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吾作、吸血鬼になる
吾作とおサエ
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むかしむかし、小さな村に吾作という若者が嫁っ子のおサエと二人で暮らしていた。
吾作は貧しい農家の一人息子だったので、とても大切に育てられた。
背が小さく、つぶらな目をしていてとても童顔で少年のようないでたちだったが、性格も大人しくてバカ正直、純粋で素朴でとても真面目な性格だったので、ホントに少年のような男だった。
嫁っ子のおサエは吾作の家の近くの農家の娘で、一人少し歳の離れた姉がいる。その姉はずいぶん前に嫁に行き、しばらくは一人娘のように育てられた。おサエも背が小さく少女のようないでたちで、性格もやっぱり大人しく、素朴そのものだった。
二人は小さい頃から家族同士の仲がよかった事もあり、とても仲がよかった。その仲の良さは村人たち全員が知っていたので、将来はいっしょになるだろう。と、言われていた。
なのでホントに結婚した時には、当然のようにこの上ない祝福をうけた。
しかしおサエが吾作の家に嫁いですぐに吾作の両親が死んでしまったので、この家には働き手が少なくなり、いっきに貧しくなった。
それでも二人は気にせずせっせと真面目に働いた。
ふだんは畑仕事などしているが、仕事が一段落すると、歩いて一時間ほど離れたところにある小さな海岸へ行くのが習慣になっていた。
その海岸でのんびりと海を眺めたり潮風を浴びるのが二人とも大好きだったので、だいたい十日に一回はその海岸へ出かけていた。
そんな二人を村人達は、
「ようそんなトコまでしょっちゅう行くわあ~」
と、半ばあきれられていた。
その日も雲一つない快晴で、
ちょっと風が強いかな?
と思うけどそんなに気温も高くなく、絶好のお出かけびよりだったので、吾作とおサエは畑仕事もそこそこに海岸へ出かける事にした。
本当は三日後に村総出の田植えが始まるので、それまでに畑の仕事を一段落させないといけないのだが、二人は若干ノンキなところがあり、まだ時間もあるし、
今日は海に行こう!
と、言う事になったのだった。
そんな二人だった。
いつものようにウキウキしながら海岸へ行く道を歩いて行くと、近所でいつもお世話になっている彦ニイが畑作業の最中で、
「何だ? おまえら、今日も海に行くだかん。ほんなんで田植え、大丈夫かん?」
と、声をかけてきたので、
「大丈夫だらあ♪」
と、吾作は彦ニイに手を振って笑顔で答えた。おサエも、
「彦ニイ! ガンバって~!」
と、自分達こそ頑張らないと行けないのに、彦ニイに声援を送るのであった。
そんなノンキな二人は海岸へ向かって歩いていった。
途中で小川と並行になるこの道は、たいして人の往来がない。お地蔵さんにあいさつをしたり、その小川を見たりと、のんびり歩いていくと、小さないつもの海岸に出た。
その海岸は周囲を大きな崖で塞がれており、周囲からも孤立している。
吾作はその海岸が目的地なのだが、その道はまだ続いていて、海沿いに崖を登るように上がりまた下るとさらに大きな海岸があり、その先には漁村がある。
なのでそちらの海岸は常に人がいて賑やかで、手前の小さな海岸は誰も来ないちょっとした穴場だった。
たまに漁村の人が漁をするのか簡単な小屋が一つあるが、吾作はそこを誰かが使っているところを見た事はなかった。
吾作はそんな人の来ない静かな海岸でおサエとのんびりするのが昔から好きだった。
その日もそのつもりで海に向かった。
しかしこの日はいつもと海の様子が違った。
吾作は貧しい農家の一人息子だったので、とても大切に育てられた。
背が小さく、つぶらな目をしていてとても童顔で少年のようないでたちだったが、性格も大人しくてバカ正直、純粋で素朴でとても真面目な性格だったので、ホントに少年のような男だった。
嫁っ子のおサエは吾作の家の近くの農家の娘で、一人少し歳の離れた姉がいる。その姉はずいぶん前に嫁に行き、しばらくは一人娘のように育てられた。おサエも背が小さく少女のようないでたちで、性格もやっぱり大人しく、素朴そのものだった。
二人は小さい頃から家族同士の仲がよかった事もあり、とても仲がよかった。その仲の良さは村人たち全員が知っていたので、将来はいっしょになるだろう。と、言われていた。
なのでホントに結婚した時には、当然のようにこの上ない祝福をうけた。
しかしおサエが吾作の家に嫁いですぐに吾作の両親が死んでしまったので、この家には働き手が少なくなり、いっきに貧しくなった。
それでも二人は気にせずせっせと真面目に働いた。
ふだんは畑仕事などしているが、仕事が一段落すると、歩いて一時間ほど離れたところにある小さな海岸へ行くのが習慣になっていた。
その海岸でのんびりと海を眺めたり潮風を浴びるのが二人とも大好きだったので、だいたい十日に一回はその海岸へ出かけていた。
そんな二人を村人達は、
「ようそんなトコまでしょっちゅう行くわあ~」
と、半ばあきれられていた。
その日も雲一つない快晴で、
ちょっと風が強いかな?
と思うけどそんなに気温も高くなく、絶好のお出かけびよりだったので、吾作とおサエは畑仕事もそこそこに海岸へ出かける事にした。
本当は三日後に村総出の田植えが始まるので、それまでに畑の仕事を一段落させないといけないのだが、二人は若干ノンキなところがあり、まだ時間もあるし、
今日は海に行こう!
と、言う事になったのだった。
そんな二人だった。
いつものようにウキウキしながら海岸へ行く道を歩いて行くと、近所でいつもお世話になっている彦ニイが畑作業の最中で、
「何だ? おまえら、今日も海に行くだかん。ほんなんで田植え、大丈夫かん?」
と、声をかけてきたので、
「大丈夫だらあ♪」
と、吾作は彦ニイに手を振って笑顔で答えた。おサエも、
「彦ニイ! ガンバって~!」
と、自分達こそ頑張らないと行けないのに、彦ニイに声援を送るのであった。
そんなノンキな二人は海岸へ向かって歩いていった。
途中で小川と並行になるこの道は、たいして人の往来がない。お地蔵さんにあいさつをしたり、その小川を見たりと、のんびり歩いていくと、小さないつもの海岸に出た。
その海岸は周囲を大きな崖で塞がれており、周囲からも孤立している。
吾作はその海岸が目的地なのだが、その道はまだ続いていて、海沿いに崖を登るように上がりまた下るとさらに大きな海岸があり、その先には漁村がある。
なのでそちらの海岸は常に人がいて賑やかで、手前の小さな海岸は誰も来ないちょっとした穴場だった。
たまに漁村の人が漁をするのか簡単な小屋が一つあるが、吾作はそこを誰かが使っているところを見た事はなかった。
吾作はそんな人の来ない静かな海岸でおサエとのんびりするのが昔から好きだった。
その日もそのつもりで海に向かった。
しかしこの日はいつもと海の様子が違った。
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