソよーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!」
ローラは泣き叫びながらその場で崩れた。
抱きついて止めたオクタヴィアンもいっしょになって大粒の涙を流してその場に崩れた。
屋敷は炎に包まれた。
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