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吸血鬼 吾作とおサエの生活
庄屋さんの提案
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そして、ようやく本題の、葬式の後どうするか? と、いう話になった。
しかし困った事に、和尚さんと庄屋さんの意見は食い違いを見せ、二人の言い分は平行線をたどった。和尚さんの意見は、
「このままやり過ごすのがええ」
一方庄屋さんの意見は、
「隣村の庄屋と代官は絶対に許さん!」
と、全くお互い譲る気はない。しかし庄屋さんには考えがあった。
「和尚の言うように、一度はこのままやり過ごた方がええ。ほしたら墓まで吾作が入るまでの確認もするだらあ。
わしが考えとるのはその後だわ。和尚の言うように、このままやり過ごすのは得策だとは思うだよ。ほんでもな、奴らは定期的に偵察しに来ると思うんだわ。ほんな時に間違って吾作が見られてみりん! ほんなんまたややこしい話になるに。ほいだもんで、奴らがまあ来ないようにする為に何か策を打っとかにゃいかんのだて!
ほいで、わしが考えとるのはなあ。明日の葬式の後、奴らの家に吾作の怨霊が出てみたらどうだと思う?わしが思うに奴ら、絶対まあ恐くてこの村にちょっかい出さんくなると思うだよ♪ ほいだもんで、吾作のいろんな能力を使って奴らに祟りみたいな事を起こさせて、奴らを恐がらせてみるだよ♪ どうだん! この案は?」
それは面白いと、吾作、おサエ、与平はその提案を面白がって賛成した。しかし和尚さんだけは、
「ほんなバチ当たりな……っ」
と、あまり乗り気ではない。それを聞いた吾作が、
「和尚さんは嫌そうな顔しとるけど、わしはこれがええと思うし、和尚さんの言う、ただただ何もせんのは嫌だよ。それにそもそもバチ当たりな事始めたの、和尚さんじゃんか。何今更言っとるだんて話だて。ほいだったら、まあこれからわしらだけでいろいろ決めてくもんで、和尚さんは帰っていいに」
その冷たい意見にその場にいた全員が、少し固まった。
(吾作がこんなにはっきり物を言うなんて、見た事ない……やっぱり何かおかしい……)
と、おサエは思い、与平も心配をはじめ、庄屋さんも、少し驚いた。そんな事を言われた和尚さんは、吾作の顔を見て神妙な面持ちになり、吾作の顔を真っ直ぐ見つめた。
「いや、計画は全員で決めんといかんし、分かっとらんと動き方を間違えるといかんで、わしはおる」
「ほですか、ほな続けましょ」
その和尚さんの真剣な眼差しを吾作は目も合わさず、そっけなく答えた。
そんな訳で結局は庄屋さんの案でいく事になった。
しかし隣村の庄屋さんと代官に、祟りを見せる事になったのはいいのだが、
《その祟りをどう見せる?》
と、いう話になった。
「吾作。おまえ、いろんな事が出来るけど、何か人を驚かせるようなもん~……何かあーへんか?」
庄屋さんが質問をすると、
「う~ん……ほだねえ。
動物を操る事と~……
コウモリとかオオカミに変化する事と~……
空を飛ぶ事~……?
後……何かあったっけ?
あ、ほだ。ケムリになって人の入れんトコとか入れる!
ほんなもんかなあ~……ほんだけです!」
吾作は一生懸命頭を絞って答えた。そこにおサエが、びっくりして聞いてみた。
「え? 動物を操れるの?」
「ほだよ。昨日見せたじゃん♪ イノシシ♪」
「あ、え? あのイノシシ? そういう事だったの? 全然分かっとらんかったわ! まあちょい説明して~!」
「あ、あ、だから昨日はいっぱいのネズミに隣村から家まで運んでもらったんだわ。ごめん。言ってなかった?」
なぜか吾作はおサエに謝る形になった。その様子を見た与平が、
「まあまあ、今はそれどころじゃないだらあ。そのネズミの大群はわしは見たけど、けっこう凄かったで。何かに使えると思うに」
と、二人の言い合いに割って入った。
「ほいでさっきケムリって言ったけど、それはどんな感じにもなれるんか?」
そこに庄屋さんがケムリについて聞いてきた。
「あ、はい。やりますか?」
吾作はそう言うと、一気にケムリになって部屋の中を移動したり、手だけをケムリにしたりと、みんなにそれを見せた。
それを見たみんなはとても驚いた。おサエも、吾作がケムリになる事は聞いてはいたが、実際に見るのは初めてだったので、吾作がこんな事になっちゃうんだ! と、驚いた。そして庄屋さんは、
「これは使えるわ!」
と、大喜びした。
そこで大量のネズミを屋敷に連れて行き、吾作はケムリとなって隣村の庄屋さんや、代官を驚かして、二度と村の事に口出しさせないように釘を刺す方法にした。
さらに釘を刺すという意味で、代官には目の前に吾作に刺さった矢を突き立ててやれば、効果倍増だろうという話になった。
なので吾作に刺さった矢は、それまで吾作が持っている事になった。
しかし問題は、吾作が幽霊の真似事が出来るかどうかだった。
実際にみんなの目の前で練習をしてみると、ケムリになるまではいいが、
「……な、何言ったらいい?」
「恨めしや~って言え!」
吾作は庄屋さんに怒られてしまう。
「わ、わしこんなんやった事あ~へんもんで、何言っていいか分かんないんです~っっ」
吾作は本気で困ってしまった。そこで庄屋さんは呆れながら、
「分かった! 何言ったらいいか、わしが紙に書いといてやる! ほいでいいだらあ!」
と、言ったが、
「わし! 字は読めん~!」
と、吾作は嘆いた。
このやりとりを見て、おサエと与平と和尚さんは、笑ったと同時に不安になった。
しかし困った事に、和尚さんと庄屋さんの意見は食い違いを見せ、二人の言い分は平行線をたどった。和尚さんの意見は、
「このままやり過ごすのがええ」
一方庄屋さんの意見は、
「隣村の庄屋と代官は絶対に許さん!」
と、全くお互い譲る気はない。しかし庄屋さんには考えがあった。
「和尚の言うように、一度はこのままやり過ごた方がええ。ほしたら墓まで吾作が入るまでの確認もするだらあ。
わしが考えとるのはその後だわ。和尚の言うように、このままやり過ごすのは得策だとは思うだよ。ほんでもな、奴らは定期的に偵察しに来ると思うんだわ。ほんな時に間違って吾作が見られてみりん! ほんなんまたややこしい話になるに。ほいだもんで、奴らがまあ来ないようにする為に何か策を打っとかにゃいかんのだて!
ほいで、わしが考えとるのはなあ。明日の葬式の後、奴らの家に吾作の怨霊が出てみたらどうだと思う?わしが思うに奴ら、絶対まあ恐くてこの村にちょっかい出さんくなると思うだよ♪ ほいだもんで、吾作のいろんな能力を使って奴らに祟りみたいな事を起こさせて、奴らを恐がらせてみるだよ♪ どうだん! この案は?」
それは面白いと、吾作、おサエ、与平はその提案を面白がって賛成した。しかし和尚さんだけは、
「ほんなバチ当たりな……っ」
と、あまり乗り気ではない。それを聞いた吾作が、
「和尚さんは嫌そうな顔しとるけど、わしはこれがええと思うし、和尚さんの言う、ただただ何もせんのは嫌だよ。それにそもそもバチ当たりな事始めたの、和尚さんじゃんか。何今更言っとるだんて話だて。ほいだったら、まあこれからわしらだけでいろいろ決めてくもんで、和尚さんは帰っていいに」
その冷たい意見にその場にいた全員が、少し固まった。
(吾作がこんなにはっきり物を言うなんて、見た事ない……やっぱり何かおかしい……)
と、おサエは思い、与平も心配をはじめ、庄屋さんも、少し驚いた。そんな事を言われた和尚さんは、吾作の顔を見て神妙な面持ちになり、吾作の顔を真っ直ぐ見つめた。
「いや、計画は全員で決めんといかんし、分かっとらんと動き方を間違えるといかんで、わしはおる」
「ほですか、ほな続けましょ」
その和尚さんの真剣な眼差しを吾作は目も合わさず、そっけなく答えた。
そんな訳で結局は庄屋さんの案でいく事になった。
しかし隣村の庄屋さんと代官に、祟りを見せる事になったのはいいのだが、
《その祟りをどう見せる?》
と、いう話になった。
「吾作。おまえ、いろんな事が出来るけど、何か人を驚かせるようなもん~……何かあーへんか?」
庄屋さんが質問をすると、
「う~ん……ほだねえ。
動物を操る事と~……
コウモリとかオオカミに変化する事と~……
空を飛ぶ事~……?
後……何かあったっけ?
あ、ほだ。ケムリになって人の入れんトコとか入れる!
ほんなもんかなあ~……ほんだけです!」
吾作は一生懸命頭を絞って答えた。そこにおサエが、びっくりして聞いてみた。
「え? 動物を操れるの?」
「ほだよ。昨日見せたじゃん♪ イノシシ♪」
「あ、え? あのイノシシ? そういう事だったの? 全然分かっとらんかったわ! まあちょい説明して~!」
「あ、あ、だから昨日はいっぱいのネズミに隣村から家まで運んでもらったんだわ。ごめん。言ってなかった?」
なぜか吾作はおサエに謝る形になった。その様子を見た与平が、
「まあまあ、今はそれどころじゃないだらあ。そのネズミの大群はわしは見たけど、けっこう凄かったで。何かに使えると思うに」
と、二人の言い合いに割って入った。
「ほいでさっきケムリって言ったけど、それはどんな感じにもなれるんか?」
そこに庄屋さんがケムリについて聞いてきた。
「あ、はい。やりますか?」
吾作はそう言うと、一気にケムリになって部屋の中を移動したり、手だけをケムリにしたりと、みんなにそれを見せた。
それを見たみんなはとても驚いた。おサエも、吾作がケムリになる事は聞いてはいたが、実際に見るのは初めてだったので、吾作がこんな事になっちゃうんだ! と、驚いた。そして庄屋さんは、
「これは使えるわ!」
と、大喜びした。
そこで大量のネズミを屋敷に連れて行き、吾作はケムリとなって隣村の庄屋さんや、代官を驚かして、二度と村の事に口出しさせないように釘を刺す方法にした。
さらに釘を刺すという意味で、代官には目の前に吾作に刺さった矢を突き立ててやれば、効果倍増だろうという話になった。
なので吾作に刺さった矢は、それまで吾作が持っている事になった。
しかし問題は、吾作が幽霊の真似事が出来るかどうかだった。
実際にみんなの目の前で練習をしてみると、ケムリになるまではいいが、
「……な、何言ったらいい?」
「恨めしや~って言え!」
吾作は庄屋さんに怒られてしまう。
「わ、わしこんなんやった事あ~へんもんで、何言っていいか分かんないんです~っっ」
吾作は本気で困ってしまった。そこで庄屋さんは呆れながら、
「分かった! 何言ったらいいか、わしが紙に書いといてやる! ほいでいいだらあ!」
と、言ったが、
「わし! 字は読めん~!」
と、吾作は嘆いた。
このやりとりを見て、おサエと与平と和尚さんは、笑ったと同時に不安になった。
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