17 / 70
吸血鬼 吾作とおサエの生活
田植えをしなかったがために
しおりを挟む
吾作は日が沈むと、すぐに目をパッチリ開けて、布団から飛び出した。何せ今日から、
『村の家のネズミ捕り』
と、いう新しい仕事を始める事になったのだ。
吾作は、自分がこんな化け物になったのに、自分を受け入れてくれる妻のおサエや村の人達に感謝しかなかった。その喜びで今日はもうやる気満々であった。
そんな吾作をおサエは微笑ましく夕飯を作りながら見ていた。すると吾作が、
「おサエちゃん! 順番分かった?」
と、おサエに聞いた。
順番とは、ネズミ退治をする家の順番である。今朝方、村人達と話した結果、
「ほいじゃあ、ネズミ捕りをしてほしい家を紙に書いて……吾作は字は読めんかったんだっけ? おサエちゃんもか。ほいじゃあ、昼間におサエちゃんに話しとくで、それでいいだら?」
「うん」
と、そういう話になっていた。なので、吾作はさっそく村の誰かが教えに来てくれたのではないかと、気になっていたのだ。しかし、
「ううん。まだ来とらん」
おサエがそっけなく答えると、吾作は幾分かがっかりした。
「ほかー。まだ来とらんか~」
吾作は、じゃあ、今日はどうしたらいいのかなあ~……などと考えていると、ある事を思い出した。
「おサエちゃん。ほういや今日、庄屋さんトコの田植えは、どうなったん?」
「知らん。だって私も昼過ぎまで寝とったし、もう何かもう疲れちゃってて、今日一日、横になっとったもん」
笑いながらおサエは返した。吾作もハハハと笑って返した。
本来なら今日は庄屋さんが中心になって決めた田植えの日。しかしおサエはこの通り寝てしまっていたし、他の村人達も田植えには来れなかっただろう。と、吾作も思い、ついいっしょになって笑っていた。しかし内心、
(大丈夫だったかなあ?)
と、いう不安がよぎった。
そんな不安が的中するかのように、権兵衛が慌てた声を出しながらやってきた。
「ご、吾作! 大変だわ! 庄屋さん、どえらい怒っとる!」
その言葉を聞いて、吾作とおサエはその場で固まった。権兵衛は続けて、
「あ、あのな。今日の田植えな。人が半分も集まらんくてな、庄屋さんが激怒しちゃったんだわ。ほんでお前の事を話したら、
『吾作をウチへ連れてこい~!』
って、まあどえらい剣幕でなっっ。ほんだもんで吾作、悪いんだけど今すぐ庄屋さんトコ行ってくれ! 頼むわ!」
と、事情をすべて話すと、権兵衛はゼイゼイ、ハアハア、と、その場で息を整え始めた。
その話を聞いた吾作とおサエは、
「ど、どえらい事になっちゃったっっ!」
「ほ、ほんなん早よ庄屋さんトコ行かんと!」
と、二人は大慌てで準備を済ませたが、
「あれ? おサエちゃんも行くの?」
「ほや行くよ。私もぜんぜん庄屋さんトコに連絡とか、考えんかったもん」
と、おサエも行く気満々だったので、吾作はちょっと驚いた。それを見ていた権兵衛は、
「ま、まあいいで、二人とも早よ行こまい」
そんな訳で三人は慌てて庄屋さんの屋敷を目指して歩き出した。
『村の家のネズミ捕り』
と、いう新しい仕事を始める事になったのだ。
吾作は、自分がこんな化け物になったのに、自分を受け入れてくれる妻のおサエや村の人達に感謝しかなかった。その喜びで今日はもうやる気満々であった。
そんな吾作をおサエは微笑ましく夕飯を作りながら見ていた。すると吾作が、
「おサエちゃん! 順番分かった?」
と、おサエに聞いた。
順番とは、ネズミ退治をする家の順番である。今朝方、村人達と話した結果、
「ほいじゃあ、ネズミ捕りをしてほしい家を紙に書いて……吾作は字は読めんかったんだっけ? おサエちゃんもか。ほいじゃあ、昼間におサエちゃんに話しとくで、それでいいだら?」
「うん」
と、そういう話になっていた。なので、吾作はさっそく村の誰かが教えに来てくれたのではないかと、気になっていたのだ。しかし、
「ううん。まだ来とらん」
おサエがそっけなく答えると、吾作は幾分かがっかりした。
「ほかー。まだ来とらんか~」
吾作は、じゃあ、今日はどうしたらいいのかなあ~……などと考えていると、ある事を思い出した。
「おサエちゃん。ほういや今日、庄屋さんトコの田植えは、どうなったん?」
「知らん。だって私も昼過ぎまで寝とったし、もう何かもう疲れちゃってて、今日一日、横になっとったもん」
笑いながらおサエは返した。吾作もハハハと笑って返した。
本来なら今日は庄屋さんが中心になって決めた田植えの日。しかしおサエはこの通り寝てしまっていたし、他の村人達も田植えには来れなかっただろう。と、吾作も思い、ついいっしょになって笑っていた。しかし内心、
(大丈夫だったかなあ?)
と、いう不安がよぎった。
そんな不安が的中するかのように、権兵衛が慌てた声を出しながらやってきた。
「ご、吾作! 大変だわ! 庄屋さん、どえらい怒っとる!」
その言葉を聞いて、吾作とおサエはその場で固まった。権兵衛は続けて、
「あ、あのな。今日の田植えな。人が半分も集まらんくてな、庄屋さんが激怒しちゃったんだわ。ほんでお前の事を話したら、
『吾作をウチへ連れてこい~!』
って、まあどえらい剣幕でなっっ。ほんだもんで吾作、悪いんだけど今すぐ庄屋さんトコ行ってくれ! 頼むわ!」
と、事情をすべて話すと、権兵衛はゼイゼイ、ハアハア、と、その場で息を整え始めた。
その話を聞いた吾作とおサエは、
「ど、どえらい事になっちゃったっっ!」
「ほ、ほんなん早よ庄屋さんトコ行かんと!」
と、二人は大慌てで準備を済ませたが、
「あれ? おサエちゃんも行くの?」
「ほや行くよ。私もぜんぜん庄屋さんトコに連絡とか、考えんかったもん」
と、おサエも行く気満々だったので、吾作はちょっと驚いた。それを見ていた権兵衛は、
「ま、まあいいで、二人とも早よ行こまい」
そんな訳で三人は慌てて庄屋さんの屋敷を目指して歩き出した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
逢魔ヶ刻の迷い子3
naomikoryo
ホラー
——それは、閉ざされた異世界からのSOS。
夏休みのある夜、中学3年生になった陽介・隼人・大輝・美咲・紗奈・由香の6人は、受験勉強のために訪れた図書館で再び“恐怖”に巻き込まれる。
「図書館に大事な物を忘れたから取りに行ってくる。」
陽介の何気ないメッセージから始まった異変。
深夜の図書館に響く正体不明の足音、消えていくメッセージ、そして——
「ここから出られない」と助けを求める陽介の声。
彼は、次元の違う同じ場所にいる。
現実世界と並行して存在する“もう一つの図書館”。
六人は、陽介を救うためにその謎を解き明かしていくが、やがてこの場所が“異世界と繋がる境界”であることに気付く。
七不思議の夜を乗り越えた彼らが挑む、シリーズ第3作目。
恐怖と謎が交錯する、戦慄のホラー・ミステリー。
「境界が開かれた時、もう戻れない——。」
赤月の夜の生贄
喜島 塔
ホラー
このお話は、ある看護師が語る、悍ましい死を遂げた患者さんの話です。
「今夜は、赤い月が出ているのね」
眞方呂(まほろ)さんという名の還暦間近の寡黙な美しい御婦人が明かした最初で最期の身の上話は俄かには信じがたいものでした。地図に載っていない閉鎖的な集落に生まれ育った眞方呂さんは、集落を護る”赤月之命(あかつきのみこと)”様への生贄に選ばれて……
あの夜、病室で起こった出来事が真実だったのか悪夢だったのかを知っているのは、あの日の夜の赤い月だけなのです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる