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吸血鬼 吾作とおサエの生活
田植えをしなかったがために
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吾作は日が沈むと、すぐに目をパッチリ開けて、布団から飛び出した。何せ今日から、
『村の家のネズミ捕り』
と、いう新しい仕事を始める事になったのだ。
吾作は、自分がこんな化け物になったのに、自分を受け入れてくれる妻のおサエや村の人達に感謝しかなかった。その喜びで今日はもうやる気満々であった。
そんな吾作をおサエは微笑ましく夕飯を作りながら見ていた。すると吾作が、
「おサエちゃん! 順番分かった?」
と、おサエに聞いた。
順番とは、ネズミ退治をする家の順番である。今朝方、村人達と話した結果、
「ほいじゃあ、ネズミ捕りをしてほしい家を紙に書いて……吾作は字は読めんかったんだっけ? おサエちゃんもか。ほいじゃあ、昼間におサエちゃんに話しとくで、それでいいだら?」
「うん」
と、そういう話になっていた。なので、吾作はさっそく村の誰かが教えに来てくれたのではないかと、気になっていたのだ。しかし、
「ううん。まだ来とらん」
おサエがそっけなく答えると、吾作は幾分かがっかりした。
「ほかー。まだ来とらんか~」
吾作は、じゃあ、今日はどうしたらいいのかなあ~……などと考えていると、ある事を思い出した。
「おサエちゃん。ほういや今日、庄屋さんトコの田植えは、どうなったん?」
「知らん。だって私も昼過ぎまで寝とったし、もう何かもう疲れちゃってて、今日一日、横になっとったもん」
笑いながらおサエは返した。吾作もハハハと笑って返した。
本来なら今日は庄屋さんが中心になって決めた田植えの日。しかしおサエはこの通り寝てしまっていたし、他の村人達も田植えには来れなかっただろう。と、吾作も思い、ついいっしょになって笑っていた。しかし内心、
(大丈夫だったかなあ?)
と、いう不安がよぎった。
そんな不安が的中するかのように、権兵衛が慌てた声を出しながらやってきた。
「ご、吾作! 大変だわ! 庄屋さん、どえらい怒っとる!」
その言葉を聞いて、吾作とおサエはその場で固まった。権兵衛は続けて、
「あ、あのな。今日の田植えな。人が半分も集まらんくてな、庄屋さんが激怒しちゃったんだわ。ほんでお前の事を話したら、
『吾作をウチへ連れてこい~!』
って、まあどえらい剣幕でなっっ。ほんだもんで吾作、悪いんだけど今すぐ庄屋さんトコ行ってくれ! 頼むわ!」
と、事情をすべて話すと、権兵衛はゼイゼイ、ハアハア、と、その場で息を整え始めた。
その話を聞いた吾作とおサエは、
「ど、どえらい事になっちゃったっっ!」
「ほ、ほんなん早よ庄屋さんトコ行かんと!」
と、二人は大慌てで準備を済ませたが、
「あれ? おサエちゃんも行くの?」
「ほや行くよ。私もぜんぜん庄屋さんトコに連絡とか、考えんかったもん」
と、おサエも行く気満々だったので、吾作はちょっと驚いた。それを見ていた権兵衛は、
「ま、まあいいで、二人とも早よ行こまい」
そんな訳で三人は慌てて庄屋さんの屋敷を目指して歩き出した。
『村の家のネズミ捕り』
と、いう新しい仕事を始める事になったのだ。
吾作は、自分がこんな化け物になったのに、自分を受け入れてくれる妻のおサエや村の人達に感謝しかなかった。その喜びで今日はもうやる気満々であった。
そんな吾作をおサエは微笑ましく夕飯を作りながら見ていた。すると吾作が、
「おサエちゃん! 順番分かった?」
と、おサエに聞いた。
順番とは、ネズミ退治をする家の順番である。今朝方、村人達と話した結果、
「ほいじゃあ、ネズミ捕りをしてほしい家を紙に書いて……吾作は字は読めんかったんだっけ? おサエちゃんもか。ほいじゃあ、昼間におサエちゃんに話しとくで、それでいいだら?」
「うん」
と、そういう話になっていた。なので、吾作はさっそく村の誰かが教えに来てくれたのではないかと、気になっていたのだ。しかし、
「ううん。まだ来とらん」
おサエがそっけなく答えると、吾作は幾分かがっかりした。
「ほかー。まだ来とらんか~」
吾作は、じゃあ、今日はどうしたらいいのかなあ~……などと考えていると、ある事を思い出した。
「おサエちゃん。ほういや今日、庄屋さんトコの田植えは、どうなったん?」
「知らん。だって私も昼過ぎまで寝とったし、もう何かもう疲れちゃってて、今日一日、横になっとったもん」
笑いながらおサエは返した。吾作もハハハと笑って返した。
本来なら今日は庄屋さんが中心になって決めた田植えの日。しかしおサエはこの通り寝てしまっていたし、他の村人達も田植えには来れなかっただろう。と、吾作も思い、ついいっしょになって笑っていた。しかし内心、
(大丈夫だったかなあ?)
と、いう不安がよぎった。
そんな不安が的中するかのように、権兵衛が慌てた声を出しながらやってきた。
「ご、吾作! 大変だわ! 庄屋さん、どえらい怒っとる!」
その言葉を聞いて、吾作とおサエはその場で固まった。権兵衛は続けて、
「あ、あのな。今日の田植えな。人が半分も集まらんくてな、庄屋さんが激怒しちゃったんだわ。ほんでお前の事を話したら、
『吾作をウチへ連れてこい~!』
って、まあどえらい剣幕でなっっ。ほんだもんで吾作、悪いんだけど今すぐ庄屋さんトコ行ってくれ! 頼むわ!」
と、事情をすべて話すと、権兵衛はゼイゼイ、ハアハア、と、その場で息を整え始めた。
その話を聞いた吾作とおサエは、
「ど、どえらい事になっちゃったっっ!」
「ほ、ほんなん早よ庄屋さんトコ行かんと!」
と、二人は大慌てで準備を済ませたが、
「あれ? おサエちゃんも行くの?」
「ほや行くよ。私もぜんぜん庄屋さんトコに連絡とか、考えんかったもん」
と、おサエも行く気満々だったので、吾作はちょっと驚いた。それを見ていた権兵衛は、
「ま、まあいいで、二人とも早よ行こまい」
そんな訳で三人は慌てて庄屋さんの屋敷を目指して歩き出した。
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