窓側の指定席

アヒルネコ

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平成30年1月23日

昨日のこと

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 立花が辞めることを知り、どうにも仕事に身が入らない。誰にも話さないようにしているが、正直、話したい。今、アルコールを摂取したら口が滑ってしまいそうだ。

「なあ悠一、ラーメンといったら味噌だよな?間違いないよな?」浩二が悠一に、ウキウキしながら話しかけてきた。
「店によって違うかな」悠一は正論を叩きつけた。
「あ、それもそうだな。ちなみに、ゆうちゃんはどこのラーメン屋が好きなのさ?」
「おれは・・あそこかな。ほら滝川にある有名なラーメン屋」
「あー!『みなみ』のこと?あそこは王道だね。間違いないね。でも、絵美ちゃんレベルだと、もう既に10回くらい行ってそうだなー」浩二は腕を組み、すこし上を見ながら悩んでいた。
「ほんと、浩二の話だけ聞いてるとさ、絵美ちゃんがただのラーメン雑誌記者にか聞こえないんだけど」
「え、まじで?おれのせいだな!ガハハ!」
「とりあえず仕事に集中して下さい」
「すんませーん」

 相変わらず、浩二は明るく能天気だし、秀人は真面目すぎるくらいに一切しゃべらない。立花康之ときたら、突然辞める宣言。

・・この職場に丁度良い人はいないのか?

「霧島さん、顔色悪いですよ?飲みすぎですか?」
横山ひかりが悠一に声をかけた。
「いや、飲んでないよ。色々疲れがたまってるだけだよ」
「そうですか、あんまり無理しないで下さいね」ひかりはそう言うと、自分の爪を見始めた。ネイルでもしているのだろうか?

 周りを見渡すと、悩んでいるのは悠一だけのように感じる。悪い夢でも見ているのだろうか。
 今日は早めに帰って、たまには外食でもするか。

 悠一は、綾に電話をかけた。

「もしもし、綾?俺だけど。いや、オレオレ詐欺じゃないわ悠一だわ。今日、早く帰るからどっか食べに行こう。え、ラーメンがいいの?わかったわ」

 浩二のやつ、ラーメンと言ったら味噌とか言いやがって。悠一は既に味噌ラーメンを頼む気でいた。



「ただいまー」悠一が自宅に帰ってきた。綾は化粧をしているようだ。
「ラーメン食べに行こうー」悠一が言うと、綾がゆっくりと近づいてきた。
「準備万端!運転よろしく!」
「りょーかい」
 2人は玄関を出て、車に乗り込んだ。



 思っていたよりも店は混んでいない。味噌は味噌でも、辛味噌にしようか、悠一は迷っていた。
「綾は何にするの?」
「え、私は味噌かな」
 注文する品が被ってしまうと、互いに味見できないため、悠一は辛味噌を頼むことにした。

「すいません、辛味噌と味噌1つずつお願いします」
「はい、かしこまりました」
店員が店の奥に捌けていった。

「ねえ悠一、立花さんってなんで辞めるの?」綾が小声で悠一にきいてきた。
「突っ込んでききたいんだけど、話しかけるなオーラ全開なんだよね。あ、今日正式に上司には話したみたいだけどね。突然会議室に上司呼んで話してたから」
「へー、そうなんだ。立花さんじゃなくて、その上司にきいてみたら?」
「いや、そんなことしたら何故に霧島くんが知ってるの?って問題になりそうだよ」
「あー、確かにね」綾は小さく頷いた。

「思い当たる節々はないの?」
「節々じゃなくて、節な。それ関節だから」
「わざといったんだよ?」
「すまん」
・・悠一と綾の会話は、いつも通り面白かった。

「はい!おまちどうさま!」
美味しそうな味噌ラーメンと辛味噌ラーメンが机に運ばれた。

「やっぱり旨いな、ラーメンは」
「ね!それで、立花さんの思い当たる節はないの?」
「ないな。俺からしたら少し苦手なタイプの人間だったことは間違いないけど、でも態度や言動を露骨に出した記憶もないし、出したところで落ち込むような人には見えない」
「んー、そしたら何か副業で成功してたりして」
「そんなに器用かなーあの人」

 悠一と綾は、ラーメンを食べ終わり、会計をした。帰りにコンビニに寄って、ビールを2缶だけ購入し帰宅した。

・・浩二に伝えておこう。
デート場所は迷わなくていい。
やっぱり、『みなみ』のラーメンは最高だと。

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