5 / 31
平成30年1月16日
霧島家
しおりを挟む
そういえば、小さい頃は教師を目指していた。自分はやっぱり人と関わる仕事が好きなんだ、そう悠一は自宅の椅子でコーヒーを飲みながら思い出にふけていた。
仕事も終わり、夜8時。こんな時間にカフェインを摂取したら眠れないかと思いきや、平気で眠れてしまう。なんて幸せな身体だろうか。
「ねえ、浩二くんのデートいつになった?」
ふと、綾に質問され悠一はハッとした。
「あ!浩二に返事してなかった!明日するわ!」
悠一はそう言いながら、携帯のアラームに
『浩二にデートOK伝える』とメモした。
いま電話しても良いのだが、浩二のことだから、酒飲んで呂律回らず会話にならないことが安易に予測できるため、今日のところは止めておこう。
「そういえばこの前、新入社員とご飯食べたみたいだけど、どうだった?」
「どうだったって言われても。随分とアバウトな質問だね。なんてことない普通の食事会だったよ。強いて言うなら、少しだけ俺の愚痴を聞いてもらったかな。ちょっと申し訳ないことしたな」
そう言うと、悠一はコーヒーカップを流し台に下げた。
「え、どんな愚痴をいったの?家で愚痴なんか聞いたことないのに」
綾が物珍しそうに食い付いてきた。
「ちょっとね、上司との反りが合わなくてね。やりづらいなって話をしたんだよね。でも新入社員の大久保くんは案外上手くやってるみたいだね。学べることが沢山あります!なんて言っちゃう始末でさ」
「悠一にもそんなときあったんじゃないの?」
綾が少し首を傾げながら言った。
「東京で仕事してた時はあったかもね。でも、今は無駄に仕事にプライドもっちゃってるからね。違うことは違うって本心は言いたいんだよ。でもサラリーマンだからさ、そこはグッと堪えてる」
「あんまり無理しないでね?」
綾がすこし微笑みながら言った。
・・とは言いつつも、いつも霧島家は平和だ。
自分の居場所はいつもここにある。だから仕事もメリハリついて楽しくやっている。
突然、立花主任が「独立してビックな男になってやる!」みたいなこと言い出したら面白いのにな。応援しつつ、心のなかでガッツポーズしてやるのに。
悠一は、妄想に浸っていた。
普段は家で飲まないのだが、今日くらいは良いかなと思い、冷蔵庫を開けた。キンキンに冷えたビールが1缶入っている。
プシュっと音をたてたとき、綾が悠一を睨んだ。
「もう、それ以上お腹でたら大変だよ?スーツ着れなくなるよ?妊娠安定期みたいなお腹して」
「ははは、富の象徴だよ」
悠一は笑いながら口にビールを運んだ。
そういえば、そもそも浩二のやつ、ひかりちゃんのことデートに誘えるんだろうか。まさか俺に、デートのお誘いまでやらせるつもりなんだろうか?
悠一は、若干、明日が憂鬱になっていた。
仕事も終わり、夜8時。こんな時間にカフェインを摂取したら眠れないかと思いきや、平気で眠れてしまう。なんて幸せな身体だろうか。
「ねえ、浩二くんのデートいつになった?」
ふと、綾に質問され悠一はハッとした。
「あ!浩二に返事してなかった!明日するわ!」
悠一はそう言いながら、携帯のアラームに
『浩二にデートOK伝える』とメモした。
いま電話しても良いのだが、浩二のことだから、酒飲んで呂律回らず会話にならないことが安易に予測できるため、今日のところは止めておこう。
「そういえばこの前、新入社員とご飯食べたみたいだけど、どうだった?」
「どうだったって言われても。随分とアバウトな質問だね。なんてことない普通の食事会だったよ。強いて言うなら、少しだけ俺の愚痴を聞いてもらったかな。ちょっと申し訳ないことしたな」
そう言うと、悠一はコーヒーカップを流し台に下げた。
「え、どんな愚痴をいったの?家で愚痴なんか聞いたことないのに」
綾が物珍しそうに食い付いてきた。
「ちょっとね、上司との反りが合わなくてね。やりづらいなって話をしたんだよね。でも新入社員の大久保くんは案外上手くやってるみたいだね。学べることが沢山あります!なんて言っちゃう始末でさ」
「悠一にもそんなときあったんじゃないの?」
綾が少し首を傾げながら言った。
「東京で仕事してた時はあったかもね。でも、今は無駄に仕事にプライドもっちゃってるからね。違うことは違うって本心は言いたいんだよ。でもサラリーマンだからさ、そこはグッと堪えてる」
「あんまり無理しないでね?」
綾がすこし微笑みながら言った。
・・とは言いつつも、いつも霧島家は平和だ。
自分の居場所はいつもここにある。だから仕事もメリハリついて楽しくやっている。
突然、立花主任が「独立してビックな男になってやる!」みたいなこと言い出したら面白いのにな。応援しつつ、心のなかでガッツポーズしてやるのに。
悠一は、妄想に浸っていた。
普段は家で飲まないのだが、今日くらいは良いかなと思い、冷蔵庫を開けた。キンキンに冷えたビールが1缶入っている。
プシュっと音をたてたとき、綾が悠一を睨んだ。
「もう、それ以上お腹でたら大変だよ?スーツ着れなくなるよ?妊娠安定期みたいなお腹して」
「ははは、富の象徴だよ」
悠一は笑いながら口にビールを運んだ。
そういえば、そもそも浩二のやつ、ひかりちゃんのことデートに誘えるんだろうか。まさか俺に、デートのお誘いまでやらせるつもりなんだろうか?
悠一は、若干、明日が憂鬱になっていた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
命の質屋
たかつき
恋愛
【命の質屋】という超能力を手に入れた男。
思いがけず特殊な力を手に入れた男。
あるきっかけから新たなビジネスを始め、巨万の富を得ることになる。
同時期に親友の彼女からの紹介により出会った女性とも良好な関係を築いていくのだが……まさかの事態に。
男は難しい選択を迫られる事になる。
物のように命を扱った男に待ち受けていた運命とは?
タイトル以上にほのぼの作品だと思っています。
ジャンルは青春×恋愛×ファンタジーです。
◇◆◇◆◇
お読み頂きありがとうございます!
ストックの無い状態から始めますので、一話あたり約千文字くらいでの連載にしようと思っています。
少しでも気になる、面白いと思って頂けましたら、リアクションをください! 励みになります!
どうぞ宜しくお願い致します!
微熱の午後 l’aprés-midi(ラプレミディ)
犬束
現代文学
夢見心地にさせるきらびやかな世界、優しくリードしてくれる年上の男性。最初から別れの定められた、遊びの恋のはずだった…。
夏の終わり。大学生になってはじめての長期休暇の後半をもてあます葉《よう》のもとに知らせが届く。
“大祖父の残した洋館に、映画の撮影クルーがやって来た”
好奇心に駆られて訪れたそこで、葉は十歳年上の脚本家、田坂佳思《けいし》から、ここに軟禁されているあいだ、恋人になって幸福な気分で過ごさないか、と提案される。
《第11回BL小説大賞にエントリーしています。》☜ 10月15日にキャンセルしました。
読んでいただけるだけでも、エールを送って下さるなら尚のこと、お腹をさらして喜びます🐕🐾
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ガラスの森
菊池昭仁
現代文学
自由奔放な女、木ノ葉(このは)と死の淵を彷徨う絵描き、伊吹雅彦は那須の別荘で静かに暮らしていた。
死を待ちながら生きることの矛盾と苦悩。愛することの不条理。
明日が不確実な男は女を愛してもいいのだろうか? 愛と死の物語です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
Last Recrudescence
睡眠者
現代文学
1998年、核兵器への対処法が発明された以来、その故に起こった第三次世界大戦は既に5年も渡った。庶民から大富豪まで、素人か玄人であっても誰もが皆苦しめている中、各国が戦争進行に。平和を自分の手で掴めて届けようとする理想家である村山誠志郎は、辿り着くためのチャンスを得たり失ったりその後、ある事件の仮面をつけた「奇跡」に訪れられた。同時に災厄も生まれ、その以来化け物達と怪獣達が人類を強襲し始めた。それに対して、誠志郎を含めて、「英雄」達が生れて人々を守っている。犠牲が急増しているその惨劇の戦いは人間に「災慝(さいとく)」と呼ばれている。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
眩暈のころ
犬束
現代文学
中学三年生のとき、同じクラスになった近海は、奇妙に大人びていて、印象的な存在感を漂わせる男子だった。
私は、彼ばかり見つめていたが、恋をしているとは絶対に認めなかった。
そんな日々の、記憶と記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる