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おまけ
黒い薔薇と花言葉
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「思? ……わっ!?」
「小猫、本当に君は可愛いね! 天使……いいや! 女神のようだ!」
少年へと抱きついた。頬をすりすり、愛し子の暖かさと香りを楽しむ。数分間、少年を包み続けた。
華 閻李の細くてキラキラと輝く銀髪をそっと退かし、額へ口づけをする。小さい耳を隠す髪を指に絡ませ、白い頬へと唇を落とした。
「君は私にとって、たったひとつの宝だ。小猫が私に王をやめろと言えば、すぐにでも父亲へ返還しよう。怖い夢を見たと言えば、私が夢の中に入って、ずっと守ってあげる」
──ああ。そういえば私はあの言葉を、ハッキリと伝えていなかった気がする。
腰を曲げて片膝をつく。見上げた先にいる少年に優しい眼差しを送り、手の甲を撫でた。そして頼りない少年の小さな手に、優しく唇をよせる。
「小猫……いいや、華 閻李」
真剣な面持ちで、整った唇で微笑んだ。
「──私と、結婚してほしい」
「え?」
少年が驚くのも無理はないのだろう。
すでに結婚式の準備を進めていたのに、夫婦になってほしい。
その疑問だけが華 閻李の小首を傾げさせた。
「え、と……うん。だから結婚式をし……」
「──言ってなかったから」
普段の凛々しい姿そのままに、甘く、溶ける瞳で少年を見上げる。一度だけ両目を閉じて、ふっと微笑した。
「全 固嫌が起こした事件のとき、私は君を抱き潰した。だけど私は……大切な言葉を伝えていなかったから」
腰をあげる。手に漆黒の焔を出現させ、器用に黒薔薇へと形を変えていった。薔薇は黒色で、溢れるぐらいの数になる。
「私は君だけを……」
一本の薔薇を渡した。
「我愛你。だから私は、ここに誓う」
続いて少年に、二本の薔薇を与える。そしてもう一本、四本目の薔薇は少年の髪飾りとなった。
「いつまでも、どんなときでも、君を……」
五本の薔薇を束にして、少年へと送る。
少年を見れば、瞳が潤み始めていた。
それでも彼は、薔薇を渡すことをやめない。三本の薔薇の花びらに口づけし、その部分を少年の唇へと当てた。
「一生愛するから。だから、最愛の妻でいてほしい」
二十七本目となる薔薇に息を吹きかける。すると薔薇は、少年を囲うように足元へと落ちた。
やがて、少年の足元は黒い薔薇で埋めつくされていった。もう、数えるのも億劫なほどの美しい薔薇たちは、風もないのにさわさわと花びらを揺らしている。
彼は微笑し、指をパチンと鳴らした。瞬間、薔薇の花びら一枚一枚が、その場を舞う。美しく踊るように、淡く、ふたりを包んでいった。
「小猫、結婚してください──」
「……っ!?」
少年は唇を震わせる。両目を大きく見開き、瞳に涙を溜めた。そして……
「はい!」
全 思風の胸へと飛び込こんだ。
そのとき、たくさんの拍手の音が聞こえてくる。
見渡せば牛のような姿の妖怪、他の者たちまで。ふたりを祝福するかのように「おめでとう」と、笑顔で拍手をしていた。
彼は皆にありがとうと言い、大切な子を見つめる。
「これから、ずっと一緒だよ。小猫」
「うん! うん!」
彼は背伸びをする少年へ唇を近づける。
少年もまた、彼の想いを受け取り、幸せの口づけをした──
「小猫、本当に君は可愛いね! 天使……いいや! 女神のようだ!」
少年へと抱きついた。頬をすりすり、愛し子の暖かさと香りを楽しむ。数分間、少年を包み続けた。
華 閻李の細くてキラキラと輝く銀髪をそっと退かし、額へ口づけをする。小さい耳を隠す髪を指に絡ませ、白い頬へと唇を落とした。
「君は私にとって、たったひとつの宝だ。小猫が私に王をやめろと言えば、すぐにでも父亲へ返還しよう。怖い夢を見たと言えば、私が夢の中に入って、ずっと守ってあげる」
──ああ。そういえば私はあの言葉を、ハッキリと伝えていなかった気がする。
腰を曲げて片膝をつく。見上げた先にいる少年に優しい眼差しを送り、手の甲を撫でた。そして頼りない少年の小さな手に、優しく唇をよせる。
「小猫……いいや、華 閻李」
真剣な面持ちで、整った唇で微笑んだ。
「──私と、結婚してほしい」
「え?」
少年が驚くのも無理はないのだろう。
すでに結婚式の準備を進めていたのに、夫婦になってほしい。
その疑問だけが華 閻李の小首を傾げさせた。
「え、と……うん。だから結婚式をし……」
「──言ってなかったから」
普段の凛々しい姿そのままに、甘く、溶ける瞳で少年を見上げる。一度だけ両目を閉じて、ふっと微笑した。
「全 固嫌が起こした事件のとき、私は君を抱き潰した。だけど私は……大切な言葉を伝えていなかったから」
腰をあげる。手に漆黒の焔を出現させ、器用に黒薔薇へと形を変えていった。薔薇は黒色で、溢れるぐらいの数になる。
「私は君だけを……」
一本の薔薇を渡した。
「我愛你。だから私は、ここに誓う」
続いて少年に、二本の薔薇を与える。そしてもう一本、四本目の薔薇は少年の髪飾りとなった。
「いつまでも、どんなときでも、君を……」
五本の薔薇を束にして、少年へと送る。
少年を見れば、瞳が潤み始めていた。
それでも彼は、薔薇を渡すことをやめない。三本の薔薇の花びらに口づけし、その部分を少年の唇へと当てた。
「一生愛するから。だから、最愛の妻でいてほしい」
二十七本目となる薔薇に息を吹きかける。すると薔薇は、少年を囲うように足元へと落ちた。
やがて、少年の足元は黒い薔薇で埋めつくされていった。もう、数えるのも億劫なほどの美しい薔薇たちは、風もないのにさわさわと花びらを揺らしている。
彼は微笑し、指をパチンと鳴らした。瞬間、薔薇の花びら一枚一枚が、その場を舞う。美しく踊るように、淡く、ふたりを包んでいった。
「小猫、結婚してください──」
「……っ!?」
少年は唇を震わせる。両目を大きく見開き、瞳に涙を溜めた。そして……
「はい!」
全 思風の胸へと飛び込こんだ。
そのとき、たくさんの拍手の音が聞こえてくる。
見渡せば牛のような姿の妖怪、他の者たちまで。ふたりを祝福するかのように「おめでとう」と、笑顔で拍手をしていた。
彼は皆にありがとうと言い、大切な子を見つめる。
「これから、ずっと一緒だよ。小猫」
「うん! うん!」
彼は背伸びをする少年へ唇を近づける。
少年もまた、彼の想いを受け取り、幸せの口づけをした──
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