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吸血鬼 吾作とおサエの生活
悪霊降臨
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吾作はケムリのまま、村のみんなを探して屋敷の中に入った。
するとある部屋の一室に、隣村の庄屋さんが一人、灯りを灯して外の様子を知りたいのか、ふすまに耳を当てているのを見つけた。
(あ、隣村の庄屋さんだ)
吾作はすぐにケムリのままその部屋に入ると、
「こんばんは。庄屋さん」
と、普通に声をかけた。
隣村の庄屋さんは、薄暗い部屋で誰もいないはずなのに、いきなり吾作の声で話しかけられて、更に慌てて振り向いたら黒いケムリが目の前でグログロドロドロと動いていたものだから、たまったものではない。
「ひ、ひゃああああああああ~~~~っっ! 出たあああああああ~~~~~~っっ!」
度肝を抜かれた隣村の庄屋さんは、大声で叫びながら大慌てでふすまを開けて、みんなのいる裏庭に走って出た。
おサエの手を掴んで引き寄せていた代官も、掴まれてもがいていたおサエも、その様子をおろおろして見ていた村人達も、その慌てふためいて出てきた隣村の庄屋さんに目を奪われた。
おサエはその拍子に代官の手を払いのけ、サッと代官から離れた。
「あ!」
一瞬悔しがった代官であったが、隣村の庄屋さんが大慌てで自分の元へ駆け寄ってきたのでそれどころではなくなった。
「で、出たっっ!」
「出たか!」
隣村の庄屋さんの言葉を聞いて、代官は屋敷の奥の部屋を見た。
ふすまの開いたその部屋は、灯りが灯っているだけなのに、火事でも起こったのかと思うようなケムリが充満している。
そしてケムリは、みるみるふすまの開いている部分全体に巨大な吾作のような、鬼のような恐ろしい顔へ変化した。そして目をギョロリと向き、隣村の庄屋さんを睨みつけた。
「見つけたぞ~!」
その恐ろしい顔のケムリは、隣村の庄屋さんの顔を見ながら大声で怒鳴った。
「ひゃあああああああああ~~~~~~っっ!」
見つかった隣村の庄屋さんは、また声を出して代官の後ろに隠れた。村人達もその部屋いっぱいの吾作の顔に全員がビビりまくった。
「ご、吾作だ!」
「お、怨霊だあ~!」
と、みなが慌てふためいた。そこに与平と和尚さんも駆けつけた。
(何かえらい事になっとるっっ)
二人はこの状況を見て心配し始めた。
そんな時、吾作はふすまの先の裏庭に村人達みんながいる事にようやく気がついた。
「あ、みんなおる~」
吾作は村みんなが勢揃いしているのが楽しくなり、いつもの感じで声を出してしまった。自分でも(あ)と、思ったが、言ってしまったものはしょうがない。
与平や和尚さん、吾作が生きているのを知っているおサエや庄屋さん、知らないけどまあまあ冷静な権兵衛などは、
「え?」
その怨霊らしからぬ言葉を聞き逃さなかった。しかしそれでも慌てふためいている村人達はいる。
しかし代官は隣村の庄屋さんを払い除けながら、かなり冷静にケムリに向かって話しかけた。
「何だ? 今の間抜けな声は? おまえ、本当に怨霊か? 怨霊なら怨霊らしく、まっと恐ろしく襲って来いや! 返り討ちにしてやるで!」
吾作はその言葉を聞くと、
「あ、ほんじゃ、行きます」
と、言った。
するとある部屋の一室に、隣村の庄屋さんが一人、灯りを灯して外の様子を知りたいのか、ふすまに耳を当てているのを見つけた。
(あ、隣村の庄屋さんだ)
吾作はすぐにケムリのままその部屋に入ると、
「こんばんは。庄屋さん」
と、普通に声をかけた。
隣村の庄屋さんは、薄暗い部屋で誰もいないはずなのに、いきなり吾作の声で話しかけられて、更に慌てて振り向いたら黒いケムリが目の前でグログロドロドロと動いていたものだから、たまったものではない。
「ひ、ひゃああああああああ~~~~っっ! 出たあああああああ~~~~~~っっ!」
度肝を抜かれた隣村の庄屋さんは、大声で叫びながら大慌てでふすまを開けて、みんなのいる裏庭に走って出た。
おサエの手を掴んで引き寄せていた代官も、掴まれてもがいていたおサエも、その様子をおろおろして見ていた村人達も、その慌てふためいて出てきた隣村の庄屋さんに目を奪われた。
おサエはその拍子に代官の手を払いのけ、サッと代官から離れた。
「あ!」
一瞬悔しがった代官であったが、隣村の庄屋さんが大慌てで自分の元へ駆け寄ってきたのでそれどころではなくなった。
「で、出たっっ!」
「出たか!」
隣村の庄屋さんの言葉を聞いて、代官は屋敷の奥の部屋を見た。
ふすまの開いたその部屋は、灯りが灯っているだけなのに、火事でも起こったのかと思うようなケムリが充満している。
そしてケムリは、みるみるふすまの開いている部分全体に巨大な吾作のような、鬼のような恐ろしい顔へ変化した。そして目をギョロリと向き、隣村の庄屋さんを睨みつけた。
「見つけたぞ~!」
その恐ろしい顔のケムリは、隣村の庄屋さんの顔を見ながら大声で怒鳴った。
「ひゃあああああああああ~~~~~~っっ!」
見つかった隣村の庄屋さんは、また声を出して代官の後ろに隠れた。村人達もその部屋いっぱいの吾作の顔に全員がビビりまくった。
「ご、吾作だ!」
「お、怨霊だあ~!」
と、みなが慌てふためいた。そこに与平と和尚さんも駆けつけた。
(何かえらい事になっとるっっ)
二人はこの状況を見て心配し始めた。
そんな時、吾作はふすまの先の裏庭に村人達みんながいる事にようやく気がついた。
「あ、みんなおる~」
吾作は村みんなが勢揃いしているのが楽しくなり、いつもの感じで声を出してしまった。自分でも(あ)と、思ったが、言ってしまったものはしょうがない。
与平や和尚さん、吾作が生きているのを知っているおサエや庄屋さん、知らないけどまあまあ冷静な権兵衛などは、
「え?」
その怨霊らしからぬ言葉を聞き逃さなかった。しかしそれでも慌てふためいている村人達はいる。
しかし代官は隣村の庄屋さんを払い除けながら、かなり冷静にケムリに向かって話しかけた。
「何だ? 今の間抜けな声は? おまえ、本当に怨霊か? 怨霊なら怨霊らしく、まっと恐ろしく襲って来いや! 返り討ちにしてやるで!」
吾作はその言葉を聞くと、
「あ、ほんじゃ、行きます」
と、言った。
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