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金明《ジンミン》妃の侍女
新たな出会い
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中で二人を待っていたのは数人の侍女、そして厚化粧だけれど幼い少女だった。
桃色の漢服を着た侍女たちは化粧が似合う美人ばかり。彼女たちは自分の顔に自信があるようで、田舎臭い香 麗然を見ては鼻で笑っていた。
そんな侍女たちに、幼い少女は口を挟もうとする。けれど侍女たちの目力に蹴落とされ、彼女たちに取り囲まれてしまった。部家の中心にある椅子に腰かけながら、震えている。
(うわぁー。思ってた以上に、酷いわね。こいつら、妃を妃とも思ってないっぽいし。それに何より……やっぱり、香死の匂いがする。しかも、かなり強い)
侍女たちの行動に反吐が出るのを我慢し、営業的な笑顔を作った。
「──金明妃、お久しぶりでございます。私は此度より侍女になりました、香 麗然と申します」
軽く拱手する。
つられて楊凛も挨拶と拱手をした。
「宜しくお願いしま……わっ!」
挨拶もそこそこに、侍女たちに華服を渡される。
「部屋の奥に、着替え室があるわ。そこで着替えてきなさいな。まあ、あんたたちみないな田舎者だと、服の方が目立つのでしょうけど」
侍女たちはクスクスと、嫌味を連呼した。
楊凛は顔を真っ赤にさせ、半べそ状態になってしまう。けれど香 麗然は何のそのだった。彼女たちに笑顔を向け、楊凛の手を引っぱって部家の奥へと行く。
(私は別に、あんなの嫌味とすら思ってないわ。あれよりも、もっと酷い言葉を知っているから。でも、楊凛は違うんでしょうね)
奥の部屋についた頃には、楊凛は涙をボロボロ流していた。帰りたい、侍女にならなくてもいい。そんな言葉を吐き捨てている。
香 麗然はそれには答えることをしなかった。同情はするけれど、共感はしない。さっぱりとした考えのまま、無言で着替えていった。
「わ、私……侍女に向いてないんでしょうか?」
「んー? 向いてるかどうかは、やってみないとわからないんじゃない?」
まだ何もは始まってはいない。その段階で決めつけられては、たまったものではない。香 麗然は強い意思を持ちながら、泣き言を口にする楊凛へ布を渡した。
「第一、さっきのあれはどう見ても、新人の私たちで鬱憤を晴らそうとしているだけでしょ? そんなのにいちいち付き合ってたら、好きなこともできなくなんじゃない?」
「……香 麗然は強い、ですね」
「そう? ……っと。よし! 完了」
あっという間に着替えを終える。そして未だに着替えていない楊凛を見て、にやっとほくそ笑んだ。両手をワキワキさせ、ふふふと不気味に笑う。
「ふふ。大丈夫だっぺ。おらに、すべて任せてけろ」
「え? 香 麗然!? な、何かこわ……」
「さあ。おとなしく、おらの着せかえ人形になるっぺさ」
両目を光らせ、楊凛へと手を伸ばしていった。
桃色の漢服を着た侍女たちは化粧が似合う美人ばかり。彼女たちは自分の顔に自信があるようで、田舎臭い香 麗然を見ては鼻で笑っていた。
そんな侍女たちに、幼い少女は口を挟もうとする。けれど侍女たちの目力に蹴落とされ、彼女たちに取り囲まれてしまった。部家の中心にある椅子に腰かけながら、震えている。
(うわぁー。思ってた以上に、酷いわね。こいつら、妃を妃とも思ってないっぽいし。それに何より……やっぱり、香死の匂いがする。しかも、かなり強い)
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「──金明妃、お久しぶりでございます。私は此度より侍女になりました、香 麗然と申します」
軽く拱手する。
つられて楊凛も挨拶と拱手をした。
「宜しくお願いしま……わっ!」
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「部屋の奥に、着替え室があるわ。そこで着替えてきなさいな。まあ、あんたたちみないな田舎者だと、服の方が目立つのでしょうけど」
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(私は別に、あんなの嫌味とすら思ってないわ。あれよりも、もっと酷い言葉を知っているから。でも、楊凛は違うんでしょうね)
奥の部屋についた頃には、楊凛は涙をボロボロ流していた。帰りたい、侍女にならなくてもいい。そんな言葉を吐き捨てている。
香 麗然はそれには答えることをしなかった。同情はするけれど、共感はしない。さっぱりとした考えのまま、無言で着替えていった。
「わ、私……侍女に向いてないんでしょうか?」
「んー? 向いてるかどうかは、やってみないとわからないんじゃない?」
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「第一、さっきのあれはどう見ても、新人の私たちで鬱憤を晴らそうとしているだけでしょ? そんなのにいちいち付き合ってたら、好きなこともできなくなんじゃない?」
「……香 麗然は強い、ですね」
「そう? ……っと。よし! 完了」
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「ふふ。大丈夫だっぺ。おらに、すべて任せてけろ」
「え? 香 麗然!? な、何かこわ……」
「さあ。おとなしく、おらの着せかえ人形になるっぺさ」
両目を光らせ、楊凛へと手を伸ばしていった。
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