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吸血鬼 吾作とおサエの生活
油虫
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夜もだいぶ更けて、明日する事もまとまったので、庄屋さんと和尚さんは帰る事になった。その帰り際、
「あ、吾作。ほういやこれが終わったら、お前に頼みたいことがあるんだったわ。お前ネズミ退治してくれただらあ。ほれはよかっただけど、今度は油虫(ゴキブリ)が出るようになってなあ。ちょっと今度は油虫を取ってくれんかやあ」
と、庄屋さんが言ってきた。
「あ、油虫ですか!」
「まあ終わってからでいいで。頼むわ」
庄屋さんはそれだけ言うと帰って行った。和尚さんも、
「あ、吾作。ほんと申し訳ないんだが、寺のネズミの事も少し考えてくれんか? ん~まあ、無理かもしれんのは分かっとるで」
そう言うと、和尚さんも帰って行った。吾作達は庄屋さんと和尚さんを見送った。
「ええ~っっ! あ、油虫~っっ!」
吾作は一人嘆き始めた。吾作は油虫が大の苦手だったからである。おサエと与平はそんな吾作を見ながら、
「ああ~、こりゃ大変だ。ひょっとすると、どの家も油虫が出始めとるかもしれんねえ~」
「まさかこんな事になるなんてなあ。わし、頼んでなくてよかったわ」
そんないじわるな物の言い方をしたが、吾作はそれには気づかず、
「ゔ~っっ。油虫、ど、どうしよう~っっ」
と、明日の事などすっかり忘れて油虫の事で頭がいっぱいのよう。吾作があまりに油虫の事で困っているので、与平が助け舟を出してあげた。
「おまえの能力使ってネズミに油虫を食ってもらえばよくないかん?」
「あ! あ~! ホントだ! ほれでいいじゃんか~! ありがと~! 与平~!」
と、その案に感激した吾作は与平に礼を言いまくった。
「ほ、ほんじゃもうやってみるかん?」
すると吾作は何かを念じるように目を閉じたがおサエは慌てて、
「ちょっと吾作! まあ夜も更けとるし、庄屋さんも寝とるところにネズミ来たらびっくりするだろうで、明日にしりん」
「あ、あ、ほやほだな」
その言葉に吾作も念じるのをやめた。
この日は吾作の通夜という事なので、ロウソクの火が消えないようにしないといけない。そこで、おサエと与平で交代交代でロウソクの火を見るという話になっていたのだが、
「別に与平は帰ってええよ」
と、おサエが言った。
「いやいや、またおタケに『おまえは身内の手助けも出来んのか!』って怒られるで困るわっ」
「ほんだって私、今から寝るし、吾作はネズミ捕りに行くし……帰りん」
そう言われた与平は、何も言い返す事が出来ず、しぶしぶ吾作の家を出た。
そうして夫婦二人になった。おサエは寝る準備を始めたが、吾作は愚痴り始めた。
「あ~、油虫かあ~っっ! 与平がいい事言ってくれたでいいけど、まあめんどくさいわあ~」
「まあ仕方ないわねえ。また頑張るだよ」
「ま、まあ頑張るしかないかっっ。お寺はまあ、どうにもならんで、いっか」
吾作はお寺については全くやる気のない言葉をボソッと言った。その言葉を聞いたおサエはカチンときた。
「ねえ吾作? ちょっと聞いていい? 最近吾作なんか変だよ? 何であんな和尚さんに突っかかったり、冷たい態度に出たり、イノシシを目の前で殺したり……何か怒っとるの?」
その単刀直入な質問に、吾作は返答出来なかった。
「あ……いや、まあ……ごめんね」
こんな言葉しか出なかった。それを聞いたおサエも、何を言えばいいのか分からず、
「まあ……分かった」
としか返せなかった。そしておサエは布団を敷き終わると、
「ほんじゃ寝るわ。明日早く起きるつもりだけど、起きれんといかんもんで吾作。寝る前に起こして!」
と、吾作に言うと、その日ほとんど寝れていなかった事もあって、布団に入るなりすぐに寝付いた。
吾作はそんなおサエをしばらく見守っていたが、
「わしも血を飲まんとな」
と、獣を探しに外に出る事にした。
吾作はいつものように家を出ようとしたが、
(あ、わし今、死んでるんだった)
そう思い返すと、ケムリに変化して天井を抜けて、ケムリのまま森の中に入っていった。
そのケムリの時間が長かったせいなのか、吾作はその日、血がとても欲しくなっており、またイノシシを捕まえて血を飲むと、イノシシの首の骨を折って生き返らないようにしておいた。
「おし、これも庄屋さんにくれてやろうかな♪ そしたら何かお返しをくれるかもしれん♪」
そう吾作は喜んだが、自分が血を吸って、ぐったり倒れているイノシシをじっくり見直した時、
「……わし……今、今、何言った? イノシシを殺しておいて、何の感情も出んくなっとる……」
自分の無慈悲な感情に驚き、戸惑った。
(自分は、もう心まで化け物になってしまったんだろうか……やはりおサエちゃんといっしょに暮らしていく事は、もう難しいのだろうか……)
吾作はそんな事を思いながら、イノシシの亡骸をしばらく見つめていた。そして、自分が化け物になってからの事を考え始めた。
(わしが化け物になってから、わしは村を引っ掻き回してばっかだ……わしはそんな気はないのにっっ。今回の事だってわしから何かした訳じゃないのに、何でこんな訳の分からん事になっとるんだろう? あ~、あの隣村の庄屋さんトコに行かなかったらこんな事にはならんかったのに)
吾作の考えはどんどん恨み節になってきた。そんな事を考えていたので、ふいに侍の話を思い出した。
(わしの家を見張っていたその侍は、わしを襲ったどちらかに違いない。一回顔をしっかり拝んで仕返しでもしたい気分だわ! ほんでも、ほんなんしたら庄屋さんに怒られるし、おサエちゃんもすんごい怒りそうな気がする……ほいでもちょっと侍の家くらい、突き止めたいなあ~っ! いかんかなあ~~! つーか、ほんなんしたら今日話した庄屋さんとの話がダメになっちゃうかあ~っっ。じゃあダメかあ~……でも行きたいなあ~~……)
吾作は衝動と戦っていた。
「あ、吾作。ほういやこれが終わったら、お前に頼みたいことがあるんだったわ。お前ネズミ退治してくれただらあ。ほれはよかっただけど、今度は油虫(ゴキブリ)が出るようになってなあ。ちょっと今度は油虫を取ってくれんかやあ」
と、庄屋さんが言ってきた。
「あ、油虫ですか!」
「まあ終わってからでいいで。頼むわ」
庄屋さんはそれだけ言うと帰って行った。和尚さんも、
「あ、吾作。ほんと申し訳ないんだが、寺のネズミの事も少し考えてくれんか? ん~まあ、無理かもしれんのは分かっとるで」
そう言うと、和尚さんも帰って行った。吾作達は庄屋さんと和尚さんを見送った。
「ええ~っっ! あ、油虫~っっ!」
吾作は一人嘆き始めた。吾作は油虫が大の苦手だったからである。おサエと与平はそんな吾作を見ながら、
「ああ~、こりゃ大変だ。ひょっとすると、どの家も油虫が出始めとるかもしれんねえ~」
「まさかこんな事になるなんてなあ。わし、頼んでなくてよかったわ」
そんないじわるな物の言い方をしたが、吾作はそれには気づかず、
「ゔ~っっ。油虫、ど、どうしよう~っっ」
と、明日の事などすっかり忘れて油虫の事で頭がいっぱいのよう。吾作があまりに油虫の事で困っているので、与平が助け舟を出してあげた。
「おまえの能力使ってネズミに油虫を食ってもらえばよくないかん?」
「あ! あ~! ホントだ! ほれでいいじゃんか~! ありがと~! 与平~!」
と、その案に感激した吾作は与平に礼を言いまくった。
「ほ、ほんじゃもうやってみるかん?」
すると吾作は何かを念じるように目を閉じたがおサエは慌てて、
「ちょっと吾作! まあ夜も更けとるし、庄屋さんも寝とるところにネズミ来たらびっくりするだろうで、明日にしりん」
「あ、あ、ほやほだな」
その言葉に吾作も念じるのをやめた。
この日は吾作の通夜という事なので、ロウソクの火が消えないようにしないといけない。そこで、おサエと与平で交代交代でロウソクの火を見るという話になっていたのだが、
「別に与平は帰ってええよ」
と、おサエが言った。
「いやいや、またおタケに『おまえは身内の手助けも出来んのか!』って怒られるで困るわっ」
「ほんだって私、今から寝るし、吾作はネズミ捕りに行くし……帰りん」
そう言われた与平は、何も言い返す事が出来ず、しぶしぶ吾作の家を出た。
そうして夫婦二人になった。おサエは寝る準備を始めたが、吾作は愚痴り始めた。
「あ~、油虫かあ~っっ! 与平がいい事言ってくれたでいいけど、まあめんどくさいわあ~」
「まあ仕方ないわねえ。また頑張るだよ」
「ま、まあ頑張るしかないかっっ。お寺はまあ、どうにもならんで、いっか」
吾作はお寺については全くやる気のない言葉をボソッと言った。その言葉を聞いたおサエはカチンときた。
「ねえ吾作? ちょっと聞いていい? 最近吾作なんか変だよ? 何であんな和尚さんに突っかかったり、冷たい態度に出たり、イノシシを目の前で殺したり……何か怒っとるの?」
その単刀直入な質問に、吾作は返答出来なかった。
「あ……いや、まあ……ごめんね」
こんな言葉しか出なかった。それを聞いたおサエも、何を言えばいいのか分からず、
「まあ……分かった」
としか返せなかった。そしておサエは布団を敷き終わると、
「ほんじゃ寝るわ。明日早く起きるつもりだけど、起きれんといかんもんで吾作。寝る前に起こして!」
と、吾作に言うと、その日ほとんど寝れていなかった事もあって、布団に入るなりすぐに寝付いた。
吾作はそんなおサエをしばらく見守っていたが、
「わしも血を飲まんとな」
と、獣を探しに外に出る事にした。
吾作はいつものように家を出ようとしたが、
(あ、わし今、死んでるんだった)
そう思い返すと、ケムリに変化して天井を抜けて、ケムリのまま森の中に入っていった。
そのケムリの時間が長かったせいなのか、吾作はその日、血がとても欲しくなっており、またイノシシを捕まえて血を飲むと、イノシシの首の骨を折って生き返らないようにしておいた。
「おし、これも庄屋さんにくれてやろうかな♪ そしたら何かお返しをくれるかもしれん♪」
そう吾作は喜んだが、自分が血を吸って、ぐったり倒れているイノシシをじっくり見直した時、
「……わし……今、今、何言った? イノシシを殺しておいて、何の感情も出んくなっとる……」
自分の無慈悲な感情に驚き、戸惑った。
(自分は、もう心まで化け物になってしまったんだろうか……やはりおサエちゃんといっしょに暮らしていく事は、もう難しいのだろうか……)
吾作はそんな事を思いながら、イノシシの亡骸をしばらく見つめていた。そして、自分が化け物になってからの事を考え始めた。
(わしが化け物になってから、わしは村を引っ掻き回してばっかだ……わしはそんな気はないのにっっ。今回の事だってわしから何かした訳じゃないのに、何でこんな訳の分からん事になっとるんだろう? あ~、あの隣村の庄屋さんトコに行かなかったらこんな事にはならんかったのに)
吾作の考えはどんどん恨み節になってきた。そんな事を考えていたので、ふいに侍の話を思い出した。
(わしの家を見張っていたその侍は、わしを襲ったどちらかに違いない。一回顔をしっかり拝んで仕返しでもしたい気分だわ! ほんでも、ほんなんしたら庄屋さんに怒られるし、おサエちゃんもすんごい怒りそうな気がする……ほいでもちょっと侍の家くらい、突き止めたいなあ~っ! いかんかなあ~~! つーか、ほんなんしたら今日話した庄屋さんとの話がダメになっちゃうかあ~っっ。じゃあダメかあ~……でも行きたいなあ~~……)
吾作は衝動と戦っていた。
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