香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫(299)

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雪原の狼

鳥たちの話 

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 香 麗然コウ レイランたちは煙の中に映る鳥たちを、じっと見つめた。声を押さえて耳を済ます。



『──じゃあ、その狼が暴れてるってこと?』

『ぴちちっ』  

『うーん。でも、おかしいわねぇ。確かあそこの狼は、守り神だったはずよ。暴れて、誰かに迷惑をかけるなんてことするかしら?』

 白くてふわふわな小さな鳥、シマエナガの【やきとり】が、あかの宮にいる同族たちと話をしている様子が映った。
 【やきとり】がゴマのように愛らしい目を細めれば、鳥たちは「ぴぴっ」と鳴く。

『あたしの知る限り、あの狼は人見知りはするし、大人しい性格だったはずよ? 人の肉を好んで食べようだなんて、考える子じゃないんだけど……』

 うーんと、かわいらしく小首を傾げた。

『……まあ、いいわ。あたしじゃ、どうにもできないし。……そうだ! 人間を使いましょう! あれらは、こき使ってナンボな生き物だもの!』

 かわいらしい見た目に反して、黒い感情を見せる。胸をはって『ジュリリ』と、独特な鳴き声を轟せていた。

 □ □ □ ■ ■ ■ 

 (【やきとり】ったら。面倒事を、私たちに押しつけようとしてるわね?)

 香 麗然コウ レイランは心の中で毒づき、線香に息を吹きかける。すると線香は、ふっと煙を消した。火の消えた線香を紙に包み、懐にしまう。
 後ろにいる二人へと振り向いた。

「……これが、私が受け継いだ一族の力よ。と言ってもこれは、ほんの一部でしかないわ。他にもいろいろあるけど、今は必要ないわよね?」

 すべてを教えようとすると、どれほどの時間を費やすか。日が暮れても足りないほどに、一族として語りたいものがある。
 その気持ちは飲みこみ、へらりと笑った。

「それで話は変わるけど……王都の近くに、雪が降る場所なんてあるの?」

 天欄國テンランコクの中心にあるこの町は比較的穏やかな気候のよう。冬であっても、重ね着するほどの寒さではなかった。
 それは金明ジンミンたちを見れば一目瞭然りょうぜん。彼女たちは防寒着を一切着ていなかった。
 
「こんな、冬でも暖かいところに雪なんて積もるの?」

「……おそらくそれは、【黒江省ヘイジャンショウ市】のことではないか?」

 眠曹ミエンツァオは足で軽く床をたたく。すると床は淡く光り、地図のようなものを浮かび上がらせた。

「わわっ!? え!? 何、これ!? どういうこと!?」

「我が王家に伝わる秘宝の一つだ。それよりも、この地図を見てくれ」
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