17 / 31
平成30年2月19日
縦の線
しおりを挟む
コンコンコン
会議室をノックする音が聞こえる。
「霧島さん、会議室で係長がお話したいそうです」
この声は、横山ひかりの声だ。
・・大久保くんの話、その先がすごくすごく気になる。同じタイミングで辞めてないし、独立の誘いは断ったと思うが・・
「大久保くん、続きは後ほど聞かせて?」
「はい、承知しました」
大久保は、会議室を出ていった。
コンコンコン
「失礼するよ」
係長が会議室に入ってきた。
「係長、お話とは何でしょうか?」
「君はつくづく察しが悪いね」
「え、すいません。本当にわかりません」
悠一は、ここ最近の出来事と今の状況を結びつけるものがないか考えを巡らせたが、1ミリも見当がつかない。
係長が口を開いた。
「立花くんが居なくなった今、誰が会社を引っ張って行くと思う?君だろ?違うのか?」
悠一の額に油汗が滲んできた。
「会社を引っ張っていく中の1人だとは思いますが・・」
「だろ?つまりだな・・君は今日から『主任』になるんだよ。やったな、イレギュラーとは言えど昇進だぞ?」
「え・・」
悠一は言葉を失った。
本来なら、立花が今も主任をやっていたはずだ。
そして、立花にトドメを刺したのは紛れもなく自分だ。
そんな人間が、職場で肩書きなんかもらう資格有るのだろうか。
嬉しいという感情は微塵も無かった。
「あの・・係長、教えてください。なぜ、浩二じゃないんでしょうか?」
「あー、渡辺くんかい?論外だよ、論外。あんな歩くスピーカーみたいな人間が主任になったら、会社終わっちゃうよ。まず、勤務態度も良くないしさ。会社への文句しか言わないだろアイツ。人として終わってると思わないかい?その点、君は真面目だし目立ったミスも無いし、まあ主任くらい任せていいんじゃないかなってさ」
・・・プチンッ
悠一の心の中で、何かが弾けた。
「係長、いい加減にしてください!!」
悠一は声を張り上げた。
「何だその口のききかたは!」
負けじと係長も声を出した。
「私をバカにするのは、いくらでも構いません。でも、同期の浩二をバカにするのは許せません!あいつは太陽のような存在なんです、だからこの職場はみんな笑顔が絶えないんですよ!主任に相応しいのは私じゃない、浩二です!もう一度、考え直してください!」
「駄目だ、あいつには務まらん。お前がやれ」
係長は冷静に、淡々と言った。
「・・私が、断ったらどうしますか?」
「・・それはお前が決めることじゃない」
「・・少し時間を下さい。浩二と話がしたいです」
「わかった、でも渡辺は急遽、取引先とのトラブル対応で外出してる。帰りは何時になるかわからん、明日の朝一番に会社で話し合って、結果を報告してくれ」
「わかりました」
悠一は、明日を待たずして話をするつもりであった。
浩二が、飲み会の誘いを断る訳無いからだ。そうだ、秀人も連れて行こう。今日は半ば強制参加だな、話の続きがしたい。
・・・悠一は、浩二の帰りを待っていた。
【《平成30年1月13日 坂本かえで》編へ続く。】
会議室をノックする音が聞こえる。
「霧島さん、会議室で係長がお話したいそうです」
この声は、横山ひかりの声だ。
・・大久保くんの話、その先がすごくすごく気になる。同じタイミングで辞めてないし、独立の誘いは断ったと思うが・・
「大久保くん、続きは後ほど聞かせて?」
「はい、承知しました」
大久保は、会議室を出ていった。
コンコンコン
「失礼するよ」
係長が会議室に入ってきた。
「係長、お話とは何でしょうか?」
「君はつくづく察しが悪いね」
「え、すいません。本当にわかりません」
悠一は、ここ最近の出来事と今の状況を結びつけるものがないか考えを巡らせたが、1ミリも見当がつかない。
係長が口を開いた。
「立花くんが居なくなった今、誰が会社を引っ張って行くと思う?君だろ?違うのか?」
悠一の額に油汗が滲んできた。
「会社を引っ張っていく中の1人だとは思いますが・・」
「だろ?つまりだな・・君は今日から『主任』になるんだよ。やったな、イレギュラーとは言えど昇進だぞ?」
「え・・」
悠一は言葉を失った。
本来なら、立花が今も主任をやっていたはずだ。
そして、立花にトドメを刺したのは紛れもなく自分だ。
そんな人間が、職場で肩書きなんかもらう資格有るのだろうか。
嬉しいという感情は微塵も無かった。
「あの・・係長、教えてください。なぜ、浩二じゃないんでしょうか?」
「あー、渡辺くんかい?論外だよ、論外。あんな歩くスピーカーみたいな人間が主任になったら、会社終わっちゃうよ。まず、勤務態度も良くないしさ。会社への文句しか言わないだろアイツ。人として終わってると思わないかい?その点、君は真面目だし目立ったミスも無いし、まあ主任くらい任せていいんじゃないかなってさ」
・・・プチンッ
悠一の心の中で、何かが弾けた。
「係長、いい加減にしてください!!」
悠一は声を張り上げた。
「何だその口のききかたは!」
負けじと係長も声を出した。
「私をバカにするのは、いくらでも構いません。でも、同期の浩二をバカにするのは許せません!あいつは太陽のような存在なんです、だからこの職場はみんな笑顔が絶えないんですよ!主任に相応しいのは私じゃない、浩二です!もう一度、考え直してください!」
「駄目だ、あいつには務まらん。お前がやれ」
係長は冷静に、淡々と言った。
「・・私が、断ったらどうしますか?」
「・・それはお前が決めることじゃない」
「・・少し時間を下さい。浩二と話がしたいです」
「わかった、でも渡辺は急遽、取引先とのトラブル対応で外出してる。帰りは何時になるかわからん、明日の朝一番に会社で話し合って、結果を報告してくれ」
「わかりました」
悠一は、明日を待たずして話をするつもりであった。
浩二が、飲み会の誘いを断る訳無いからだ。そうだ、秀人も連れて行こう。今日は半ば強制参加だな、話の続きがしたい。
・・・悠一は、浩二の帰りを待っていた。
【《平成30年1月13日 坂本かえで》編へ続く。】
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!

【完結】内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜
たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。
でもわたしは利用価値のない人間。
手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか?
少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。
生きることを諦めた女の子の話です
★異世界のゆるい設定です
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる