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ドキドキ同棲編
妹想いなお兄様②
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アワアワと震えながら、大輔くんを宥めようと出来るだけ明るい笑顔を心がけた。
「もちろん、大輔くんが一番格好良いよ♡」
「…それって、俺以外の人も格好良いって思ってるってことだよね?」
…ぐ。
め、面倒くせぇ…。
良いじゃん、一番なんだからさ。
「あのアプリ…、マディアスの時も思ったけどさ、希帆さんって意外と浮気性なんだね」
「…っ…はぁぁぁぁぁぁ?」
聞き捨てならん!
そりゃマディアス様はお耳の恋人として現在進行形で愛を育んでいるけれど、あれは恋愛アプリだぞ!
生身の人間に心を移したことなんて一度もないし!
いくら大輔くんの嫉妬心が強いからって、その言葉は我慢ならん!!
「大輔くんが一番好きだって言ってるやんか!大輔くんだけ!!これ絶対!!!」
感情に任せて声を出したら、思った以上に周りに響いた。
頭に昇っていた血が顔面に集まる。
ボディーチェックを待つ人だかりが一斉にこっちを向いた。
「…うん♡熱烈な愛の告白ありがとう♡俺も希帆さんが一番好きだよ♡」
誰もが見惚れる美しい笑顔を見せる大輔くんは、どこまで計算しているのだろう。
ちゅいっ、と額にキスを受けながら、私は下唇を噛みしめるしかなかった。
「盛り上がってるねぇ~」
修也さんが近寄って来て、ピュウッと口笛を鳴らす。
その揶揄う様な顔にジト目を返すと、ワハハっ!と豪快に笑い飛ばされた。
「オーナーがお待ちかねだよ。希帆ちゃんたちは関係者入口から入ってな」
「…修也さん、いい加減ニヤニヤするのやめて」
「いやぁ~、オーナーの気落ちした顔を想像したら笑いが止まんねぇよ~」
「なんでイツくんが出てくるのさ?あ、それよりも、慶太くんって抜けること出来ない?」
「それよりもって…。オーナーもあるようでない男なんだよなぁ、女運っつーか」
「修也さん?なにブツブツ言ってるの?聞いてる?」
「へ~へ~。あんだって?あぁ、慶太な。オレからお気に入りシフトしちまった?そっちの坊ちゃんも随分若ぇし、若いツバメにお目覚めかい?」
「修也さんって、ほんっっっとに、筋肉以外は下品極まりないよね…」
「お褒めに預かり光栄の極みってね」
修也さんは、ニィィィィっと歯を見せて笑ってから、片手を上げて慶太くんを呼んでくれる。
小走りでやってきた慶太くんは、ひょろりと縦長な体躯をしているが、背中や胸部に程良い筋肉をつけた、世間で言うところの細マッチョだ。
ちなみに、便宜上細マッチョと言う言葉を使っているが、私は細マッチョと言うカテゴリーを認めていない。
マッチョはマッチョだ。それに『細い』を付けるとはどういう了見だろう。
脂肪はおろか人体に必要な肉でさえ保てない軟弱な体つきを『細マッチョ』と言い換えているだけではないのか?
それは鍛えられし『筋肉』ではなく、全人類が持っている『皮下筋肉』が表面化しただけの『虚弱体質』だ。
しかも最近は『ガリマッチョ』なんて言葉も出て来た。
いよいよ意味が分からない。
『ガリ』と『マッチョ』は対極のものであってミックスし得ないはずだ。
まったくけしからん。マッチョに謝れ。全ての筋肉に謝ればかちんが。
「希帆さん、筋肉に対する熱量が駄々洩れになってるからね。注意しようね」
「おん?」
どうやらまたモノローグが口からまろび出ていたらしい。
人差し指を口元にあてる大輔くんに、両手で自分の口を押さえながらコクコクと頷いて見せた。
「希帆さん……慶太くんは……腹筋もすごい…よ」
「いや、日和…。それ、言わなくていいやつ……」
「ワハハハハ!慶太が珍しく慌ててやがるぜぇ~」
日和ちゃんの暴露に汗を掻く慶太くん、それを揶揄う修也さん。
私と大輔くんはそのやり取りを見守るともなしに見ていた。
慶太くんは修也さんに日和ちゃんを紹介し始めて、なんとも甘酸っぱい空気が流れている。
このお店はスタッフ間の仲がとても良いので、みんな身内みたいな関係だ。
そんな『身内』に恋人を紹介するのはとても幸せなことのように思えた。
「…私も、大輔くんの事りゅうにぃにちゃんと紹介するからね」
今更ながらの決意表明を大輔くんに呟くと、蕩ける様な顔で「ありがとう」と答えてくれる。
こんな素敵な恋人を、大好きな家族に紹介できる私は果報者だと本当に思う。
「もちろん、大輔くんが一番格好良いよ♡」
「…それって、俺以外の人も格好良いって思ってるってことだよね?」
…ぐ。
め、面倒くせぇ…。
良いじゃん、一番なんだからさ。
「あのアプリ…、マディアスの時も思ったけどさ、希帆さんって意外と浮気性なんだね」
「…っ…はぁぁぁぁぁぁ?」
聞き捨てならん!
そりゃマディアス様はお耳の恋人として現在進行形で愛を育んでいるけれど、あれは恋愛アプリだぞ!
生身の人間に心を移したことなんて一度もないし!
いくら大輔くんの嫉妬心が強いからって、その言葉は我慢ならん!!
「大輔くんが一番好きだって言ってるやんか!大輔くんだけ!!これ絶対!!!」
感情に任せて声を出したら、思った以上に周りに響いた。
頭に昇っていた血が顔面に集まる。
ボディーチェックを待つ人だかりが一斉にこっちを向いた。
「…うん♡熱烈な愛の告白ありがとう♡俺も希帆さんが一番好きだよ♡」
誰もが見惚れる美しい笑顔を見せる大輔くんは、どこまで計算しているのだろう。
ちゅいっ、と額にキスを受けながら、私は下唇を噛みしめるしかなかった。
「盛り上がってるねぇ~」
修也さんが近寄って来て、ピュウッと口笛を鳴らす。
その揶揄う様な顔にジト目を返すと、ワハハっ!と豪快に笑い飛ばされた。
「オーナーがお待ちかねだよ。希帆ちゃんたちは関係者入口から入ってな」
「…修也さん、いい加減ニヤニヤするのやめて」
「いやぁ~、オーナーの気落ちした顔を想像したら笑いが止まんねぇよ~」
「なんでイツくんが出てくるのさ?あ、それよりも、慶太くんって抜けること出来ない?」
「それよりもって…。オーナーもあるようでない男なんだよなぁ、女運っつーか」
「修也さん?なにブツブツ言ってるの?聞いてる?」
「へ~へ~。あんだって?あぁ、慶太な。オレからお気に入りシフトしちまった?そっちの坊ちゃんも随分若ぇし、若いツバメにお目覚めかい?」
「修也さんって、ほんっっっとに、筋肉以外は下品極まりないよね…」
「お褒めに預かり光栄の極みってね」
修也さんは、ニィィィィっと歯を見せて笑ってから、片手を上げて慶太くんを呼んでくれる。
小走りでやってきた慶太くんは、ひょろりと縦長な体躯をしているが、背中や胸部に程良い筋肉をつけた、世間で言うところの細マッチョだ。
ちなみに、便宜上細マッチョと言う言葉を使っているが、私は細マッチョと言うカテゴリーを認めていない。
マッチョはマッチョだ。それに『細い』を付けるとはどういう了見だろう。
脂肪はおろか人体に必要な肉でさえ保てない軟弱な体つきを『細マッチョ』と言い換えているだけではないのか?
それは鍛えられし『筋肉』ではなく、全人類が持っている『皮下筋肉』が表面化しただけの『虚弱体質』だ。
しかも最近は『ガリマッチョ』なんて言葉も出て来た。
いよいよ意味が分からない。
『ガリ』と『マッチョ』は対極のものであってミックスし得ないはずだ。
まったくけしからん。マッチョに謝れ。全ての筋肉に謝ればかちんが。
「希帆さん、筋肉に対する熱量が駄々洩れになってるからね。注意しようね」
「おん?」
どうやらまたモノローグが口からまろび出ていたらしい。
人差し指を口元にあてる大輔くんに、両手で自分の口を押さえながらコクコクと頷いて見せた。
「希帆さん……慶太くんは……腹筋もすごい…よ」
「いや、日和…。それ、言わなくていいやつ……」
「ワハハハハ!慶太が珍しく慌ててやがるぜぇ~」
日和ちゃんの暴露に汗を掻く慶太くん、それを揶揄う修也さん。
私と大輔くんはそのやり取りを見守るともなしに見ていた。
慶太くんは修也さんに日和ちゃんを紹介し始めて、なんとも甘酸っぱい空気が流れている。
このお店はスタッフ間の仲がとても良いので、みんな身内みたいな関係だ。
そんな『身内』に恋人を紹介するのはとても幸せなことのように思えた。
「…私も、大輔くんの事りゅうにぃにちゃんと紹介するからね」
今更ながらの決意表明を大輔くんに呟くと、蕩ける様な顔で「ありがとう」と答えてくれる。
こんな素敵な恋人を、大好きな家族に紹介できる私は果報者だと本当に思う。
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