【R18】不貞腐れていたら筋肉質の歳下男子を捕まえました

山田 ぽち太郎

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ドキドキ同棲編

休日デート前編 side希帆

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今日は楽しみにしていた大輔くんとの休日デートだ。
楽しみ過ぎて数日前から鼻歌が止まらなかったし、今日の服装を決めるために毎晩ファッションショーをした。
だって、大輔くんは何を着ても「似合ってる、可愛い♡」しか言わない。
恐ろしいくらいに外見の良い彼氏を持つと本当に苦労する。
まず、隣に立つのがおこがましい。
だからこそオシャレしたいのに、大輔くんは私の気持ちを全然分かっていないんだ!
だってほら、私なんて楽しみ過ぎて大輔くんより早起きしちゃったのに、彼はいつも通りにキスをして、私をベッドに押し戻そうとするんだもん。
やっぱり私みたいな年上と外でデートするのは嫌なのかな…。
せっかくマスカラが上手に塗れたのに、なんだか憂鬱な気分になっちゃった。

「大輔くん、ちょっとあのお店見てみたいです」

店頭に並んでいるスープマグが気になって、ギクシャクと大輔くんに提案する。
どこに行きたい、なにをしたい、なにが欲しい、それを口にするのは今でも少し苦手だ。
基本的に誰かの後ろを付いていく方が気が楽で、なによりそっちの方が楽しい。
なんとか意思を伝えられた安堵感で私は足元をおろそかにしてしまった。
普段から何もないところですっころぶ私は、あわやのところで大輔くんに抱きすくめられる。

「何でそんなに躓くの?」

そう言った大輔くんの心臓は激しく脈打っていて、私の身の危険に動揺してしまったらしい。
なんか、そういうの、嬉しい。
私の回答に盛大に笑い散らかす大輔くんが可愛い。
人前で触れ合うのには抵抗がある。
いや、私が大輔くんに見合う美女だったら違うのかもしれないけどね?
だってね、私の恋人は、何といっても、顔が良い。
そんな人と私が街中でベタベタしてたら、生卵を投げられるかもしれないし、私なら投げる。
それにさ、大輔くんが嫌かもしれないじゃないか。
私と大輔くんは12歳も年が離れている。
そんな人間と街中を歩くだけでもチャレンジャーなのに、イチャコラしたら大輔くんに迷惑がかかってしまう。
あーぁ、大輔くんの屈託のない笑顔、可愛いなぁ。大好きだなぁ。
…ちょっとは触れたいなぁ。
と思って、勇気を出してみたら抱き締められた。
驚いた。驚きすぎて変な声出しちゃった。

「…はぁ、可愛い♡」

そう呟きながら大輔くんがギュッと抱き締めてくれる。
大輔くんは大型犬のようだ。
こちらがちょっと遊ぶつもりで手を出すと、全力で押し潰さんばかりに飛び掛かって来る。
私が何かをしていてもお構いなしに甘えてくるし、その仕草が憎めないから困りものだ。
褒めると何倍にもお返しをくれるし、いつも私を抱き締めてくれる。

思わずうっとりと抱き返しそうになったが、街中なのを思い出してあらん限りの力で抵抗した。
全然ビクともしない大輔くんが格好良いなぁ、と思ってしまうあたり重症だ。
だって、逞しいんだもん。
格好良いんだもん。

「ほ、ほらほら!希帆さんの欲しがってたスープマグ!!」
「…私、欲しいって話したっけ?」

なんで知ってるの?私、欲しいなんて言ってない…。
大輔くんは毎朝スープも出してくれるけど、私はスプーンで掬うのが苦手だ。
と言うか、カトラリー全般の扱いに不安がある。
それは幼少期が大きく関係していると思うけれど、まぁ、そんな話は置いておいて。
私のこと見てくれてるんだ…。すごい…。あぁ、嬉しい…。大好きだ。
お揃いだって!なにそれ、なにそれ!!そんなこと初めてする!!!
大輔くんの家にあるお皿も元は一人分のだから、家で使っている食器はちぐはぐだ。
お揃いだって、…嬉しい。
涙が出そうになって、さすがにそれは痛いなって思ったから我慢した。
きっと目がウルウルしちゃったとは思う。

「……ぐっ」

大輔くんが変な声を出して動きを止める。
片手で口元を押さえて、もう片方の手でお腹の下の方を押さえている。
具合が悪くなっちゃったのかな?
聞いてみたけど変な風にはぐらかされた。
プルプル震えながら「俺のこと惚れ直しちゃった?」なんて、どうしたんだろう。
惚れ直すもなにも、大輔くんに惚れてない時間がないから困っているのに。
今だって、待ち行く人に「この人は私の彼氏なんです!大好きなんです!!」って紹介して回りたいぐらいだ。
私の好きを舐めて貰っちゃ困るよ、大輔くん。

「大輔くん?本当に大丈夫?具合悪いなら帰ろうか?」

再び呻いて、今度は膝から崩れ落ちた大輔くんを覗き込む。
なんだか顔が赤いみたいだし、さっきから小刻みに震えているし、なんなら呼吸が荒いし…
まだランチ前だけどお家に帰った方が良いよね。
デートも楽しみたいけど、二人でベッドでゴロゴロするのも楽しいし。
人目もないからホッとするし。
…って、ダメダメ、ネガティブだめ。
大輔くんは私を選んでくれてるんだから、自信持たなきゃ。

「彼氏ですから♡」

そうだね、うん。大輔くんは私の彼氏だ。
そんで、私は大輔くんの彼女なの。

デートの時は大輔くんがエスコートしてくれる。
私の好きそうなお店を事前にリサーチして、道順まで覚えてから提案してくれるんだ。
なんともまぁ、甘やかされている事よ。
デート費用も全て大輔くんが出す。
なんどもなんども怒られて、終いには貯金通帳まで見せられて納得させられた。
いやさ、もうさ、薄々予感はしてたけど、大輔くんってやんごとない身分なんじゃなかろうか?
だって、あんな貯金額、一介の大学生がなんで持ってるの?
怖いからそっ閉じしてお返しした。怖いから何も聞いてない。
聞く必要が出てくるまで聞かないことにした。怖いから。

ポテポテと歩いていると、目の前に美味しそうなイラストのブラックボードを発見した。
どうやらここが目的地らしい。
メニュー表に目を通す。やっぱりここはランチセットでしょう。お得だもん。デザートもあるし。
なになに…Aセットがツナとナスのトマトパスタ、Bセットはエビとアボカドのオイルパスタか。
うんBセットやね。即決やね。ツナ食べれんしね、私。
大輔くんはナスが好きだからAだろうなぁ。
でもアボカドも好きっぽいし、私の一口あげようかな。

「希帆さん、食べたいものありそう?ここに入って大丈夫?」
「うん!!私、Bセットにする!!!」

そう答えたら、大輔くんの顔が『だと思った♡』って言ってた。
把握されてる。うぅ…。好きだぁぁ。
大輔くん、好き。略して『大好き』だぁぁぁぁ。
大好きがゲシュタルト崩壊しそう。はぁ…。

テーブルにあったメニュー表は写真付きだったので、見るともなしに二人で見る。
そしたら世の中で一番尊い料理を発見した。『オムライス』だ。
しかもケチャップが嫌いな私にはおあつらえ向きなバターライスと来たもんだ。
こりゃBセットから鞍替えだな、と思って大輔くんを見ると、なんだかはにかんでいる。

「やっぱりこっちにする!」って言ったら「だと思った♡」って返って来た。
好きな人が、自分の好きなものを知ってくれているのが、こんなにも嬉しいなんて。

いつも通り大輔くんがスマートに店員さんを呼んで注文をしてくれる。
けど、大輔くんが頼んだのは予想に反してBセット。
あちゃー、私はまだまだ大輔くんのことを知らなかったんだなぁ。
私はこんなに嬉しい気持ちにしてもらってるのに、面目ないぜ。

「どうしたの?」
「いや、大輔くんはAセットにするだろうなって思ったから」
「え?」
「だって、ナス好きやん?大輔くん」

違いましたっけ?ナスよりもアボカド派なんでしょうか、大輔くん。
そういじけていたら、大輔くんの顔が真っ赤になってた。
んんっ、って咳払いをして、普段通りに変な冗談を口にする大輔くんの顔は、いつまで経っても赤く染まってる。
おやおや、これは、私と同じ気持ちになってくれてる?
どうかな?どうなのかな?

やっぱり街中をデートするのも楽しいから、もう少し満喫して、ベッドの中で答え合わせしようね、大輔くん。
そんなことを思いながら、目の前に座る愛しい彼氏を見つめた。
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