12 / 70
吾作、吸血鬼になる
村人達、吾作の家に集まる
しおりを挟む
村人たち十数人が吾作の家に着くまで、吾作とおサエは縁側で座って待っていた。
たいまつの火がゆらゆらとこちらに迫ってくる。
吾作にはそのたいまつの灯りの奥に、更に何か眩しく光る物が見えた。しかし何かは分からず、おサエに聞いても、
「?」
と、なるだけで、どうやら自分しか見えていないようだった。
そのたいまつの灯りを二人が見ていると、一つの灯りがこちらへ走って来て、
「吾作! 吾作がおるぞ!」
と、叫んだ。すると、後ろのたいまつの灯り軍団が、駆け寄ってきた。
そして縁側に座っている吾作とおタケの目の前までやってきた。が、すぐに吾作の変貌ぶりを見て、
「わあああっっ!」
と、後ずさった。そのたいまつの灯り軍団は十数人おり、その中にはおタケの旦那の与平や権兵衛もいた。
「や、やっぱり、ご、吾作、ば、化け物になっちまったのかん!」
「それとも何かに取り憑かれちまったのか?」
と、長三郎と彦ニイが話してきた。それらを聞いていた権兵衛は少し困った顔で、
「ちょっとまあ待ちんて~。ほんないきなり怒鳴らんでも~っっ」
と、村人達をなだめに入るが、
「うるさいわ! たわけー! おまえもあれを見て何とも思わへんのか?」
と、言い返され、権兵衛はしぶしぶ黙るしかなくなってしまった。
与平はそのやり取りを見て、みんなの凄みにやや戸惑っていた。
「ほ、ほんな恐がらんでくれや~。わしだってよく分かっとらんだもんで~」
吾作はオロオロしながら嘆いたが、彦ニイが、
「おサエちゃん! 早よ吾作から離れりん! いつ襲われるか分からんに!」
と、吾作の話など無視して叫んだ。それを聞いたおサエは、
「ほんな、たわけな事言うな! 離れーへんわ!」
と、彦ニイに返した。その時おサエの姉の旦那の与平も、
「おサエちゃん。その吾作はまあ吾作じゃないだで。もう駄目なんだよ」
と、ちょっと困った顔でなだめるように言ってきた。おサエは顔を真っ赤にして、
「何で? 与平はなんちゅう事言うだん! このアホンダラ! たわけ!」
と、怒鳴った。そして吾作は悲しくなった。権兵衛も、
「おまえ、身内だら? 正気か?」
マジマジと与平の顔を見ながら言った。
与平はそんなに言い返されると思っていなかったのか、とても驚いた。その時彦ニイが、
「おい、与平。おまえ、庄屋さんにこの事言って来ただかん? 知らせんとまずいだら」
と、凄みのある声で聞いた。
「あ、いや、まだ言っとらん。おタケに今日は言うな! って言われちゃって……」
与平はしょぼくれた感じで返事をすると、
「は! 情けねえ野郎だ! 好きにせい!」
と、彦ニイは吐き捨て、与平から離れた。
与平は、周りの村人が自分を見ていない事を確認すると、静かに他の村人達の後ろへ下がって行った。
そんな間も村人達と吾作、おサエ、権兵衛との押し問答は続けていた。あまりに村人達は二人が言う事を聞かないので、
「おっしゃ! 吾作! おサエ! 今、和尚さん連れて来とるで、覚悟しりん! 和尚さん! よろしくお願いします!」
と、彦ニイが大声で叫んだ。すると少し間があった後、
「おまえら、歩くの速いわ~」
と、和尚さんがうんしょ、うんしょ、と、ゆっくり現れた。
たいまつの火がゆらゆらとこちらに迫ってくる。
吾作にはそのたいまつの灯りの奥に、更に何か眩しく光る物が見えた。しかし何かは分からず、おサエに聞いても、
「?」
と、なるだけで、どうやら自分しか見えていないようだった。
そのたいまつの灯りを二人が見ていると、一つの灯りがこちらへ走って来て、
「吾作! 吾作がおるぞ!」
と、叫んだ。すると、後ろのたいまつの灯り軍団が、駆け寄ってきた。
そして縁側に座っている吾作とおタケの目の前までやってきた。が、すぐに吾作の変貌ぶりを見て、
「わあああっっ!」
と、後ずさった。そのたいまつの灯り軍団は十数人おり、その中にはおタケの旦那の与平や権兵衛もいた。
「や、やっぱり、ご、吾作、ば、化け物になっちまったのかん!」
「それとも何かに取り憑かれちまったのか?」
と、長三郎と彦ニイが話してきた。それらを聞いていた権兵衛は少し困った顔で、
「ちょっとまあ待ちんて~。ほんないきなり怒鳴らんでも~っっ」
と、村人達をなだめに入るが、
「うるさいわ! たわけー! おまえもあれを見て何とも思わへんのか?」
と、言い返され、権兵衛はしぶしぶ黙るしかなくなってしまった。
与平はそのやり取りを見て、みんなの凄みにやや戸惑っていた。
「ほ、ほんな恐がらんでくれや~。わしだってよく分かっとらんだもんで~」
吾作はオロオロしながら嘆いたが、彦ニイが、
「おサエちゃん! 早よ吾作から離れりん! いつ襲われるか分からんに!」
と、吾作の話など無視して叫んだ。それを聞いたおサエは、
「ほんな、たわけな事言うな! 離れーへんわ!」
と、彦ニイに返した。その時おサエの姉の旦那の与平も、
「おサエちゃん。その吾作はまあ吾作じゃないだで。もう駄目なんだよ」
と、ちょっと困った顔でなだめるように言ってきた。おサエは顔を真っ赤にして、
「何で? 与平はなんちゅう事言うだん! このアホンダラ! たわけ!」
と、怒鳴った。そして吾作は悲しくなった。権兵衛も、
「おまえ、身内だら? 正気か?」
マジマジと与平の顔を見ながら言った。
与平はそんなに言い返されると思っていなかったのか、とても驚いた。その時彦ニイが、
「おい、与平。おまえ、庄屋さんにこの事言って来ただかん? 知らせんとまずいだら」
と、凄みのある声で聞いた。
「あ、いや、まだ言っとらん。おタケに今日は言うな! って言われちゃって……」
与平はしょぼくれた感じで返事をすると、
「は! 情けねえ野郎だ! 好きにせい!」
と、彦ニイは吐き捨て、与平から離れた。
与平は、周りの村人が自分を見ていない事を確認すると、静かに他の村人達の後ろへ下がって行った。
そんな間も村人達と吾作、おサエ、権兵衛との押し問答は続けていた。あまりに村人達は二人が言う事を聞かないので、
「おっしゃ! 吾作! おサエ! 今、和尚さん連れて来とるで、覚悟しりん! 和尚さん! よろしくお願いします!」
と、彦ニイが大声で叫んだ。すると少し間があった後、
「おまえら、歩くの速いわ~」
と、和尚さんがうんしょ、うんしょ、と、ゆっくり現れた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
兵頭さん
大秦頼太
ホラー
鉄道忘れ物市で見かけた古い本皮のバッグを手に入れてから奇妙なことが起こり始める。乗る電車を間違えたり、知らず知らずのうちに廃墟のような元ニュータウンに立っていたりと。そんなある日、ニュータウンの元住人と出会いそのバッグが兵頭さんの物だったと知る。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
悪魔の家
光子
ホラー
バス事件に巻き込まれた乗客達が、生きて戻れないと噂される悪魔の森で、悲惨な事件に巻き込まれていくーー。
16歳の少女あかりは、無事にこの森から、生きて脱出出来るのかーー。
辛い悲しい人間模様が複雑に絡み合うダークな物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
牛の首チャンネル
猫じゃらし
ホラー
どうもー。『牛の首チャンネル』のモーと、相棒のワンさんです。ご覧いただきありがとうございます。
このチャンネルは僕と犬のぬいぐるみに取り憑かせた幽霊、ワンさんが心霊スポットに突撃していく動画を投稿しています。
怖い現象、たくさん起きてますので、ぜひ見てみてくださいね。
心霊写真特集もやりたいと思っていますので、心霊写真をお持ちの方はコメント欄かDMにメッセージをお願いします。
よろしくお願いしまーす。
それでは本編へ、どうぞー。
※小説家になろうには「牛の首」というタイトル、エブリスタには「牛の首チャンネル」というタイトルで投稿しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる