窓側の指定席

アヒルネコ

文字の大きさ
上 下
22 / 31
平成30年1月13日 坂本かえで

疑念

しおりを挟む
「ねえ、健介くん。何で札幌駅に来てたの?」
かえでは疑問をぶつけた。

「今日、友人が遊びに来る予定で駅に行ったんですけど、仕事が入ったらしくドタキャンされちゃって。僕も友人も、不定期なシフトで仕事してるんで、しょうがないかなって」
「あら、そうなんだ。ツイてないね」
「でも、こうやってお2人を見つけられたし、結果オーライですよ」

 こんなおばさん2人乗せて、楽しいのだろうか?たたしかに、彼女のお母さんとは言えど・・・

「高速道路乗りますね!お金は気にしないでください!」

 随分と気前が良い。そして、話がうまい。なぜだろう、似たものを感じる。

「健介くんは、ひかりのどこが気に入ったの?」
「全部ですよ!これほんとです!」

 ・・あぁ、多分察するに『顔』だな。全部っていう男は大体同じことを言う。かえでは職業柄、なんとなく男の考えることがわかった。



 新得町(札幌と帯広の間あたり)を過ぎたあたりで、健介は左ウィンカーを出した。

「あれ、帯広まで高速乗らないの?」
陽子は不思議そうに、フロントミラー越しに健介の顔をみた。

「あえてここの十勝清水インターチェンジで降りて、国道の裏道で走った方が早いんです」
「へえ、帯広に詳しいんだね」
「昔、帯広に住んでたんですよ。中学2年生のときに親の転勤で札幌に住むことになって」

 陽子と健介の話しを聞いていると、かえでに、ふと疑問が浮かんだ。

「ということは、遠距離恋愛なの?ひかりと」

「・・・そうですよ、たまにしか会えないんです」

 また妙な間があった。何を隠しているのだろう。
とりあえず、無事にホテルに到着すれば良いのだが。
 そう言えば、友人にドタキャンされた彼は、果たしてどんな理由で帯広に行きたいのだろう。

「健介くんは、帯広に何の用事があるの?」

「本当は、ドタキャンされたやつと帯広で豚丼たべて、夜は中学の時に仲が良かった友達含めて飲み会して適当にビジネスホテルかネットカフェにでも泊まろうかと思ってたんですよ」

「ドタキャン君は、夜一緒にご飯たべないの?」

「そうです、ドタキャン君は帯広にいる友人宅で飲み会するらしくて。要は、足にされてたんです。ハハハ」

「なんかかわいそうだね、今度おばさんのお店来なよ。砂川だけどね」

「そうですね、ひかりさんと行きますよ」


 そうこうしているうちに、十勝第一ホテルに到着した。陽子が、お礼に少ないが現金を渡そうとしたが、健介は頑なに断った。

「すいません、かえでさん。夜にお話ししたいことがあるのですが、電話番号おしえてもらっても良いですか?」

「え、いいけど直接今じゃ駄目なの?」

「あ、出来れば電話が良いのですが・・」

「わかったよ」

 そう言って、かえでは電話番号を伝えた。
夜8時ころに電話するとのことだ。


 ・・・ちょうど良いかも知れない。


 かえで自身も、色々と聞きたいことがあった。


 ・・・この健介という男、多分『夜の仕事』している。そして、ひかりとの関係について何か隠している。


 ・・・まずは、温泉を楽しもう。
かえでと陽子は、ホテルの受付へ向かった。


しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

命の質屋

たかつき
恋愛
【命の質屋】という超能力を手に入れた男。  思いがけず特殊な力を手に入れた男。  あるきっかけから新たなビジネスを始め、巨万の富を得ることになる。  同時期に親友の彼女からの紹介により出会った女性とも良好な関係を築いていくのだが……まさかの事態に。  男は難しい選択を迫られる事になる。  物のように命を扱った男に待ち受けていた運命とは?  タイトル以上にほのぼの作品だと思っています。  ジャンルは青春×恋愛×ファンタジーです。  ◇◆◇◆◇  お読み頂きありがとうございます!  ストックの無い状態から始めますので、一話あたり約千文字くらいでの連載にしようと思っています。  少しでも気になる、面白いと思って頂けましたら、リアクションをください! 励みになります!  どうぞ宜しくお願い致します!  

【完結】内緒で死ぬことにした  〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜

たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。 でもわたしは利用価値のない人間。 手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか? 少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。 生きることを諦めた女の子の話です ★異世界のゆるい設定です

微熱の午後 l’aprés-midi(ラプレミディ)

犬束
現代文学
 夢見心地にさせるきらびやかな世界、優しくリードしてくれる年上の男性。最初から別れの定められた、遊びの恋のはずだった…。  夏の終わり。大学生になってはじめての長期休暇の後半をもてあます葉《よう》のもとに知らせが届く。  “大祖父の残した洋館に、映画の撮影クルーがやって来た”  好奇心に駆られて訪れたそこで、葉は十歳年上の脚本家、田坂佳思《けいし》から、ここに軟禁されているあいだ、恋人になって幸福な気分で過ごさないか、と提案される。  《第11回BL小説大賞にエントリーしています。》☜ 10月15日にキャンセルしました。  読んでいただけるだけでも、エールを送って下さるなら尚のこと、お腹をさらして喜びます🐕🐾

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

処理中です...