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吸血鬼 吾作とおサエの生活
みんなの到着した場所
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彦ニイが中心になり、おサエも庄屋さんも同行している村人達一行は、明らかに大きな屋敷があるであろう、門が見える両側が竹林の道の前まで来た。庄屋さんは長三郎に尋ねた。
「なあ長三郎。おまえがつけた侍は、ホントにここに入って行っただな?」
「ほだよ」
長三郎は鼻高々。すると庄屋さんは一息吸うと、こう言った。
「……ここは侍の家じゃなくて、代官の屋敷兼役所だわ」
「えええええええ~!」
長三郎をはじめ村人達は一斉に驚いた。
「まあええだら。どちらにしろ、ここが最終目的地なんだで」
若干呆れながらも覚悟を決めた庄屋さんは、そう言った。
しかし代官の屋敷に来るつもりがなかった村人達は、
「ど、どうする? 行くかん?」
「やめとこまいっ」
と、ざわつき始め、オロオロするばかり。それを見た与平の嫁で吾作の儀姉のおタケが、
「何をここまで来てギャーギャー言っとるだん! ほんなん行くに決まっとるだらあ!」
と、喝を入れると、
「うん。行くに」
決意を固めたおサエも静かに言った。それを見た庄屋さんは、
「よ~し! ほんじゃ行くで! みんな着いて来いや!」
みんなの顔を見渡した後、一人竹林の道を歩いて行った。それに続き、おタケ、おサエと奥へ歩き始めた。
「よし! わしらも行くに! みんなで行きゃあ恐くないて!」
「ほ、ほだな。みんな行こまい」
彦ニイと権兵衛が声をかけ、残りの村人達を引き連れて、竹林の中へ入って行った。その様子を少し遠くから見ていた与平は一人頭を抱えた。
「ここにいきなり来ちゃうとは……吾作と和尚さんを待つか……」
そして吾作と和尚さんをドギマギしながら待つ事にした。
一人竹林の道を歩いていった庄屋さんは門の前に着いた。その立派な門は閉まっており、そのかわりに門番が立っている。庄屋さんはあいさつをした。
「こんばんは。夜分申し訳ないが、急用でうちの村のもん達とお代官様に会いに来ました。よろしいですかな?」
すると門番は、庄屋さんの後方にかなりの人数が来ているのを確認して、
「少し待ってろ」
と、その報告をしに屋敷へ入っていった。
庄屋さんは落ち着い払っているが、村人達はみんなソワソワしている。
吾作の義姉のおタケもさっきまでの勢いはどこえやら、今ではすっかり借りてきた猫状態になってしまっていた。
そんな中おサエは、
(こんなトコまで来ちゃった……でも、吾作をあんな目にあわした人達の顔は見ておきたい!)
と、覚悟を決めていた。そんな感じでみなそれぞれ待っていると、奥から門番が戻ってきた。
「よし! 入れ!」
門番は門を開けると、こっちだ。と、みなを先導した。みなぞろぞろと門をくぐり、屋敷の裏側の、ちょっとした広場に通された。その間もみんなキョロキョロソワソワと挙動不審である。
そこには、長三郎が後をつけた侍と、着流しだが身なりがちゃんと整っている涼しげな顔の三十代くらいの男が一人、縁側に腰掛けて座っていた。
庄屋さんはその男を見るなりあいさつわした。
「お代官様。どうも夜分に申し訳ございません」
(この人がお代官様なんだっ)
村人達はそう思い、オドオドしながらも、
「も、申し訳ございません! よろしくお願いします!」
「お願いします!」
と、続けてあいさつをした。
「いやいや、こちらこそこんな格好で申し訳ない。何せもう仕事は片付けた後だったのでね。それでみなさん、わざわざ遠くからどう言った要件だったかな?」
代官は縁側に腰掛けたまま、とても気さくに話を始めた。それを受けて庄屋さんも話し始めた。
「では、さっそくその話をさせてもらいます」
「なあ長三郎。おまえがつけた侍は、ホントにここに入って行っただな?」
「ほだよ」
長三郎は鼻高々。すると庄屋さんは一息吸うと、こう言った。
「……ここは侍の家じゃなくて、代官の屋敷兼役所だわ」
「えええええええ~!」
長三郎をはじめ村人達は一斉に驚いた。
「まあええだら。どちらにしろ、ここが最終目的地なんだで」
若干呆れながらも覚悟を決めた庄屋さんは、そう言った。
しかし代官の屋敷に来るつもりがなかった村人達は、
「ど、どうする? 行くかん?」
「やめとこまいっ」
と、ざわつき始め、オロオロするばかり。それを見た与平の嫁で吾作の儀姉のおタケが、
「何をここまで来てギャーギャー言っとるだん! ほんなん行くに決まっとるだらあ!」
と、喝を入れると、
「うん。行くに」
決意を固めたおサエも静かに言った。それを見た庄屋さんは、
「よ~し! ほんじゃ行くで! みんな着いて来いや!」
みんなの顔を見渡した後、一人竹林の道を歩いて行った。それに続き、おタケ、おサエと奥へ歩き始めた。
「よし! わしらも行くに! みんなで行きゃあ恐くないて!」
「ほ、ほだな。みんな行こまい」
彦ニイと権兵衛が声をかけ、残りの村人達を引き連れて、竹林の中へ入って行った。その様子を少し遠くから見ていた与平は一人頭を抱えた。
「ここにいきなり来ちゃうとは……吾作と和尚さんを待つか……」
そして吾作と和尚さんをドギマギしながら待つ事にした。
一人竹林の道を歩いていった庄屋さんは門の前に着いた。その立派な門は閉まっており、そのかわりに門番が立っている。庄屋さんはあいさつをした。
「こんばんは。夜分申し訳ないが、急用でうちの村のもん達とお代官様に会いに来ました。よろしいですかな?」
すると門番は、庄屋さんの後方にかなりの人数が来ているのを確認して、
「少し待ってろ」
と、その報告をしに屋敷へ入っていった。
庄屋さんは落ち着い払っているが、村人達はみんなソワソワしている。
吾作の義姉のおタケもさっきまでの勢いはどこえやら、今ではすっかり借りてきた猫状態になってしまっていた。
そんな中おサエは、
(こんなトコまで来ちゃった……でも、吾作をあんな目にあわした人達の顔は見ておきたい!)
と、覚悟を決めていた。そんな感じでみなそれぞれ待っていると、奥から門番が戻ってきた。
「よし! 入れ!」
門番は門を開けると、こっちだ。と、みなを先導した。みなぞろぞろと門をくぐり、屋敷の裏側の、ちょっとした広場に通された。その間もみんなキョロキョロソワソワと挙動不審である。
そこには、長三郎が後をつけた侍と、着流しだが身なりがちゃんと整っている涼しげな顔の三十代くらいの男が一人、縁側に腰掛けて座っていた。
庄屋さんはその男を見るなりあいさつわした。
「お代官様。どうも夜分に申し訳ございません」
(この人がお代官様なんだっ)
村人達はそう思い、オドオドしながらも、
「も、申し訳ございません! よろしくお願いします!」
「お願いします!」
と、続けてあいさつをした。
「いやいや、こちらこそこんな格好で申し訳ない。何せもう仕事は片付けた後だったのでね。それでみなさん、わざわざ遠くからどう言った要件だったかな?」
代官は縁側に腰掛けたまま、とても気さくに話を始めた。それを受けて庄屋さんも話し始めた。
「では、さっそくその話をさせてもらいます」
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