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吾作、吸血鬼になる
考える吾作
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吾作は煙を出しながら闇夜の中を無我夢中になって飛び回り、森の中へ潜り込むと地上にいたネズミを見つけるや否や、あっという間に捕まえてガブリと噛みつき、一気に血を飲み干した。
そうして、ようやく身体中の痛みが少し引いてきたのを感じた吾作は、まじまじと手の中の干からびたネズミを見た。
そして昨日のウサギの事を思い出し、
(この子も生き返る)
と、思った。吾作は、どうする? と、考えた末、
「ごめんなさい」
と、言うと、その血を飲み干して、カラカラに干からびたネズミの首を、
バキっ!
と、もぎ取った。
首を取ってしまえば生き返っても血は吸えないと、考えたからだった。
そして今晩の事を考えた。
(どうやらわしは、和尚さんのあの光がダメだし、神様仏様が全部ダメになっちゃったらしいわ。それに何かおろろ~の声も聞こえたぞ? わしを化け物にする気だったんだな? まあもう化け物だけど。ほいでも絶対、人の血は吸わんでな! しかし村のみんなは、もうわしとは、きっと付き合ってくれんな。
おサエちゃんも、もうわしが恐くなっちゃったよな? いつ、わしが血を吸いに噛みつくか分からんし……さっき噛みつこうとしたし……空も飛んできちゃったし……あれ? 何でわし、空、飛んだ?)
ここでようやく自分が何かに変化して空を飛んだ事に気づいた吾作であった。
それに身体中の傷はやはりネズミの血を飲んで治ってきたようだ。
(わしは血さえ飲めば、傷も治るのか……ホントに化け物になっちゃったようだわ。でもまだ血がほしい……)
そう思った吾作は、近くにネズミやウサギがいないか探すと、すぐにネズミを見つけ、捕まえて血を飲み干し、先程と同じように首をもぎ取った。
(な、何か、血を飲むたびにこんなネズミ達を殺さんといかんのか……しんどいわ……まあ、身体が治ってきた気はするけど…………しんどいなあ……しかしこれからどうする?)
と、しばらく考えた。
正直、家には帰りづらかったが、このまま家に戻らないと、何か自分と、この身体の中にうごめいている化け物に負けた気がするし、そしてオロロックのような化け物に本当になってしまう気がする。
それに何よりおサエの顔がこれから見れなくなるのが嫌だった。しかしこのままでは、いつおサエを傷つけてしまうか分からない。それも嫌だ。じゃあ、どうする?
こんな事を延々ぐるぐる考えてしまい、自分がどうしたらいいのかさっぱり答えが見つからなくなり、何だか涙も出てきた。が、最終的に、
(やっぱりおサエちゃんと離れるのは嫌だああああああああああ!)
と、自分の気持ちに素直になったところで、
「やっぱり帰って、村のみんなに相談しよう!」
と、覚悟を決めた吾作は、家に帰る事にした。
(しかし、さっきどうやって空を飛んだ? ほいでここどこ?)
吾作は無我夢中でこの場所に来たので、ここがどこかさっぱり分からなかった。
吾作はとりあえず家に帰る事にして、オオカミに変化し、先程のネズミ二匹の死骸をくわえ、あっという間に森を抜け、分かる場所はないか探しまくり、そこそこの時間をかけて家の方へ向かった。
吾作の家では、おサエをはじめ、そこにいたみんなが家に上がったり縁側に座ったりと、皆がだらだらと吾作の帰りを待っていた。
しかしなかなか帰って来ない。
「どうする? まあ帰って来んかもしれんなあ」
村人の一人が言い始めた。しかしおサエは、
「あの人は絶対帰って来るわ! だって他に行くとこなんかないもん」
と、言うとみんな笑い、
「確かに」
と、権兵衛が言った。
そんな感じでその場の空気が和んだ時、和尚さんが口を開いた。
「なあ皆の衆。ほいで吾作が帰ってきたらどうする気だん? まだ吾作をどうこうしようって話を続けるだかん?」
それを聞いたおサエは、村人達みんなの顔を見渡した。
村人達は全員、神妙な顔つきをして、誰も何も言わない。そこに彦ニイが、
「う~ん。さっきのあの痛々しいの見ちゃうと、何かなあ。あれはわしにはかわいい弟みたいなもんだしなあ」
と、言い始めた。長三郎も、
「何か……これはこれで辛いわ」
と、言った。その言葉に他の村人達も賛同するように頭を縦にふった。それを見た権兵衛が、
「ほんなら、吾作が帰ってきたら、まあ攻めるのやめよまい。ほいで、あいつが今後どうするかみんなで決めたらええだらあ」
と、みんなをさとすように言った。村人達は、その意見に賛成した。和尚さんも、うんうん。と、みんなの様子を見守り、おサエはそのみんなの態度に幾分か安心した。
そんな時、家に向かってだんだんと近づいて来る足跡が聞こえだした。みんながその音に注目していると、オオカミが一匹、ネズミをくわえて走って来た。
家の外にいた村人達は、
「うわあああああ!」
と、あちこちに逃げたり、家の中へ逃げ込んだ。
そのオオカミは家の前まで来ると、す~っと吾作の姿に変わった。それを見て、
「やっぱり吾作とはいっしょにおれん~!」
「この化物があ~!」
と、村人達が騒ぎ始めた。おサエは、
「せっかくいい感じになってたのに~っっ!」
と、ガックリ頭をうなだれた。
そうして、ようやく身体中の痛みが少し引いてきたのを感じた吾作は、まじまじと手の中の干からびたネズミを見た。
そして昨日のウサギの事を思い出し、
(この子も生き返る)
と、思った。吾作は、どうする? と、考えた末、
「ごめんなさい」
と、言うと、その血を飲み干して、カラカラに干からびたネズミの首を、
バキっ!
と、もぎ取った。
首を取ってしまえば生き返っても血は吸えないと、考えたからだった。
そして今晩の事を考えた。
(どうやらわしは、和尚さんのあの光がダメだし、神様仏様が全部ダメになっちゃったらしいわ。それに何かおろろ~の声も聞こえたぞ? わしを化け物にする気だったんだな? まあもう化け物だけど。ほいでも絶対、人の血は吸わんでな! しかし村のみんなは、もうわしとは、きっと付き合ってくれんな。
おサエちゃんも、もうわしが恐くなっちゃったよな? いつ、わしが血を吸いに噛みつくか分からんし……さっき噛みつこうとしたし……空も飛んできちゃったし……あれ? 何でわし、空、飛んだ?)
ここでようやく自分が何かに変化して空を飛んだ事に気づいた吾作であった。
それに身体中の傷はやはりネズミの血を飲んで治ってきたようだ。
(わしは血さえ飲めば、傷も治るのか……ホントに化け物になっちゃったようだわ。でもまだ血がほしい……)
そう思った吾作は、近くにネズミやウサギがいないか探すと、すぐにネズミを見つけ、捕まえて血を飲み干し、先程と同じように首をもぎ取った。
(な、何か、血を飲むたびにこんなネズミ達を殺さんといかんのか……しんどいわ……まあ、身体が治ってきた気はするけど…………しんどいなあ……しかしこれからどうする?)
と、しばらく考えた。
正直、家には帰りづらかったが、このまま家に戻らないと、何か自分と、この身体の中にうごめいている化け物に負けた気がするし、そしてオロロックのような化け物に本当になってしまう気がする。
それに何よりおサエの顔がこれから見れなくなるのが嫌だった。しかしこのままでは、いつおサエを傷つけてしまうか分からない。それも嫌だ。じゃあ、どうする?
こんな事を延々ぐるぐる考えてしまい、自分がどうしたらいいのかさっぱり答えが見つからなくなり、何だか涙も出てきた。が、最終的に、
(やっぱりおサエちゃんと離れるのは嫌だああああああああああ!)
と、自分の気持ちに素直になったところで、
「やっぱり帰って、村のみんなに相談しよう!」
と、覚悟を決めた吾作は、家に帰る事にした。
(しかし、さっきどうやって空を飛んだ? ほいでここどこ?)
吾作は無我夢中でこの場所に来たので、ここがどこかさっぱり分からなかった。
吾作はとりあえず家に帰る事にして、オオカミに変化し、先程のネズミ二匹の死骸をくわえ、あっという間に森を抜け、分かる場所はないか探しまくり、そこそこの時間をかけて家の方へ向かった。
吾作の家では、おサエをはじめ、そこにいたみんなが家に上がったり縁側に座ったりと、皆がだらだらと吾作の帰りを待っていた。
しかしなかなか帰って来ない。
「どうする? まあ帰って来んかもしれんなあ」
村人の一人が言い始めた。しかしおサエは、
「あの人は絶対帰って来るわ! だって他に行くとこなんかないもん」
と、言うとみんな笑い、
「確かに」
と、権兵衛が言った。
そんな感じでその場の空気が和んだ時、和尚さんが口を開いた。
「なあ皆の衆。ほいで吾作が帰ってきたらどうする気だん? まだ吾作をどうこうしようって話を続けるだかん?」
それを聞いたおサエは、村人達みんなの顔を見渡した。
村人達は全員、神妙な顔つきをして、誰も何も言わない。そこに彦ニイが、
「う~ん。さっきのあの痛々しいの見ちゃうと、何かなあ。あれはわしにはかわいい弟みたいなもんだしなあ」
と、言い始めた。長三郎も、
「何か……これはこれで辛いわ」
と、言った。その言葉に他の村人達も賛同するように頭を縦にふった。それを見た権兵衛が、
「ほんなら、吾作が帰ってきたら、まあ攻めるのやめよまい。ほいで、あいつが今後どうするかみんなで決めたらええだらあ」
と、みんなをさとすように言った。村人達は、その意見に賛成した。和尚さんも、うんうん。と、みんなの様子を見守り、おサエはそのみんなの態度に幾分か安心した。
そんな時、家に向かってだんだんと近づいて来る足跡が聞こえだした。みんながその音に注目していると、オオカミが一匹、ネズミをくわえて走って来た。
家の外にいた村人達は、
「うわあああああ!」
と、あちこちに逃げたり、家の中へ逃げ込んだ。
そのオオカミは家の前まで来ると、す~っと吾作の姿に変わった。それを見て、
「やっぱり吾作とはいっしょにおれん~!」
「この化物があ~!」
と、村人達が騒ぎ始めた。おサエは、
「せっかくいい感じになってたのに~っっ!」
と、ガックリ頭をうなだれた。
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